『現代詰将棋短編名作選』(角ブックス2017)には400題の17手以下の傑作が集められている。
収録作の手数分布は以下の通りだ。
1手 | 3手 | 5手 | 7手 | 9手 | 11手 | 13手 | 15手 | 17手 | 計 | |
収録数 | 1 | 1 | 11 | 50 | 34 | 67 | 43 | 108 | 85 | 400 |
相対度数 | 0% | 0% | 3% | 13% | 9% | 17% | 11% | 27% | 21% |
5手以下が少ないのは仕方ない。
手数が多ければ、それだけ攻方・玉方の好手を詰め込むことが出来る。
下の表は2020年~2021年に将棋世界に採用された作品の手数分布だ。17手が最も多い。
7手 | 9手 | 11手 | 13手 | 15手 | 17手 | 計 | |
収録数 | 7 | 16 | 41 | 30 | 41 | 57 | 192 |
相対度数 | 4% | 8% | 21% | 16% | 21% | 30% |
そこでもう一度、『短編名作選』の表を見てみよう。わかりやすくグラフにしたものが下図だ。
一様に増加している訳ではなく、9手・13手・17手で下がっていることがわかる。
これは、どういうことなのだろう。
9手と13手についてはこう考えている。
作家達は9手詰・13手詰の開発を怠っている
この仮説の根拠は詰パラの「学校制度」だ。
詰パラは出題を手数で分類して幼稚園、小学校、中学校、高校、短大、大学、大学院というコーナーでわけて出題している。
中学校は9手詰と11手詰だ。
短編において2手の差というのは大きい。
同じコーナーで解答者からの評点の高さを競う趣旨の学校では、11手詰の方が有利になることは間違いない。
だとすると作家は9手詰を投稿するよりは11手詰を投稿するだろう。
試みに1991年から2010年までの20年間で中学校発表作を検索してみた。
結果は9手詰が390題、11手詰が690題だった。(合計1000にならないのはダブりがあるためだろう)
やはり11手詰がかなり多い。
13手詰についても同様の可能性がある。
高校の手数は13手~17手。
そこにわざわざ13手詰を投稿する作家は少ない。
つまり、11手詰、15手詰を作ろうと考える作家は多いが、9手詰・13手詰を作ろうと考える作家は少ないということだ。
グラフを見ると17手詰は15手詰より少ない。
これはパラの表紙は15手以内なので15手詰を目指して創作し、初形\(6\times6\)に収まらなかった作品を高校に投稿するためという仮説を考えてみたが、単純にタマタマ、誤差の範囲であるような気がする。
やはり20年間で高校に出題された作品を手数別を集計してみると、13手詰が255題、15手詰が354題、17手詰が410題できちんと手数が増える毎に増加している。
10年に一度ぐらいの割合で、「学校」の手数区分を変えてみるという案はどうだろう。
例えばこんな感じに。
- 小学校 7~9手
- 中学校 11~13手
- 高校 15~19手
これなら9手詰、13手詰の開発が進むのではないだろうか。
それ以上の手数では2手の差が相対的に小さくなるので意味はなかろうかと思われる。
「詰将棋つくってみた」課題17の作品募集告知ページに、「九手詰について」と書き始めたテキストでしたが、長くなったので別エントリーとしました。
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