詰将棋つくってみた(60) 課題12:選評

Judge : 小林敏樹

課題12:限定移動を含む詰将棋を創ってください。

優秀作

【第12問】ミーナ

正解
72角、82玉、18角成、91玉、27歩、19と、
92歩、81玉、26歩、18と、82歩、92玉、
84桂、同歩、81歩成、同玉、92銀まで17手詰

 右下の配置を見ると、これは図巧91番の形なので18角と打ちたくなりますが、それは27桂と合駒されて詰みません。発想を転換して、72に打った角を限定移動で18地点に持ってくる(!)のが作意。これなら合駒されることなく18角をセットすることができます。
 この構想は初めてではありません。打診中合を避けるという意味付けで、11手で表現した愛上夫作(パラ1985-12)が有名ですが、それ以前に伊藤正の47手詰(パラ1982-3)があります。
 それでも、ある地点にセットするという目的を明快に表現した本作はインパクトがあります。遠打は最遠移動に置き換えることができることを証明してくれました。
 文句なしの優秀作。

佳 作

【第7問】武田裕貴

正解
77銀、65玉、25龍、55と、35角、69馬、
66歩、同と、53角成、25馬、64馬まで11手詰

 4手目55との移動合が意味深長な一手。単に55歩合だと46角と開き王手して、以下69馬、55龍、同と、66歩、同と、64飛まで駒余り。このように、と金が残っていると打歩詰が解消されてしまうので、手順中にと金を取らせてしまおうという非常に高級な狙いでした。
 作意では35角~53角成の限定移動で、きれいに収束します。

講 評

【第1問】松田圭市

正解
32飛、同金、21飛成、同玉、12金まで5手詰

 飛車を2枚捨てる例題。21飛成は強力な両王手なので、限定移動という感じがしないですね。

【第2問】松田圭市その2

正解
33香不成、12玉、13角成、同玉、23金まで5手詰

 43龍の横利きを止めるための香の限定移動。不成で31に利かせておいて、角捨ての収束。完結した手順です。

【第3問】keima82

正解
45角、19と、32飛成、45と、21歩成まで5手詰

 5手で開き王手を3回。次の駒にバトンを渡す感じで、バッテリーを組み換えていく感触が楽しいです。
 2手目13合の変化は24飛の限定移動で割り切れていて、これはちょっとした隠し味。
 ・・・・以上の選評とともに佳作に選んでいたのですが、2017年の第ϻ回裏短コンの不透明人間作「連鎖反応」が、本作と同一手順であるとの指摘をいただきました。
 改良図になっているとはいえ、先行作がある以上、参考作品として選外としました。

【第4問】シナトラ

正解
41香成、27玉、23龍、同飛、33香成まで5手詰

 初手44香あるいは42香成は、どちらも4手目同桂で逃れるので、41香成として前もって21飛の利きを遮っておくのが正解。
 4手目の応手が、①同飛なら33香成まで(作意)、②同桂なら32香成まで(駒余りの変化)、③同銀なら31香成まで(駒余りの変化)という3通りの香の限定移動が作者の狙いでしょうか?

【第5問】柳原裕司

正解
98飛、59香成、48馬、27玉、18銀、同玉、
37馬、17玉、18飛、同玉、28馬まで11手詰

 初手98飛と最遠移動する意味は、7手目に開き王手した局面で明らかになります。攻方の飛を同龍と取られると28馬の詰みが成立しなくなるので、龍に触れない場所に移動しておくという仕掛けで、11手で鮮やかに構想が表現されています。
 作者によると、原田清実作(パラ2000-6)に同様の作例があることは、完成してから気が付いたとのことで、お気の毒なことでした。

【第6問】negitarou

正解
31飛成、53玉、44銀、64玉、56桂、同馬、
73飛成、同玉、71龍、63玉、72龍まで11手詰

 2手目同玉には35飛の両王手。4手目同馬なら、今度は73飛成の両王手。この応酬はうまく出来ています。
 56桂から73飛成とする展開もまずまずですが、収束がちょっと重い感じなのが残念です。

【第8問】不透明人間

正解
39角、59玉、48角、68玉、59角、79玉、
68角、88玉、79角、99玉、88角、98玉、
99龍まで13手詰

 飛角の両王手6連続。素直に楽しめば、それで十分です。

【第9問】negitarouその2

正解
51龍、同角、74香、33歩、27銀、21玉、
12香成、31玉、22成香、42玉、97角、43玉、
53角成まで13手詰

 初手27銀は17角成で不詰なので、51龍で角をそらして74香。2つのバッテリーからの開き王手が狙いでしょうか。後半が全くの追い詰めなので、面白くありません。

【第10問】芹田修

正解
18歩、16玉、15飛、27玉、36銀、同と上、
34馬、77と、16馬、同と、28歩、26玉、
25飛まで13手詰

 27玉で打歩詰の形になるので、11飛から限定移動で12馬かと思いましたが、それは36銀を同玉と取られて全然ダメ。
 35に利かせて15飛と短く打ち、34馬の限定移動から16馬と捨てて打歩詰を打開するのが気持ちの良い手順でした。

【第11問】negitarouその3

正解
23香成、17飛成、45銀、同玉、62香成、54銀、
46歩、35玉、36金、44玉、45金、53玉、
54金、62玉、63金、51玉、62銀まで17手詰

 3手目45歩では抜けられるので、45銀と捨てるのがポイント。以下は銀合限定からの長い追い手順。左右2か所で角+香のバッテリーを開くというだけでは作品とはなっていないようです。

【第13問】negitarouその4

正解
44角成、72馬、41飛成、23玉、21龍、22歩、
同龍、同玉、41桂成、21玉、11馬、32玉、
33馬、41玉、51金、31玉、32歩、21玉、
11香成まで19手詰

 11手目11香成としてしまうと打歩詰になります。面白いのはそこだけで、全体的に手順が平板すぎます。

【第14問】negitarouその5

正解
74角、37歩、63角不成、54歩、同角不成、47玉、
58と、56玉、57歩、55玉、45と、64玉、
65歩、53玉、44と、52玉、43と、51玉、
42とまで19手詰

 63角不成に54歩合は、成・不成を尋ねるいわゆる「態度打診の中合」という高級手筋。
 そこまでは成立しているのですが、その先はただ王手を続けて詰むだけなので、これではせっかくの構想も台無しです。

【第15問】青木裕一

正解
27金、同玉、26金、同玉、25飛、36玉、
85飛、46玉、57銀、同玉、59香、48玉、
58馬、39玉、48銀、38玉、47銀、27玉、
36銀、17玉、26銀、同玉、25飛、17玉、
27飛まで25手詰

 持駒に香がある形では、65飛の限定移動から46玉、48香・・・とするのが通例なので、85飛の限定移動は意欲あふれる一手。
 後半は平凡な手順ながらも、飛車を右辺に戻して還元玉の詰上がり。

参考図

伊藤看寿『将棋図巧』第91番

愛上夫 詰パラ1985.12

伊藤正 詰パラ1982.3

不透明人間 詰将棋考察ノート2017.11.9

原田清実 詰パラ2000.6

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