詰将棋入門(184) 華麗な邪魔駒消去とその奥の変化伏線

三代伊藤宗看『将棋無双』第89番 1734.8

1回転半の素朴な龍追いだが2箇所の打歩詰の陥穽を事前に回避する巧妙な手段が鮮やかだ。
なお本局は不詰であり、門脇芳雄氏は41成香が41成桂の誤植ではないかとみている。

ということで解説は41成桂で進めることにする。

初手は飛車を切るしかないだろう。

78飛、同玉、88龍、67玉、

馬を取りたいが56玉で後続手に困る。

68龍、56玉、57龍、45玉、
46龍、34玉、35龍、43玉、

一応打歩詰の局面だが49歩もあるし、この辺はほとんど forced move だ。

52銀不成、同玉、32龍、63玉、

37角の利きを確認して、手をつなげるとしたら……

74銀、同玉、72龍、

8筋に逃げるのは84玉は73角成で簡単。
85玉は76龍、94玉、72角で詰む。

65玉、76龍、56玉、66龍、

ここで45玉と47玉の応手が考えられる。
正解は47玉なのだが、45玉の変化を確認しておこう。

   45玉、46龍、34玉、35歩、23玉、
24歩、14玉、32角、23香打、

【変化図】

1筋に逃げ込まれるが合駒が悪く23香を喰って詰みだ。
原図ではここで23桂合とされて不詰。
この図では41成桂なので桂馬は売切れになっている。

そこで24手目は下に逃げるのが(玉から見れば上に逃げる)正解だ。

   47玉、

さて、この局面がまた悩ましい。
57龍と46龍が考えられる。
調べていくと、これは非限定のようだ。

なぜなら57龍に36玉だと

46龍、27玉、18角、38玉、48龍まで

【変化図】

つまり57龍だと玉は38に逃げる。

次に46龍に58玉だと

48龍、67玉、68龍、56玉、78角、47玉、
48龍、36玉、46龍、27玉、26龍、38玉、
39歩、49玉、46龍、39玉、48龍、29玉、28龍まで

【変化図】

つまり46龍でも玉は38に逃げることになる。

というわけで作意通り57龍とすることにする。

57龍、38玉、

39歩は29玉なので龍で追うしかないようだ。

57龍でも38玉、48龍となる。
46龍でも38玉、48龍となる。
厳しい人は余詰と言うだろうが、ここは非限定で勘弁して欲しい。

48龍、27玉、28龍、36玉、26龍、

また二択だ。
しかし47玉は詰む。
47玉、46龍に58玉は先程確認した変化と同じだ。
38玉は今度こそ39歩で詰む。

そこで45玉と逃げるのが正しい。

   45玉、46龍、34玉、35歩、23玉、
24歩、14玉、32角、23歩、

【失敗図】

ところがこれが行き止まり。
先の変化と似たような局面なのに、今度は23歩合とされる。
そう、玉方の28歩を取ってしまったので、玉方は二歩禁が解消されて香合でなく歩合ができるのだ。
これは失敗だ。

15歩で詰みなのだが、打歩詰であり、また19歩があるのでそもそも二歩禁で15歩が打てない。
二重苦だ。

これが宗看の仕掛けた第1の謎である。

この【失敗図】で16桂と19歩が邪魔駒であると見抜けるだろうか。
この2枚がなければ、15歩、24玉、44龍までの詰みなのだ。

それではここまでの手順の何処かで16桂と19歩を消す手段があったのだろうか。

それは28手目の局面まで戻る必要がある。

この局面をよく見ると、16桂を消すことが可能だ。
18角と打てば良い。
18角、16玉、27角、同玉、で角1枚を費消して16桂を消すことができる。
先の【失敗図】で32角、23歩、の2手は何の成果も出していないので、この収束に角は不要だ。

しかし、この順では19歩が消えていない。

それでは宗看流の華麗な角使いを堪能して欲しい。

38角、

   17玉、18歩、同玉、29角、

   27玉、18角、

   16玉、27角、

   同玉、

角が28歩の周りをぐるりと1回転する妙技!
これで16桂と19歩が見事に消えているではないか。
これで解決だ。

28龍、36玉、26龍、45玉、46龍、34玉、
35歩、33玉、

42龍、23玉、24歩、14玉、15歩、

これで15歩が打てる。

   24玉、44龍、23玉、34龍まで55手詰

【持駒が余るが?】

無事に詰んだが、持駒に歩が4枚余る。
どうもこれは正解ではないようだ。
どこかで玉方の受け方・逃げ方を間違えたようだ。

手順を逆回ししていくと、次の局面が問題だったと気がつく。

47玉と逃げたらどうなるのか。

46龍、58玉、

この変化は先に調べたときは持駒に角があった。
ところがその角はもう使ってしまったのだ。
とすると59歩と打つしかない。

59歩、69玉、66龍、78玉、68龍、
87玉、88龍、96玉、

【失敗図】

これは持駒歩だけではどうにもならない。
これは失敗だ。

これが宗看の仕掛た第2の謎だ。
58玉の変化を歩だけで詰むようにする方法はいかに。
先程の詰上り図(?)で持駒に歩が4枚余った。
この4枚の歩で事前にこの変化を詰むようにある手順を入れておく必要があったのだ。

歩が使える局面を求めて局面を遡っていくと、この局面にまで戻ることになる。
16手目の局面である。

74銀しかないと先程は考えたが、64歩と打つこともできる。
しかし、歩を打っては角道が遮られるため手が続かないと判断したのだ。
改めてこの局面をよくみるとちょうど4枚、歩が打てるではないか!

64歩、73玉、74歩、83玉、84歩、93玉、94歩、

   同と、83歩成、同玉、73歩成、同玉、
63歩成、同玉、

これで持駒歩4枚を使って95とを94とに移動させた結果になっている。
以下は既に辿った手順なので、早送りで進めよう。

74銀、同玉、72龍、65玉、76龍、56玉、
66龍、47玉、57龍、38玉、48龍、27玉、

38角、17玉、18歩、同玉、29角、27玉、
18角、16玉、27角、同玉、

28龍、36玉、26龍、

さて、ここでもし47玉でも

   47玉、46龍、58玉、59歩、69玉、
66龍、78玉、68龍、87玉、88龍、96玉、
86龍まで

【変化図】

95と→94との効果が覿面だ。

そこで作意は

   45玉、

あとは予習済みの収束だ。

46龍、34玉、35歩、33玉、
42龍、23玉、24歩、14玉、

15歩、24玉、44龍、23玉、34龍まで69手詰

一つの謎を華麗な手段で解決しても、その奥にもう一つの謎が隠されている。
その解決方法も4歩連打と成り捨てで仕事をした痕跡を残さない。
二枚腰の傑作だ。

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