詰将棋入門(151) 11手詰ベスト10に推したい作品

酒井克彦『からくり箱』第6番 詰パラ1963.2改

詰将棋の世界には神様みたいな作家が大勢いる。
日本みたいに八百万はいないけれどギリシャ神話なみにはいるだろう。(ギリシャの神様って何柱いるんだろう?)
この酒井克彦もその一人。

僅か11手の短篇だからまずはじっと初形を見て考える。
初手は3通りしかない。
78銀・79金・99金のいずれかが正解だ。

そしてちょっと考えると初手はこれだろうと目星がつく。

99金、

88角が取られそうだ。
そしてその先には97からの逃走路が見えている。
57龍を活用しようと78銀としてみても88玉で次に97玉が防げない。
87桂か98銀を動かさないと始まらないという訳だ。
といって79金では同桂成で守備が強くなるだけ。
したがって99金というわけだ。

同桂成は79金の1手詰。
同銀なのだが、果たして成るのか成らないのか。

作者名からしてこれは不成と工夫してくると予想できる。
そこでまずは変化と考えられる「成」から片付けていこう。

   同銀成、78銀、同玉、
68龍、89玉、98銀、

銀が移動すれば78銀に88玉でも98玉でも87龍がある。
68龍と近づけて仕上げは「退路に先着」の98銀で鮮やかに決まる。

   同玉、79角

【変化図】

以下は89玉に88龍まで11手で金が余る。
やはりこれは変化だ。
しかし98銀とは美しい。

これで2手目はやはり

   (99)同銀不成、

これなら同じように攻めると

78銀、同玉、68龍、89玉、
98銀、同玉、79角、88歩、

【失敗図】

銀が不成だと88に利きがあるので詰まない。

さて、それでは2手目の局面に戻って考えてみよう。
残りは9手詰だ。

【再掲図】

手を変えて攻めるといっても、他に攻め筋があるのだろうか。
78銀、同玉、68龍、89玉、78銀では、88玉と角を取られて絶望だ。

実は5手目に驚きの一手が登場する。

78銀、同玉、68金、

龍を動かさずに68金!
なんという非効率な重い攻め。

角が取られてしまうではないか。
もしくは89玉と再び潜られてしまってどうするのだ。

しかし、よく見ると89玉には78銀、88玉、87龍以下。
あれこんなに簡単に詰む?
とすると角を取る一手で……

   88玉、78金、

と、ここまでくれば68金の意味はわかる。
88角の原型消去。
88角は2手目4手目の局面では邪魔駒と化していたのだ。

わかってしまえば急転直下、解決だ。

   同玉、68龍、89玉、98銀まで11手詰

この68金を妙手たらしめているのは、やはり初手の変化の役割が大きいと感じる。
そして銀成を変化だろうと先に読むように解答者を誘導するのは……酒井克彦という名前か?

酒井克彦作品集『からくり箱』は本作のようなため息のでる珠玉作がぎっしり詰まっている。
すべての詰将棋ファンは熟読するべし。


追記

「詰将棋入門(151) 11手詰ベスト10に推したい作品」への3件のフィードバック

  1. “88角は2手目の局面では邪魔駒と化していたのだ。”-――と書いてしまうと、ちょっと違和感が……。(88角がないと、3手めに87竜が成立しません?)
    敢えていえば、4手目に、とするしかないような。

  2. たまたま、本作を3週間ほど前に<ホント>苦心して
    解いた。68金だね、、他の方の想いも全く同じと
    言うのが僕には面白かった。11手詰めのベスト10
    かどうかは僕には判らないがS52年詰めパラ編の
    古今短編名作選の全250題中で未だ70題しか解いて
    はいないがベスト5ではないかと思った。
    ああ~68金、、、こんな凡手・悪手とも思える手がネ、、

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