詰将棋入門(197) 32飛生の5手詰のバリエーション

柴田昭彦 将棋ジャーナル 1986.6

4月になったので、この連載は「入門」なのだと再確認した選題だ。

飛車を突っ込みたいが、13からの逃走路がみえている。持駒を考えても初手はこの一手。

14香、

さて間駒の選択だ。
揮発性か粘着性か……同香成と取ると同玉と同角と応手が増えるので、ここは揮発性と考えて弱い駒から考えていこう。

■歩の場合

   13歩、

これは習いある形といえる。

32飛不成、

32飛成とすると12歩が打歩詰になるという形だ。
打歩詰回避で不成と入るのが手の筋。

   11玉、12歩、21玉、31とまで7手詰

【変化図】

この5手詰からバリエーション(変奏曲)を考えようと柴田昭彦はしたのだろう。

香・桂も同じなので次は

■銀の場合

   13銀、

これは一目強すぎる駒だ。

32飛成、11玉、13香不成、同角、12銀まで7手詰

【変化図】

32飛成(不成でも同じ)と入って間駒を取って詰みだ。
金・飛も同じ。
ということは2手目は角に決定だ。

   13角、

同じように攻めてみる。

32飛不成、11玉、12歩、21玉、

この局面で13角の意味が分かる。

21と、同角、

【失敗図】

13角が31にまで利いているのだ。
32飛がブラだから、この局面は不詰。
しかし、12歩がなければ……12飛成までの1手詰だ。

そこで手を変えて攻める。

(7手目より)
22歩、

同角ならば、11歩成、同角、31とまでだ。

   12玉、21歩成、同玉、

これで6手目の局面と比較して12歩が原型消去できている。

31と、11玉、13香不成、同角、

満を持して31とを決行する。同角、12飛成までで解決かと思いきや、11玉と躱す手が残っていた。

12飛成、同玉、21角、11玉、12歩、22玉、
32とまで21手詰

32飛を21角に打換えることにより22への利きを消して打歩詰が打開された。

基本の5手詰からの変奏曲だが、角合で邪魔駒消去や駒の打換えが発生して楽しめる作品だ。

弱点は3手目22銀成が成立すること。

   同玉、32飛不成、11玉、

これで作意4手目の局面になる。
つまり22銀成、同玉の2手は迂回手順ということだ。
不完全作ではないが大きなキズで、懸賞出題には向かないだろう。(無駄な誤解者を生むから)

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