詰将棋入門(182) 最長手数記録更新作(当時)

三代伊藤宗看『将棋無双』第75番 1734.8

すでにこの連載で伊藤看寿「寿」611手詰、奥薗幸雄「新扇詰」873手詰を解説してきている。
比較すると225手は可愛らしいものだが、当時は驚異の長手数であったことだろう。門脇本によるとそれまでの長手数記録は伊藤宗印『将棋精妙』第96番の99手詰だったそうだ。

序はたいした変化もない。

99歩、同玉、88角、89玉、
44角、98玉、48龍、87玉、

龍追いの要となる角を手順に配置するのは凄い。
48龍他に手がないので勇気がいるが、実は玉方の持駒は桂と歩だけなので合駒ができない。

88龍、76玉、77龍、65玉、
66龍、54玉、53金、同金、

1周目は62金や32桂を処理していくのだろう。

55龍、43玉、53龍、34玉、
24銀成、同香、35金、同と、

24銀成に同玉の変化は実は物凄く深い。
13龍以下作意と同様に追って収束で違いが出てくる。(15玉に33角成ができる)

33龍、25玉、35龍、16玉、
17歩、同玉、37龍、16玉、

右側でターンするのに1歩消費する。

17龍、25玉、26龍、34玉、35龍、43玉、
33龍、54玉、53龍、65玉、55龍、76玉、
66龍、87玉、77龍、98玉、99歩、同玉、
79龍、98玉、99龍、87玉、

左側でもターンするのに1歩消費する。
もう手順に取れそうな駒は見当たらないのでけっこう忙しい。

88龍、76玉、77龍、65玉、66龍、54玉、
55龍、43玉、53龍、34玉、33龍、25玉、
35龍、16玉、17歩、同玉、37龍、16玉、

なにか仕掛けられそうなこともなく1歩消費してしまう。
このまま無為に進めたら54手目と同じ局面で持駒の数だけ少ない局面になってしまう。
それは失敗確定なので、それまでに何か鍵があるはずだ。

17龍、25玉、26龍、34玉、
35龍、43玉、33龍、54玉、
53龍、65玉、55龍、76玉、
66龍、87玉、67龍、

77龍では54手目で「持駒歩3」となり失敗確定。
67龍と69成銀に狙いを付ける。

98玉ならば…
98玉、99歩、89玉、69龍、79銀、78銀

【変化図】

したがって玉方は77に捨合をしなければならない。
歩は二歩なので銀か桂だが…

77桂、

77銀合は同龍、98玉、99歩、同玉、79龍、98玉、99銀、
97玉、88銀、96玉、97歩、85玉、75龍、94玉、95龍まで(図は略)

同龍、98玉、99歩、同玉、
79龍、98玉、99龍、87玉、

これで54手目の局面と比較してみると、持駒「歩5」が「桂歩3」に換わっている。
歩2枚を桂馬1枚に変換した結果になっている訳だ。

88龍、76玉、77龍、65玉、66龍、54玉、
55龍、43玉、53龍、34玉、33龍、25玉、
35龍、16玉、17歩、同玉、37龍、16玉、

桂馬が手駒に入ったが使えそうなところは見当たらない。

17龍、25玉、26龍、34玉、35龍、43玉、
33龍、54玉、53龍、65玉、55龍、76玉、
66龍、87玉、67龍、77桂、

再び桂を要求する。

同龍、98玉、99歩、同玉、
79龍、98玉、99龍、87玉、

これで持駒「桂2歩」になった。
もうこれ以上持駒変換はできそうにない。

88龍、76玉、77龍、65玉、66龍、54玉、
55龍、43玉、53龍、34玉、33龍、25玉、
35龍、16玉、17歩、同玉、37龍、16玉、

33龍、25玉に37桂もあるが15玉、13龍、14歩、16歩、同玉、14龍、15合で打歩詰。
収束に入るのは左辺か。

17龍、25玉、26龍、34玉、35龍、43玉、
33龍、54玉、53龍、65玉、55龍、76玉、
75龍、

66龍では歩がないので手が続かない。非常手段で75龍とするしか攻め手がない。
67玉と右に逃げられそうだが…
66龍、78玉、77龍、89玉、86龍

【変化図】

以下3手詰だ。
それでは何故今までとらなかったのか。
それは75歩は玉方の駒だが二歩禁で77桂合を入手するのに役立っていたからだ。
先にとってしまうと77歩合とされてしまう。

   87玉、79桂、

そこで87玉と逃げるが、77龍では以下持駒が「桂」のみに換わった局面に進んでしまい失敗だ。
ここで79桂と手を変える。

   同成銀、77龍、98玉、
99歩、89玉、86龍、

79桂は98玉や97玉と逃げる変化もあるのでやりにくい。
98玉は99歩、97玉、89桂、同香成、77龍以下。
97玉は89桂、98玉、99歩、89玉、86龍以下。
やってみればさほど難しい手順ではないのだ。
また99歩に同玉だと79龍、98玉、99銀、97玉、88銀、96玉、99龍、
85玉、95龍、76玉、75龍、67玉、66龍以下。
したがって玉は右辺への逃亡に希望を抱いて86香を取られることを許す。

   78玉、88龍、67玉、58金、56玉、
86龍、65玉、66龍、54玉、

これで逃げられたが左辺にはもう戻ってはこられない。
99歩が残っているので行き止まりだ。

55龍、43玉、53龍、34玉、33龍、25玉、
35龍、16玉、18香、

ここで合駒を稼いでおくのが細かいところ。

   17桂、同香、同玉、
37龍、16玉、17龍、25玉、

右辺でターンして収束の場所は上辺と決まった。

26龍、34玉、35龍、43玉、33龍、52玉、

今までは持駒に歩があったので52玉には53龍、61玉、62歩で簡単だった。
ところが今は持駒に歩がない。

53角成、51玉、43桂、61玉、73桂、72玉、71馬、

要の角が駒取りながら消えた。

   同玉、61桂成、72玉、73金、61玉、
51桂成、71玉、72金、同玉、73龍まで225手詰

長篇を一度作ってみれば判るが、81画は狭い。
そして39枚の駒は少ない。歩は直ぐに足りなくなるものだ。
狭い所に少ない駒をやりくりしてメインの手順と収束を作る。
本作は実に上手くできている。

伊藤看寿は兄である宗看のこの作品を研究し、「寿」611手詰を作ったのであろう。
比べてみて伊藤看寿の考えた道筋を想像してみるのも一興である。お試しあれ。

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