詰将棋入門(102) 変同ねらいの趣向作

山田修司「Wプロット」『夢の華』第23番 詰棋界1951.8改


短編のようなさりげない配置だが、巨匠山田修司の作品であるので努々油断なされぬように。

「詰棋界」に発表された際はこの難しい序は付いていなかった。

24銀、同龍、34銀、同龍、同角、

34同角にはドキッとさせられるが、同玉は32飛成で詰む。
(柿木将棋は15手と言っている)
これは一目詰むだろうと読まない人が普通だと思うが、真面目な人はちゃんと読む。
本当に偉いと思う。

   13玉、23飛、同銀、12金、14玉、
23角成、同玉、

12金が気持ちよい手でここまでが序奏。
随分とさっぱりした形になった。
ここから狙いの趣向が始まる。

13金、24玉、14金、25玉、15金、26玉、
16金、27玉、17金、同玉、

獲れない金での追い趣向。
28玉まで行ってしまうと29香、同玉、18銀で早いので17金までで趣向は終了となる。

37飛成、18玉、38龍、17玉、

37飛成に間駒をしたら、28銀~27龍~16香。
27桂合だったら、19香~26銀~18香。

そこで一旦18に戻るが38龍にまた17玉。
37龍は千日手なので手を変える必要がある。

28銀、26玉、27香、15玉、35龍、14玉、
24龍 まで33手詰

28銀は18銀でもよい。これを着手非限定という。余詰とは言わない。

さて初形から想像もできないミニマム趣向が現れて流石は山田修司と納得したことと思うが、タイトルである「変同狙い」の説明がまだだった。

それは趣向のはじまり「13金」に同玉の変化で出現する。

(14手目)同玉、

【変化図1】

33飛成、

【変化図2】

以下、こんどは金追いではなく龍追いが出現するのだ。

   14玉、34龍、15玉、35龍、16玉、
36龍、17玉、37龍、18玉、38龍、17玉、
18銀、26玉、27香、16玉、36龍、15玉、
25龍 まで33手詰

手数もぴったり同じ。
変同である。

 変化同手数を嫌う人とそうでない人がいる。私は最長手順説という現行ルールの背景からいって駒余り2手長などとは違い、ルールに適合する範囲だから、ない方がよいけれどあっても気にしないといった程度に考えているが、最近は懸賞出題形式の弊か、解の一意性を重視する声も多くなってきているようなので、そうもいかないのかもしれない。
 それはともかく、昔から、私はこのルール上、可とされている変同を利用して、複数の詰手順を持つ作が作れないかと考えていた。その作品は、理想をいえば、頭から真二つ若しくはそれ以上に手順が別れ、詰手数はそれぞれ全く同じで、どの詰手順も別個の詰将棋として充分面白い。もちろん複数の詰将棋を、左右或いは上下にただドッキングさせただけでは意味がないから、配置された駒は総てどちらの手順にも密接に関わりがある……といったものである。

変同は解答者がどちらの手順を解答したらよいか悩むからよくないという議論があるが、どちらを答えても正解なのだから問題はない。そもそも詰将棋は正解手順がたくさんあるのが普通だったのである。(先日「作意手順」を「正解手順」と書いている方を見つけて驚いた。\(「作意手順」=「正解手順」\)であるのは浦野真彦作ぐらいなものである。浦野先生の努力の成果で詰将棋はそういうものだと思ってしまう人が増えたのではなかろうか。)

そして本作が発表されたとき、筆者はまだ生まれていなかったから想像でしかないが、解答者はどちらが作意かは悩まなかったのではないかと思う。

なぜなら【変化図2】以降は伊藤看寿の将棋図巧#67にあるからだ。

つまり山田修司は図巧#67の復路を本歌取りして変化としこの初形に仕上げたということだ。

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