柏川悦夫 『駒と人生』第42番 詰パラ 1953.5
無仕掛遠打とは山田修司氏の造語だろうか。
このような図で出題されたら難しかったかもしれない。
凝り固まった初形なので手は限られている。
初手は二択だが、まず誰もが24桂から進めるだろう。
24桂、同金、13角成、同玉、25桂、
そこで25桂が好手だ。
この手は省いても進めることができるから一応ささやかな伏線手といえる。
同桂、12飛、同玉、92飛、
そして本局のクライマックス92飛の最遠打が登場する。
11玉、13香、21玉、12香成、
ここまで進めれば、なぜ92飛でなければいけないかが見えてくる。
31玉、22成香、41玉、32成香、51玉、
42成香、61玉、52成香、71玉、62成香、81玉、
72飛成、91玉、28角、
これで25桂と捨てた意味も判明した。
37桂打、同角、同桂成、83桂 まで31手詰
92飛のアイデア(機智と言うべきか)をすっきりと25桂の味付けだけで仕上げた感覚が勉強になる。
31手もかかるが、ポイントは25桂と92飛だけだから5手詰みたいなものだ。
手数と難しさが必ずしも比例しないと言うことを理解いただけたことだろう。
あらためて感心させられるのは駒配置の揺るぎなさだ。
一流作家なら当然のことなのだろうが、このようなウイットを表現した軽い作品にも推敲がつくされた時間を感じる。