詰将棋入門(93) 龍追長手数の入門編

伊藤看寿 『将棋図巧』第83番 1755.3

超長編の入口は龍追いだ。
本局はのその龍追いの入門編として配置もスッキリ、手順も易しいので最適だろう。
考える所は収束だけ。250手まではスラスラいける!

初形打歩詰の局面なので23飛を消して打開すして手を進めるしかなさそうだ。
それにしても龍追いの長編なのに序で大駒を使ってしまう贅沢なことをして良いのだろうか。

43飛成、同龍、55歩、53玉、43金、同玉、

飛車を何処から打つか。
33飛では61に、44飛では21に逃げ込まれてすぐ行き止まる。

42飛、34玉、44飛成、25玉、24龍、36玉、
26龍、47玉、37龍、58玉、

右側での折り返し。45香が利いているし、それでなくとも69には逃がせない。

67龍、49玉、69龍、38玉、39龍、47玉、
48龍、36玉、37龍、25玉、26龍、34玉、
24龍、43玉、33龍、52玉、42龍、61玉、
51龍、

右側は駒を消費せずに折り返せた。
左側はどうか。
ここで51歩を入手。

   72玉、71龍、83玉、82龍、74玉、
85龍、73玉、74歩、

左側での折り返しは1歩が必要と解る。
73玉でなく64玉なら42角成で詰む。

   72玉、82龍、61玉、71龍、52玉、
51龍、43玉、42龍、34玉、

これで大まかな構造は見えた。
31歩、22歩、12歩と順に消去していき、13桂を入手して収束だろう。

これらの質駒を獲るタイミングは?
ここで31龍では25玉で15角がブラだ。
左旋回の途中で取るしかないようだ。

33龍、25玉、24龍、36玉、26龍、47玉、
37龍、58玉、67龍、49玉、69龍、38玉、
39龍、47玉、48龍、36玉、37龍、25玉、
26龍、34玉、24龍、43玉、33龍、52玉、
42龍、61玉、31龍、

31歩を入手。

   72玉、71龍、83玉、82龍、74玉、
85龍、73玉、74歩、72玉、82龍、61玉、
71龍、52玉、51龍、43玉、42龍、34玉、
33龍、25玉、24龍、36玉、26龍、47玉、
37龍、58玉、67龍、49玉、69龍、38玉、
39龍、47玉、48龍、36玉、37龍、25玉、
26龍、34玉、24龍、43玉、33龍、52玉、
22龍、

22歩を入手。
入手した歩は左辺の折り返して消費するから、持駒の増加はない。
すなわち守備駒を剥がしているだけだ。

   61玉、31龍、72玉、71龍、83玉、
82龍、74玉、85龍、73玉、74歩、72玉、
82龍、61玉、71龍、52玉、51龍、43玉、
42龍、34玉、33龍、25玉、24龍、36玉、
26龍、47玉、37龍、58玉、67龍、49玉、
69龍、38玉、39龍、47玉、48龍、36玉、
37龍、25玉、26龍、34玉、24龍、43玉、
23龍、52玉、12龍、

12歩を入手。
これを避けるために、23龍に33歩合をしても、同角成があるので無効。

   61玉、21龍、72玉、71龍、83玉、
82龍、74玉、85龍、73玉、74歩、72玉、
82龍、61玉、71龍、52玉、51龍、43玉、
42龍、34玉、33龍、25玉、24龍、36玉、
26龍、47玉、37龍、58玉、67龍、49玉、
69龍、38玉、39龍、47玉、48龍、36玉、
37龍、25玉、26龍、34玉、24龍、43玉、
13龍、

約200手をかけて13桂を入手。

   52玉、22龍、61玉、31龍、72玉、
71龍、83玉、82龍、74玉、85龍、73玉、
65桂、

折り返しに74歩に替えて65桂だ。
これでもう1周すれば74歩は取られるが、65桂は残ったままなので64玉、75龍までで終了なのだろう。
……と思ったら……。

   72玉、82龍、61玉、71龍、52玉、
51龍、43玉、42龍、34玉、33龍、25玉、
24龍、36玉、26龍、47玉、37龍、58玉、
67龍、49玉、69龍、38玉、39龍、47玉、
48龍、36玉、37龍、25玉、26龍、34玉、
24龍、43玉、33龍、52玉、42龍、61玉、
51龍、72玉、71龍、83玉、82龍、94玉、

【失敗図】

なんと!
94玉で手がない。
これまでは折り返しに使う歩を持っていたので、95歩、同玉、85龍までの簡単な変化だった。
持駒なしで左辺に突入すると94玉があったのだ。

それでは、どうやって収束するのだろう。
74歩と65桂の違いは他に何がある?

それは65桂は53にも利きがあると言うことだ。

正解は251手まで戻して……。

23龍、

33龍ではなく23龍と角道を開けておく。

   52玉、53桂成、

そして53に桂馬を成捨てる。
狙いは勿論、同金に51角成だ。

   61玉、62成桂、同玉、51角成、同玉、
53龍、61玉、62金 まで261手詰

作意は61玉と躱すが結局51角成が実現して終局する。
23龍に33歩合をして、同龍以下95歩、同玉、85龍まで265手詰を作意にすればいいとも思うが、33同角成もあるから難しいか。

現代的には割り切れた収束であるとはいえないが、この簡単な形で(実質、飛車と角を1枚ずつしか使っていない!)261手の長手数を実現して見せたのが凄い。

三代宗看の『将棋無双』第75番は持駒変換という手法を開発し、当時最長手数の225手を実現した作品だ。
看寿はその程度の手数ならば単純な剥がしだけで実現できますよと、その洗練された作図力を誇示したと言うことだろう。

実は収束には余詰がある。

さらに2手遡った24龍、43玉に53桂成が成立するのだ。

同玉なら54龍まで。
これは流石に序盤を変えないと修正は難しいだろう。

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