詰棋書紹介(61) 古今趣向詰将棋名作選


古今趣向詰将棋名作選 詰将棋研究会編 全日本詰将棋連盟 1980.8.20

「趣向詰将棋」という用語は定着しているとはいえない。
最近は趣向というと長編作品の手順趣向のイメージが強い。
本書は最近では条件作と呼ばれるカテゴリーに近いものである。

森田正司氏の「趣向詰将棋の分類」から引用しよう。

趣向詰将棋は、駒に関するものと詰手順に関するものに大別される。前者は初形あるいは詰上りにおける駒の状態に趣向を凝らしたものであり、後者は玉の軌跡や反復手順など、詰手順に趣向性を持たせたものである。
手順趣向がもてはやされるようになった昭和30年代あたりから、趣向詰といえば後者と思われがちであるが、元来は前者のことを”趣向”といい、後者は”構想”ともいわれたのである。

発刊されたのは1980年(昭和55年)であるから、すでに趣向詰といえば手順趣向を意味する時代だったはずだ。
それにも関わらずこのタイトルを選んだのは駒趣向という言葉の復権を狙っていたのだろうか。(そうとも思えないが……。当時は何にも考えなかった。)

本書が扱っているのは、駒趣向である。
目次を見ていただくのが手っ取り早いだろう。

初形条件を「~図式」、詰上り条件を「~詰」と整理したのは本書の功績だろう。筆者も森田氏の「趣向詰将棋の分類」の定義にしたがって用語を使用している。

本書の凄い所はその選局である。
例えばかなりの数があるであろう「持駒金4枚」でも選ばれているのはわずか4局。
その4局で好形の短篇から長編趣向作までバラエティ豊かに選ばれている。
とにかく選局のセンスが素晴らしい。

工藤紀良 「蟻地獄」『趣向詰将棋名作選』 第110番 詰パラ1971.6

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