王様殺人事件 伊藤果・吉村達也 毎日コミュニケーションズ 1996.11.17
詰将棋作品を伊藤果が提供し、それを素材に実験的な小説的な解説をたっぷり書くという他に類書を思い出せない珍しい詰棋書だ。
推理作家としての吉村達也は筆者は1冊しか読んでいない(推理小説は)のでなんとも言えないが、読者に次のページをめくらせる文章作りの技術は、なるほどたいしたものだなと感心する。
詰パラに雑文を連載していたときは、「ひき」ばかりうまくって、次の号を読んでも何も出てこないので不満ばかり募っていた記憶がある。この本は単行本だからか、そのようなことはない。
ヒトケタものの詰将棋は解けるようになってきたのだが、10数手になるとちょっと手が出ないという段階の方への、解き方講座としても面白い提案が溢れている。是非入手して読んでみることをお薦めする。
(本書は勿論絶版だが文庫本になっていたはず……とamazonのリンクを最下段に張ってみたら、文庫本の方も絶版らしい。まったく最近の出版業界は……)
詰将棋の解説を書く方にも参考になるかもしれない。
第15番のタイトルは解説の書き方で印象が一変となっている。
1つの作品で
- ひたすら手順羅列型
- 勝手に随想型
- 控えめに自己紹介型
- 自信家なのに謙遜型
- 完膚なきまで批判型
- 遠慮なき自画自賛型
の6通りの解説を実演して見せてくれている。
それぞれ誰かモデルがいるのかなぁ……?