三代伊藤宗看『将棋無双』第16番 1734.8
これも宗看にしては易しい作品だ。(どうもオイラの棋力が低いせいか易しい作品に惹かれる傾向があるのかもしれない)
2手だけ教えるので続きは考えてみるのも良いかもしれない。
初手は33桂打。2手目は22玉だ。
大駒4枚が攻方だが、いずれも遠い所にいる。
22歩や12香成など王手はあるにはあるが、初手は33桂打が一番有力だ。
33同歩は同桂不成、32玉、24桂以下12で清算して詰む。
33桂打、22玉、
さて、2手目の局面で早くも打歩詰だ。
作者から「この打歩詰を打開してみよ」という声が聞こえる。
17馬が邪魔駒であることは明白だ。
試しにこの馬を盤面から取りだしてみると…
【仮想図】
23歩、31玉、41桂成、同銀、53角成、42桂、22金、同銀、同歩成、同玉、23歩、11玉、22銀まで13手詰
このようにあっという間に詰む。
23歩が打てて41桂成と金を入手すれば詰み筋なのだ。
それではどうやって17馬を消去するか。
【再掲図】
13香成、同玉、31馬では同金とされて31が埋まっているので打開することはできない。
ここで72香の存在に気がつく。
これは79馬を同香成と取るための駒ではないか。
13馬とする馬とする。途中を57龍と88飛が塞いでいるので気づきにくくしているとも言えるが、慣れてくると逆に作意が透けて見えてしまう。「この2枚とも捨てることになるわけだな…ニヤリ」
13香成、
13香成から入る。同歩は23歩、12玉、24桂までで簡単だ。
同玉、35角、22玉、13角成、
飛龍を捨てるには1筋が空いていないといけない。
最初に消すのは17角だ。
同玉、16香、22玉、13香成、
続いて16とを入手しつつ掃除する。
同玉、18飛、22玉、13飛成、
そしていよいよ飛と龍の処理だ。
同玉、17龍、22玉、13龍、
龍も消えてやっと準備完了。
同玉、79馬、
狙いの一手が実現した。
同香成、24金、22玉、23歩、
これでやっと23歩が打てる。
以下は穏やかな収束だ。
31玉、41桂成、同玉、
42歩、同玉、
33金打、31玉、32金、同玉、
33桂成、41玉、42歩、31玉、
22歩成、同銀、同成桂、同玉、
23歩、31玉、22銀、42玉、
手数は長いが、特に解説が必要な所はない。
33金、41玉、31銀成、同玉、
22歩成、41玉、32とまで53手詰
自然に捌けてスッキリした詰上りだ。
さて少し鑑賞してみよう。
この詰上り図で49香と56金がちょっと浮いている。
この配置の意味は何だろう?
さらにもう一つ。
この打歩打開の構想は足し算の発想で、それ自体は創作を始めて間もない頃に思いつく種類のものだろう。
しかし創作する際には一つの課題が生まれる。
【途中図】
それは途中図で57龍と88飛を2枚とも1筋に振って13に捨てるのだが、その捨てる順序をどうやって限定するかという問題だ。
自力で解いた人には既に解決済みの問題だが、鑑賞派—作意を並べただけの方は解決しておかなければならない問題だ。
正解は2枚目の飛(龍)に対する間駒だ。
1枚目の飛(龍)に対しては14に間駒は効かない。同飛、同玉にもう一度龍(飛)で王手されて24金までだからだ。
問題は2回目。
もし、先に57龍を消去すると、18飛に対して間駒をされる。
【失敗図】
14角または14銀合でこれが詰まない。
24金、22玉、23歩を同角(銀)と取られてしまう。
先に88飛を消去する作意順だとどうなるのか。
図は17手目17龍に14角と間駒した局面。
【変化図】
14角、24金、22玉、23歩、同角、同金、
同玉、14角、22玉、23歩、13玉、25角、
23玉、14角、34玉、35歩、同玉、15龍、
34玉、25龍まで37手詰
これで49香と56金の役割も大凡分かったことと思う。
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