風みどりの詰将棋と関係ない話(23) 若い教員に贈る本

 以前は同じ本を誤って購入するということがたびたびあったが、最近のamazonは次のような表示をしてくれる。

 

 ただしこの表示には疑問を覚えた。2018年…しかも10月?
 変だな。

 なんという本を検索したときに出てきた表示かというと


 ミルグラム『服従の心理』だ。

 この本はアイヒマン実験とよばれる心理学の実験レポート。
簡単に内容を紹介すると、2人1組の実験協力者が教員役と生徒役に振り分けられる。しかし生徒役になるのは実は役者で、何も知らない協力者は必ず教員役になるようにクジが細工されている。そして生徒役が問題を解けないと教員役は電気ショックを与えるように指示されるという実験だ。しかも間違える度にだんだん電圧を上げていくように指示される。
 実験はどの程度で教員役が電気ショックを与えることを拒否するか。またその結果を左右する環境要因はどのようなものかを探ろうというものなのだ。

 この本を初めて読んだのはおそらく学生時代だったと思う。大抵の本は一度読んだらそのままのオイラにしては、数少ない再読した本の1冊だ。
元の本は絶版になってしまったが、文庫本で今でも入手できるのは嬉しいかぎり。未読の方は是非一読をお勧めする。

 この本を長いこと、新しく教員になった若い仲間にプレゼントすることにしていた。
以下の引用は別のブログに記事として書いたもの。

 数年前に、珍しく職場に新人が3人も来た。いつのまにか、歳だけはくっていた私はちょっと浮かれて、この新鮮な若者たちに何か伝えたいと思った。
 かといって、毎晩飲みに連れて行って酔いに紛れて教育的指導をするだけの時間的精神的経済的余裕はなかったので、熟考3分の末、この本を1人1冊ずつプレゼントすることにした。読み終わったら、一緒にディスカッションしましょうということで。

 この本は1つの心理学に関する実験の詳しいレポートです。その実験は「どのような状態で普通の善良な人が残虐な行為を行なうことができるか」というものを調べようとした物です。
 その実験の途中から、人間がいかに権威によって与えられた正当な理由と、「命令された・依頼された・仕事だから」といった責任を転嫁できる理由があれば、みごとに普段の生活信条とかけはなれた行為も平然とできるという事実が浮き彫りにされてきます。
 これは組織として効率的に行動するようにデザインされた人間の本質に近い物なのかもしれません。
 ギロチンを発明したギロチン博士も、ガス室を発明したアイヒマンも、残虐な性行がゆえの発明ではないということが予想されます。むしろ、まじめで勤勉で、なおかつ不幸にも優秀だった。。。
 新人3人にこの本を読んでもらいたかったのは、これから当然組織として動いてもらわなければいけないのだけれど、最後の最後の場面では自分で責任をとるという決意、これを胸に、日々精進してもらいたい。そんな気持だったわけです。

 ……ただ、結局、だれも読了してくれなかったみたいなんですけど(T_T)。うち1人は1年もたずに辞めてしまったし。

 この記事を書いたのが2004年。もう17年も前だ。

 それから時は夢のように過ぎ去り、2017年から2019年の3年間はオイラは最後の勤務校になるS中学校に勤めていた。何にも人生の(?)計画を考えていなかったオイラは、定年を迎える3年前に異動するというアホなことをやらかしてしまったわけだ。
 先輩達は最後の数年は若手が必死こいて仕事しているのを横目に、なんだかのんびりと過ごしていたような気がするのだが…たぶん気のせいだったんだろうな。

 最後の3年間なので責任の軽い立場で担任をやりたいという希望は虚しくも叶えられず、学年主任で担任はなしということになった。異動してきたばかりの学校で新しいことをする気にはならないので、学年主任の仕事は単に無難にこなすことにして、授業の方で新しいことをすることにした。それまで授業は黒板でチョーク1本でこなす主義。クラスにノート当番を置いて、ノート指導に力を入れていた。それを180度方向転換して、ノートも板書も廃止した。電子黒板を使って教員がグダグタしゃべるのは授業開始から10分以内。あとは生徒同士で相談しながら問題プリントに取り組むという授業形態。教材の準備に3年間追われ続ける毎日だった。

 と、話がずれた。

 2018年といえば、そのひたすらプリント作りに追われていた2年目。だが、その頃、新人が入ってきたという記憶がまったくないのだ。しかも10月なんて半端な時期に。
 だいたいこの頃はあまり若い人に良い印象を持っていない。単元毎に焼き肉食わせながら「ここはちゃんと押さえておくように」と指導していた若い子は教員試験に落ちた途端に出勤しなくなるし、3年担当の産休代替教員は3学期に年休全部使って出勤しなくなるし。

 いったいこの時期にこの本を買って誰にあげたんだろう?

と今回は「関係ない話」というよりも「どーでもいい話」でした。

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