風みどりの詰将棋と関係ない話(1) 中学3年生向け「進路だより」より

いえね。
詰棋書紹介をレギュラーから外すのは決定なので、代わりのレギュラー連載で、あまり時間かけなくても書けるものを色々模索していこうということなんですね。

それで最初に考えたのは、いままで連日1日1エントリーは詰将棋に関する話題を取り上げてきた訳だけれど、定期的にそれ以外のネタも混ぜると純度が下がるようだけれど、スイカの塩みたいに詰将棋の話題の日が楽しみになるという効果もあるんじゃないか……と考えた。

タイトルに「風みどりの」と入れたのは、「風みどりの玉手箱」時代の読者にしたら、くどいんだよ、なんで名前そこで売ろうとするかね、と思われるかも知れない。
ただ、ブログ名を「つみき書店」に変えて1年。

よく考えてみたら、自己紹介のページに書いていることは書いているけど、風みどりって誰?
そう思う読者も大勢いるような気がしてきたのだ。

近代将棋を知らない若い読者だっているだろう。
詰パラ読者以外の方もいるだろうし、そもそも詰パラで大学院担当していたのだってもう10年近く前の話。

すこしは「風みどり」の名前を売らなきゃ、まずいんじゃない。
と、ゴーストが囁いたのです。
(もっと古いマンガの用語使って通じているのか?)

という訳で、普段は極力私の個性はださないように努めているが、この連載だけは肩の力を抜いて気ままに書いていこうということなのです。


風みどりは定年退職するまでは東京の下町で公立中学校の教員をやっていました。
なので今はブログでもtwitterでもお気楽なことを書きつづっていますが、純真な中学生の前では真面目な顔をして真面目なことを語っていたのです。

例えば、中学3年生に向けた進路だよりからピックアップしてみましょう。

風みどりの進路だより 6月10日より

囲碁と将棋の違い

囲碁・将棋・双六は平安の昔から日本では3大ゲームとして遊ばれてきました。
嫁入り道具を詰めた長持の中に入れる遊具はこの3つと決められていたほどです。

このうち一番人気が高かったのは双六です。
双六といってもみなさんが想像するような一方通行の競争をする双六ではなく,2人の対戦ゲームで,現代ではバックギャモンとして知られているものです。
(皆さんの知っている双六はどちらかというと“教科書”なんです。遊びながら知識を覚える教材なのですね。)
紫式部の源氏物語にも,お姫様が従者と双六を遊ぶ姿が登場します。
ググる際は「盤双六」で検索してみてください。

この双六は賭け事と結びついたために,お上から禁止されて衰退しました。

今,新聞の娯楽欄に載っているのも,NHK教育テレビで日曜のお昼前後に放映されているのも,囲碁と将棋です。

ところがこの囲碁と将棋はずいぶん違った性質を持っています。

序盤から積み重ねる囲碁・最後が勝負の将棋

将棋は先に相手の玉将をとった方が勝ちです。

例えその時に味方の勢力が王と金1枚で,残りの駒(飛車角も)全部が相手方であったとしても玉さえ詰ましてしまえば勝ちとなります。

それに対して囲碁は自分のものにした土地の面積を競うゲームです。
ですから,序盤で得た陣地は最後まで有利に働きますし,序盤で損した陣地は最後まで勝敗に響きます。

それでは都立入試は将棋に似ているでしょうか,それとも囲碁に似ているでしょうか。

都立は囲碁,私立は将棋

都立入試はもちろん試験の得点が7割影響しますが,3割は調査書 — すなわち中学校の評定が合否のカギを握ることになります。

そう考えると,都立入試は囲碁に似ているといえるでしょう。

筆者自身は将棋派なので,入試が近づくまでは力を蓄え,最後の最後のラストスパートで群なすライバルたちをごぼう抜き,入試に勝利する……という構図を描きたいのですが,現在の都立入試のシステムでは無理のようです。

その点,有名私立は入試10割なので,将棋派に向いているといえるかもしれません。

風みどりの進路だより 10月18日より

村山聖の土下座

今は藤井七段の活躍が人気の将棋界ですが,20年前は羽生が棋界の寵児でした。
七大タイトルを独占したのは羽生しかいません。

その羽生のライバルと言われたのが村山聖です。

村山は子どものころからネフローゼという重い病気を持っていました。
病気のせいで体も弱く,ちょっと頭を使うと熱が出てしまったりしました。

将棋は知らない人には意外かもしれませんが,非常に体力を使う頭脳スポーツです。
タイトル戦になると2日間もずっと頭を酷使して戦います。
長生きするためには,将棋をいう職業を選んだのは彼にとって間違いなくマイナスだったと思います。
そして実際に村山聖は29歳の若さで亡くなってしまいました。

その村山聖がまだ幼かったころの話です。

将棋のプロになるためには,東京か大阪に出てプロ棋士の弟子となり,将棋のプロの養成機関である奨励会に入らなくてはなりません。
村山の家は広島にありました。
自宅から大阪へは通えません。。

村山は将棋のプロになりたかった。
そこでは,本当に将棋の強い相手と高度で厳しい将棋が指せるからです。

しかし,両親も親戚も大反対しました。

そもそも将棋が体に悪い。
体が弱いのに家族と離れて一人で生活する。
もってのほかだというわけです。

そこで村山は親戚一同の前で土下座をします。

そして,自分の夢を実現させるために,家を出て一人で暮らすことを許してくれるよう訴えます。

その結果,村山は家を出ることを許され,奨励会に入り,年に4人という狭き門を突破してプロ棋士になります。
奨励会入会からプロ入りまで2年11か月は,羽生よりも速い異例のスピードでした。
八段まで昇段していきましたが,時間の長い対局では成績が振るわず,名人になる夢を実現する途中で亡くなります。

詳しい話は映画や漫画にもなっていますが,是非,原作の大崎善生の「聖の青春」を読んでみてください。

さて,みなさんは来春中学校を卒業します。

中学校までは義務教育でした。
この義務は保護者の方々と施政者に対する義務です。
保護者はその子どもを働かせるのではなく学校に通わせる義務があり,施政者はその子どもたちが通う学校を作る義務があるのです。

もちろん生徒は,親御さんや地方自治体の努力に感謝して,真摯に学業にいそしまなくてはなりません。

では,高校からは?

これは生徒諸君から両親ないしは保護者の方に対し,「高校に進学させてください」とお願いするのが筋です。

「イマドキ,子どもが高校に行くお金を出すのは親として当然だろう」と考えている幸せな諸君も,「私立は無理だろうけど都立ならOKだと思う」とちょっと心配している諸君も,もっと心配している諸君も,一度,きちんとお願いしましょう。

  1. 私には将来このような夢がある。
  2. そのためには高校(など)を卒業したい。
  3. それ故に,どうか私を高校に進学させてほしい。

村山のように土下座までする必要はありませんが,どこかでけじめをつけておきましょう。
進路アンケートにハンコ押してくれているからいいだろう……とせずに。

風みどりの進路だより 3月17日より

卒業式が待ちきれない

プロの将棋棋士のM八段とパソコン通信(インターネットの前身みたいなもの)で知り合って,一緒に飲んだときに聞いた話。

「僕は秋田出身なんだけど,東京に出て将棋棋士になりたくて,中学3年生の3学期が始まった頃に我慢できなくて東京に出てきてしまった。
僕は中学を卒業したことになっているのかなぁ」

プロの将棋棋士になるには,東京か大阪でプロ棋士の弟子になり,奨励会に入らなければなりません。
小学生の頃から奨励会で切磋琢磨する人が多いのですが,Mさんはスタートが遅かったので,少しでも早く上京したかったのでしょう。(26歳までに奨励会を抜け出さないとプロにはなれません。)

M八段は将棋のプロになりました。
ですから,中学校を卒業したかどうか,卒業証書をもらえたのかどうかなどすでに重要ではありません。

しかし例えば区役所に勤めたいとか図書館で働きたいといった場合はそうはいきません。
公務員試験の受験資格には高校卒業が必要で,高校を受検するには中学卒業の資格が必要だからです。
都立高校の出願書類に「●●中学校卒業見込」と書いたことを思い出してください。
その下に校長先生が「卒業できるでしょう」と認めるハンコを押してくれたはずです。

高校は,合格させた生徒がちゃんと中学校を卒業したかどうかを,どうやって確認するのでしょう。

本日渡した書類の中に,角2の大きな封筒があります。
表紙に○○高等学校長様と書いてあるはずです。
この中に入っている指導要録抄本に「卒業年月日 令和\(x\)年3月31日」とあるのです。
ですから,この封筒は必ず高校に提出してください。
(「親展」とありますので,開封してはいけません。また,同封されている健康診断票は小学校から引き継いだ原本で,コピーはありません。失くしたらもう代わりはありませんので注意してください。)

最初のM八段の中学校卒業がどうだったのか。
通っていた中学校の校長先生が特別の配慮をして卒業認定された可能性が8割,校長先生に話もせず飛び出したということなので除籍になった可能性が2割といったところでしょうか。


いやあ、もっと将棋の話書いていたような気もしたのですが、案外少なかったですね。
不正確なところがあったら、ごめんなさい。(もう皆卒業してしまったので訂正はかないません)

そういえば、村山聖八段には道徳の授業にも何度も登場していただきました。
この年は担任をしていなかったので、進路だよりに登場した次第です。

そして、どうせなら、これ3回分のネタにすれば良かったと、今、後悔しているところです。

「風みどりの詰将棋と関係ない話(1) 中学3年生向け「進路だより」より」への1件のフィードバック

  1. プロ棋士はコンピューターに負けるわ、冤罪事件起こすわですけどね。将棋の宣伝力は本当に恐ろしいです。

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