詰将棋つくってみた(40) 課題8:選評 by 太刀岡甫

Judge:太刀岡甫

優秀作

【第19問】馬屋原剛

正解 36龍、同金、35金、同金、46銀、同金、57桂、同金、46歩、同玉、35銀、45玉、56銀、同金、46歩、同金、同銀、同玉、56金まで19手詰

右上と左下で、金の三角形のルントラウフを2回行った作。十分な翻弄回数に加え軌跡に意味が感じられるので優秀作に選んだ。駒取りや箸休めがありライトな手触りではあるが、この作品展には合っていると思う。

【第21問】あとれい

正解 43歩、同玉、32銀、42玉、43歩、同飛成、31銀不成、32玉、24馬、34龍、42馬、23玉、24金、同龍、32馬、13玉、22銀不成、同龍、15香、24玉、14馬まで21手詰

きわどい紛れがたくさんあって非常に難しい。手順のほうも龍の移動中合を中心にしっかり翻弄されており、詰上りもしっかりしている。詰パラでも十分通用するレベルだと思う。

佳作

【第16問】松田圭市(2)

正解 11龍、12飛、25桂、23玉、15桂、同飛、13桂成、同飛、15桂、同飛、14角、同飛、24歩、同飛、15桂まで15手詰

玉移動を挟んで合駒を5回ノンストップで動かす。課題に忠実であり、完成度も十分。馬屋原作との差は軌跡の表現の有無。

【第17問】武田裕貴(2)

正解 27桂、同と、24角、14玉、16龍、23玉、15桂、14玉、33角成、34角、24銀成、同桂、23桂成、16桂、24馬まで15手詰

舞台装置の構築から始めて、桂の2段跳ねを入れての清涼詰。変化紛れもしっかりあり、非常に綺麗に仕上がっている。優秀作でないのは、課題との関連が弱めという点。

アイデア賞

【第26問】松θ拓矢(2)

正解 44馬、33龍、21金左、32玉、54馬、43龍、31金右、22玉、55馬、33龍、21金左、32玉、65馬、43龍、31金右、22玉、66馬、33龍、21金左、32玉、76馬、43龍、31金右、22玉、77馬、33龍、21金左、32玉、87馬、43龍、31金右、22玉、88馬、33龍、21金左、32玉、98馬、43龍、31金右、22玉、21金右、12玉、17飛、同金、13香まで45手詰

この課題を聞けば普通は捨駒による翻弄を想像するところだが、移動合型の馬鋸をやるというのは発想の転換。結果的に移動回数は今作品展最多で、アイデアの勝利といえる。

コメント

【第1問】シナトラ

本作は2解です。2つの詰手順を両方お答えください。
(註)余詰とは作者の意図しない詰手順のことであり、これは余詰ではありません。

正解 24桂、同飛、14角、同飛、22角成まで5手詰
   42桂成、同香、44桂、同香、43角成まで5手詰

持駒の桂、34桂、25角の活用先が全て対比されており、順番も入れ替わっている完璧な対比構造。各々が基本的な手順であっても対比によって価値が10倍ぐらいに跳ね上がっている。ただ、2つの舞台が交わらないので作りやすそうだとは思った。

【第2問】沙雪海都

正解 28桂、同香成、26金、17玉、29桂、同成香、18銀まで7手詰

桂捨てがリピートされる表現が良いと思う。これを4枚の桂でやったら面白いんじゃなかろうか。例えば以下の図のように。2回だけだと金のベタ打ちが目立って狙いが霞んでしまうかも。

【第3問】駒井めい

正解
36銀、同角成、24龍、16玉、27金、同馬、34馬まで7手詰
36銀、同飛、24龍、16玉、34馬、同飛、26金まで7手詰

変同利用の対比(これ名前あるんでしょうか)。対比構造としてはシナトラ作のほうが1枚上手だけれども、本作は初手が紐なし焦点打だったり変化紛れがしっかりしていたりと、新しい表現に手筋物の味をうまくミックスしているのが良い。

【第4問】ミーナ

正解 66桂、同馬、44桂、57馬、46桂、同馬、55歩、同馬、53銀成まで9手詰

わかりやすい馬の一回転。回転軸が玉から離れているのはポイントが高い。久保紀貴さんの短コン優勝作と仕組みは似ているかも。57香(久保作では45飛)の位置での取らせ方が実現の鍵で、そこの工夫次第ではまだ新作が残っていそう。

【参考図】久保紀貴 詰パラ2016.12

【第5問】沙雪海都(2)

正解 47金、同銀成、37金、同成銀、46金、26玉、53馬、16玉、17金まで9手詰

ちょっと解きにくくはあるけれども、金4枚持っていて翻弄回数が2回だとちょっと寂しい。玉を追いかけている間に頭4手の味の良さを忘れてしまうから、できるだけ短くまとめたい。

【第6問】すしぼーい「180」

正解 44銀、同馬、33飛成、同馬、42銀不成、同馬、51龍、同馬、43金まで9手詰

珍しい軌跡を表現しようとする姿勢は素晴らしい。この感性を大切にしてほしいのであまり技術的な話はしたくないが、もし直すとしたら初手の駒取りと8手目52金打の余地(通常は不問だがこの場合狙いが実現されなくなる)を消す方法を考えると良いだろう。

【第7問】松田圭市

正解 22角、同金、11飛、21金、同飛成、同玉、12金、31玉、43桂不成まで9手詰

なんということはない手順なのだが、初手が見えずとても解きにくかった。どのくらい解きにくかったかというと、うっかり中学校に採用したくなるくらい。22角いいなあ。

【第8問】すしぼーい(2)「馬のさんぽ」

正解 42銀、同馬、32歩成、同馬、33桂、同馬、52金、31玉、23桂、同馬、42金まで11手詰

翻弄回数が多くて、箸休めも1回しかないのが素敵。ほぼ完璧にまとまっているが、73龍は63金のほうが軽い配置だと思う(余詰が怖いから龍にしたのなら良い判断だと思います)。こういうのを作り続ければもっと回数を増やせる素材にめぐり会えるはず。

【第9問】すしぼーい(3)「昇龍金」

正解 43金、同桂、31角、同玉、41角成、同金、32金、同金、23桂、同金、32金まで11手詰

前半と後半が分離してしまった印象。頭4手を入れたくなる気持ちはわかる。おそらく5手目からの手順では少し物足りなく感じたのではないか。これ以上翻弄回数を増やすのも難しそうなので、素材自体がちょっと弱いかもしれない。

【第10問】negitarou

正解 36香、59香成、26銀、同飛、16歩、同飛、27桂、24玉、34と、25玉、35とまで11手詰

飛を2回動かすところは良い。細部で指摘できる点はいくつかあるが、先に狙いの強化を目指すほうがよさそうなので、まずは飛の翻弄回数を極限まで増やす方法を考えてみよう。

【第11問】沙雪海都(3)

正解 24銀、同と、27桂、同と、16金、14玉、15歩、同と、23銀、同玉、33飛成、14玉、13龍まで13手詰

銀を斜め後ろから捨てるのは味が良い。手数に占める捨駒の割合を上げるために、玉を追う手(16金と33龍)を削っていけばより洗練されていくだろう。

【第12問】武田裕貴

正解 33歩成、24馬、43角成、55玉、65金、同銀、54金、同銀、66龍、45玉、34馬、同馬、46龍まで13手詰

空中戦の趣があり詰上りもすっきりしているので良い短篇だと思う。2手目の変化が深いので、初手にもっと選択肢があれば解答者を悩ませられそう。

【第13問】沙雪海都(4)

正解 36桂、同香、34金、同金、56桂、33玉、25桂、同金、34香、23玉、22金、13玉、23金打まで13手詰

2手目の変化と金の動かし方は良いが、それ以外の手が多いので純度が落ちていると思う。特に56桂、34香、22金といったベタ打ちはあまり好きではない。

【第14問】松θ拓矢

正解 54飛成、34飛、33銀、同玉、44角成、同飛、24銀、同飛、25桂、同飛、42銀、23玉、14龍まで13手詰

翻弄のブランドができてきた作者。このままでも十分だと思うが、44飛合から始めて34金同飛を入れられたらもっと良くなるのではないだろうか。王手でない位置の合駒を攻方が王手に誘うという表現になるので。実際にできるかはわかりません。

【第15問】芹田修

正解 16銀、同玉、33角成、14歩、34馬、25金、17歩、15玉、37馬、26桂、同馬、同金、27桂、同金、16歩まで15手詰

飛合でも同じかと思ったら、16歩があった! 簡素な配置から限定移動と限定合2回、無駄のない手順でよくまとまっていると思う。

【第18問】negitarou(2)

正解 82銀、62玉、53と、51玉、61香成、同馬、41歩成、同角、63桂打、同角、同桂不成、41玉、42歩、32玉、41角、21玉、33桂不成まで17手詰

伸び伸びと創作されていて好感が持てる。解くのは難しいが妙手のような手が発見しづらいのでマニア受けはしないかもしれない。捨駒の際は駒を取らない方が映えるので、取れる駒を置きたい気持ちをぐっと堪えて手順を探すと良いだろう。

【第20問】negitarou(3)

正解 57飛、同玉、58馬、56玉、48桂、45玉、36馬、34玉、35香、23玉、14馬、同桂、33銀成、24玉、34成銀、25玉、26歩、同桂、36銀まで19手詰

初手の捨駒も桂の2段跳ねも良いのだが、舞台を大きく移動するので分裂してしまった印象を受ける。やりたいことを1つに絞りその周辺で捨駒を探して付加価値を求めるとまとまりが生まれると思う。

【第22問】negitarou(4)

正解 34角、同玉、35歩、同飛、43銀、45玉、46金、同玉、66飛成、同銀、47金、45玉、57桂、同銀成、36と、同飛、46歩、同飛、同金、同玉、36飛、45玉、34銀不成まで23手詰

飛の翻弄だけでなく、序で打った銀を最終手で使う構成が良い。一般的に駒取りはマイナスとされるので、極力避けるように作ると洗練されていくと思う。

【第23問】negitarou(5)

正解 64と、同桂、53銀成、45玉、56角上、同桂、81角成、55玉、54馬、66玉、76馬、55玉、54成銀、45玉、46歩、同銀不成、34銀、同飛、44金、同飛、同成銀、同玉、64飛、45玉、54馬まで25手詰

課題に関わるのが頭6手で、ここについては良くまとまっていると思う。以降の手順も何か際立って悪い点があるわけではないが、後始末が長いため狙いがぼけてしまう。それから、76歩は最初から持駒にしておいても問題なく、この駒取りを省くだけでも印象が変わると思う。

【第24問】長谷川雄士

正解 99香、98金、97銀打、87玉、77銀、82香、88銀左、同金、76銀、86玉、87歩、同金、75銀、85玉、86歩、同金、74銀、84玉、85歩、同金、73銀不成、83玉、84歩、同金、72銀不成まで25手詰

通常の銀歩送りに加え、送る金を中合で出した作。真面目に評価するなら手順の大部分が既成ということになるが、こういう遊び心は良い。

【第25問】negitarou(6)

正解 12歩、21玉、22角成、同と、43角成、32歩、33桂、同と、22香、31玉、41歩成、同玉、53桂不成、51玉、61桂成、同と、42銀、62玉、53馬、73玉、64馬、62玉、74桂、71玉、81歩成、同玉、91馬、71玉、63桂、同と、82馬まで31手詰

創作を楽しんでいそうなので野暮な指摘はしないが、課題に沿って作るなら後半にも翻弄が入ると良かっただろう。

総評

本格的な作や遊び心のある作ばかりで楽しく拝見させていただきました。後半はずっとnegitarouさんの作品を解いている感じでした、よくこんなに作れますね。多作の方は伸びると思っているので頑張ってください。

こんなの作りました。

太刀岡甫

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