詰将棋入門(83) 2枚飛車の剥がし

伊藤看寿 『将棋図巧』第53番 1755.3

桂馬と歩で飛車を剥がしていけば詰みそうで……


まずは自然に攻めてみる。
86銀、76玉で打歩の形になる。
質駒らしい角と桂も取ってしまおう。

86銀、76玉、65銀、同金、75金、同金、

【紛れ図】

68桂か67角だが、先に68桂としても同様に同飛不成なので同じ形になる。

67角、同龍、77歩、同龍、同銀、同玉、87飛、76玉、68桂、同飛不成、

【失敗図】

1枚目の飛車(龍)は剥がせるのだが、2枚目の飛車を剥がすことができない。
68桂は同飛成を期待した手だが、生で取られて無駄だった。

この局面で打歩詰の行き止まりだ。

本作の狙いは「この打歩詰を回避する手段を見つけなさい」ということだ。

【失敗の原因】

失敗の原因は7手目67角を同龍と龍で取られてしまうことにある。
角は98飛を剥がすために使いたいのだ。

それでは、作意を見ていこう。

初手から

69桂、

龍を狭い所に閉じ込めてしまうのが狙いだ。
【失敗図】を避けるために使える駒は桂だけなのでやってみたい手だが、変化が深い。
同とでは78歩、同飛成、86銀、76玉、77歩、同龍、65銀、同金、77銀、同玉、86角、76玉、77飛、85玉、84金、同玉、75角、94玉、95歩、同玉、97飛、96歩、84角、94玉、96飛、83玉、65馬、82玉、92飛成、71玉、62金まで33手桂3歩1余り。

作意は……

同龍、86銀、76玉、68桂、

69同龍に銀を使った後、質駒を獲る前に68桂を決める。
同龍ならば角を温存して77歩が打てるという訳だ。
(同龍、75金、同香、77歩、同龍、65銀、同金、77銀、同玉、87飛、76玉、67馬まで)

同飛不成、65銀、同飛不成、75金、同香、68桂、同飛不成、67角、

そこで68同飛生だ。
角の質駒を獲ると同飛生と逃げられるので、もう一度68桂、同飛生がはいる。
(ここで75金と68桂の手順前後が成立しているようだ。)

ともあれ、これで67角が打てて、しかも龍で獲れない。

同飛成、77歩、同龍、同銀、同玉、87飛、76玉、68桂、同龍、

先に飛車を剥がせたので、もう1枚の龍を剥がすのは簡単。
なお、2回に渡る87飛は97飛でも同じことである。

77歩、同龍、同飛、同玉、87飛、76玉、86飛、77玉、55馬、同銀、68金 まで33手詰

横に並んだ飛龍を縦に並び替えて剥がす順序を限定させるという、これまた類作が思い浮かばない面白いナラティブであった。

また【失敗図】と作意22手目の図を比べてみて欲しい。
桂馬3枚を利用して68飛を68龍に変換しているとみることができる。
しかし、「成らせ物」ではないというのが面白い。

「詰将棋入門(83) 2枚飛車の剥がし」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください