詰棋書紹介(86) 続けむり


続けむり 飯田岳一 詰パラ 1978.11.2

「煙こそわが命」の名言を吐いた飯田岳一。
氏の溢れる情熱が作り出した1冊だ。
詰パラ1961.7の伊奈正夫「日輪」から将棋クラブ1978.4飯田岳一(歩なし煙)までが収録されている。
手書きの労作だ。

▲ついに煙も100局を超えたね。
△そうだね、煙は今や誰でも作れるんだ。人々も煙が出現しても何とも思わなくなった。
▲しかし、駒場氏の「無防備全駒煙」には、驚いたねぇ。
△あれはまさに神局だ。収束の駒余り順はキズにすべきだろう。
▲しかし、常識的には余詰、不完全では……。
△その通りだ。しかし、かかる難条件作ではキズでよいのでは……。
▲最近では自陣成駒や銀桂香の成駒も別に不自然と思わなくなったね。
△当たり前だよ。不自然成駒を気にするのは昭和ひとけた族の、おろかなる幻想だ。
▲まったく、いいことを言うね。
△君も早く古さを脱したまえ!!

飯田氏には詰朗会でお目にかかったことがある。
筆者に初形曲詰の創り方を親切に教えてくれた記憶がある。

筆者がパラの大学院を担当していたとき、煙詰を2作まとめて投稿してくださった方がいた。
初めて見るペンネームで本名の記載はなかった。
いずれも双玉煙で攻方の王が動く面白い作品だった。
が、柿木将棋で検討してみると、いずれも簡単な早詰が見つかった。
返送したかったが、住所の記載ももちろんメールアドレスもなく、できなかった。

ふと、飯田岳一の名前を思い出した。

今も、一人で煙詰を作っているような気がする。
そして詰将棋は自力で検討して作るから価値があるとの信念を抱いて。

願わくば機械検討を排除するようなおろかなる幻想は早く捨て去って詰将棋界に復活して欲しい。
ヒトの寿命は短いのだ。柿木将棋でもコンピュータでも使えるものは使ってください。

近藤善太郎 「かげろう」詰パラ 1971.10

57手目は非限定でどっちの金が先にいってもかまわないが、作者の意図は68に打った金が止めを刺すことにあるようなので、そこだけ磯田さんのリストと変更してあります。

「詰棋書紹介(86) 続けむり」への7件のフィードバック

  1. よい意味で古さを懐かしむことができるのが昭和の煙詰。かげろうは好きな一局です。本の中身は手順だけを書いた単純なものだったが、1段ごと定位置に途中図を入れてあり、目で追いやすかった。煙詰を鑑賞するには最良のレイアウトです。2020年、飯田岳一氏は必ずや煙詰で復活するものと信じていたが、ついに姿を現すことはなかった。

  2. そこまで考えるんですか。恐れ入りました。作者を越えています。
    ぼくは必ず発表された解答手順を見て、非限定の箇所は作意に従っているのですが、この作品の57手目は「同金」とあるだけでした。自分も右や左を付けたくなかったのですが、それでは柿木で開くときエラーとされてしまうので、仕方なくTBASEのままにしたのでした。

    1. T-Baseは作意と違うことが多いですよね。作意を入力している磯田さんのファイルは信頼しています。
      結果発表の際に作者の言葉で「主題–大駒で玉を追わずに小駒のみの追跡。特に68金と打った金が収束迄続くのが異色と言える。43年8月号の原島利郎氏の作にヒントを得ている。39金と据えるのに苦労した。」とあったのです。

      1. あ、作者の言葉は見落としていました。
        57手目は完全に「同金左」ですね。リストを修正します。

  3. ちらっとこの記事を見て、「続けむり」をつみき書店で組み直して出すのかと誤解してしまいました。さすがにそれはないか...。全詰連の「けむり」ほどではないですが、この本も何度も読みました。お世話になった詰棋書ですね。さて、昨日の\(\LaTeX\)で組版のお話は興味津々で拝見しました。素晴らしいお仕事(works)ですね。

    1. 図面と手順だけなら非売品の粗品用に作るのも良いかもしれませんね。
      プロパラ会での話、興味を持ってくださったとは嬉しいです。
      そのうち「詰棋zinのススメ」というエントリーで詳しく書きます。

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