「第一線の作家陣」(昭和29年)

「王将」昭和29年1月号に野口益雄氏の「第一線の作家陣」という文章が載っている。
面白いので全文引用する。

現在、詰棋壇の最前線に活躍されている方々を紹介する。作者を知ることはその作品を鑑賞する上に必要だと思われるから。
いずれ劣らぬ”詰将棋の鬼”18人衆である。

金田秀信(東京都)

短編専門。わずか13手ほどの中に華麗さを盛り上げる所は、古今を通じての絶品というべし。23才

柏川悦夫(北海道)

戦後最も早く出た作家である。将棋評論誌上において独り舞台の観があった。作風は新鮮、軽妙。11手から25手位の短・中篇を得意とする。27才

植田尚宏(愛知県)

最新鋭。半年ばかりの中にめきめき売りだしている。約11手の短編が特に傑出。この調子があと3年続いたら金田も柏川も顔色ないだろう。

北原義治(東京都)

この人と植田は最近の掘り出しものだ。二人とも恐ろしく筋が良い。
昨年、近将の新年号付録五十人集で第1位を奪ったからその短編も相当だが、むしろ中篇に力を入れた方がいいらしい。18才

奥薗幸雄(福岡県)

去年、715手詰をもって一躍、男を上げた。その後、新煙詰や800余手の作をものしたが不完全で発表されず。20才

大井美好(千葉県)

中・長編における捌きが実に美事。寡作なので、あまり知られてないが詰将棋界、当代の実力者である。27才

村山隆治(東京都)

この18人の中、大井氏と2人だけの戦前派。短篇が得意だが作家としてより、詰将棋評論をもって知られている。30才

渡部正裕(福岡県)

2年位前から、曲詰に熱を入れている。自然、曲詰の作品では断然他を圧している。近頃は作るばかりでなく、詰将棋評論もやる。20才

谷向奇道(兵庫県)

戦後派中での相当の古顔。難解派だが、そのくせ筋が良い。近頃の作品は光っている。23才

山田修司(北海道)

最初はあまり冴えていなかったが、3年前の正月、オメデトウの5篇の曲詰を成してより俄然一流中の一流にのし上げた。
千鳥銀や玉の周辺巡り等の趣向詰では他の追随をゆるさない。20才

清水孝晏(東京都)

曲詰、短中長篇、趣向詰なんでも結構という便利な男。至妙の才を発揮するが惜しいことに曲詰以外は渋がとれてない。
ガリ版の同好誌「詰棋界」を3年以上続けているのは驚嘆すべき情熱である。24才

黒川一郎(東京都)

趣向詰で山田とは又ちがった持ち味がある。歳も30を過ぎているし、家族も多いので、あまり凝ってもいられまいが、一途にうちこませたらたいしたもの。36才

駒形駒之介(東京都)

将棋世界に貧乏図式なる金銀不使用の連作を発表。金銀を使うとうまくないなどと言われているがそんなことは嘘だろう。軽快な作風は無類。23才

村木徳(静岡県)

多作である。才が溢れるようだ。が、そのわりにこれといった代表作がないのはどうした訳か。近ごろは、趣向作にも気があるらしい。25才

湯村光造(群馬県)

短・中・長いずれも作るが、短篇は特に珠玉。村木と逆に寡作だ。
作品数に比してファンが多い。20才

桑原辰雄(群馬県)

谷向、湯村と共に入玉型の好きな3人男。指将棋が強いのが祟ったか作品が難解性を持ち、少々ゴツゴツの感がある。20才

小西稔(兵庫県)

短編ばかり作る。筋は非常に良いのだが、ムラのあるのが玉にキズ。20才

真木一明(東京都)

正統派というべきか。実に癖のないものを作る。そこが彼の長所とも、弱点とも言えよう。21才

とにかく、皆さん若い。
念の為に書いておくと、この文章を書いた野口益雄氏自身は文中では駒形駒之介となっている。

現代だったらどんな顔ぶれになるのだろう?
どなたか変名でいいので書いてみませんか。(原稿お待ちしています^^)

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