タイトルの9手詰を紹介する前に、作者の別の作品をまずは解いてみたいただきたい。7手詰と11手詰である。
山本進 将棋マガジン1994.9
山本進 近代将棋1997.11
正解は末尾に動く将棋盤を置いてあるが、おそらくさほど苦労せずに解けたのではなかろうか。
7手詰は取れる銀を動かしてから捨てる筋。
11手詰は13金から24金と捨てる複合捨駒が狙いの、いずれも教科書通りの正統的な作品だ。
山本進は詰パラには作品を投じていないようだが、近代将棋や将棋世界ではこの頃、名前を見ない月はないような多産な作家だ。
発表作はいずれも上記2作のような気軽に楽しめる作風だった。
そして谷川名人も悩ませたという9手詰が発表された。
山本進 将棋世界1990.8
9手詰である。
まず目につくのは取れない捨駒11金だろう。
11金、
22玉、13龍、同玉、
【失敗図】
ところがこれは駒が足りない。41桂と43銀が32飛成も33飛成も妨げているのが痛い。
それでは初手は平凡に23金だろうか。
23金、
21玉、
【失敗図】
これも全然展望が見えない。
とすると初手は龍を切るしかないではないか。
13龍、
同玉、24金、22玉、23金打、21玉、
【失敗図】
しかしどう考えても手駒が不足している。
これで「詰まない!」と悩まれた方が多かったそうだ。
正解は……
13龍、
やはり切るのが正解。
同玉、14金、22玉、13金打、
狙いは1筋への金の連打。
もう見えたことだろう。
捨駒皆無の芋筋だった。
21玉、24飛、32玉、22飛成まで9手詰
難解と話題になった本作だが、作者名から「綺麗な手筋物」という先入観が植えつけられていたことが大きな要因だったのだと思う。そのために冒頭に2作いつもの山本進作品をあげてみたのだが、どうだっただろうか。山本進を知らない方は案外簡単に解かれたのではなかろうか。