長編詰将棋の世界(10) \(龍鋸+煙詰\)

2010.1から3年半続けた詰パラ大学院での解説の再録です。

添川公司「龍泉洞」詰パラ2010.5


棋譜ファイル

22と、同玉、33歩成、11玉、22と、同玉、13金、同銀、
同角成、同玉、11飛12角、同飛成、同玉、34角13玉、
22銀、同玉、25龍、11玉、14龍、13飛、12歩、22玉、
13龍、同玉、23飛、12玉、26飛成、11玉、15龍、22玉、
24龍、11玉、14龍、13飛、12歩、22玉、13龍、同玉、
23飛、12玉、27飛成、11玉、17龍、22玉、26龍、11玉、
15龍、22玉、24龍、11玉、14龍、13飛、12歩、22玉、
13龍、同玉、23飛、12玉、28飛成、11玉、17龍、22玉、
26龍、11玉、15龍、22玉、24龍、11玉、14龍、13飛、
12歩、22玉、13龍、同玉、23飛、12玉、29飛成、11玉、
19龍、22玉、28龍、11玉、17龍、22玉、26龍、11玉、
15龍、22玉、24龍、11玉、14龍13飛、12歩、22玉、
13龍、同玉、23飛、12玉、33飛生、22玉、23飛成、31玉、
41香成、同と、同馬、同玉、21龍、42玉、22龍、53玉、
33龍、62玉、52角成、同玉64桂、62玉、52桂成、同玉、
54香、62玉、52香成、同玉、64桂、62玉、72桂成、同玉、
73銀、83玉、95桂、93玉、83金、同銀、同桂成、同玉、
72銀打、93玉、92と、同玉、82銀成、同歩93歩、同金、
84桂、同成銀、93龍、同玉、94歩、同玉、95歩、同玉、
86金、94玉、95香、同成銀、同金、同玉、96歩、同玉、
85銀、95玉、96歩、同金、84銀、94玉95歩、同金、
83銀引生、同歩、同銀生、93玉、94歩、同金、
82銀生、92玉、93歩、同金、81銀生、91玉、92歩、同金、
同銀成、同玉、83金、81玉、82金まで187手詰

24玉は21飛成、23角、51馬、42金、同馬、同歩、23龍、
 同玉、32銀以下
23金合は同角成、同玉、34銀、12玉、22金、同玉、25龍、
同龍、同桂、12歩、21玉、22歩、32玉で不詰
54香、同と、64桂打、51玉で不詰
84桂を先でも可
83銀引を先でも可

2筋の歩の柱が目に付く。連取りか。一方8、9筋をみると銀歩送りの気配がする。煙か。それでは歩の連取り+煙なのか。正解はさらに龍鋸が展開される。作意を追っていこう。

序盤はほぼ絶対手で始まる。飛車をとって22と、同玉で考える。

32飛から12飛成は同とで絶望。ならば13金しかない。同桂なら今度こそ32飛なので同銀。銀が入るのなら角も切ろう。

同玉に11飛と打てば逃げる変化はあるが12角合。ここで先の作品を知る人は連取り趣向の形を作る目星がついたはずだ。34角に対して合駒が悪く13玉が正解ととわかれば、龍を2筋で活用する途がひらける。

ここからは楽しいと金剥がしの時間だ。ノキ王手でと金を剥がし、龍鋸で近づいていく。
ところが、龍鋸をしないで飛合をしてしまった誤解者が数名でた。

途中図187手目

趣向の舞台を綺麗さっぱり片づけて、次は中盤の難所。
52角成は美しいが当然の手として、問題は次の手だ。
56香で銀を剥がすのが先か、76桂でと金を剥がすのが先かということだ。
一見どちらでも同じ様に進行し、73銀からは合流する。
正解はと金から剥がす。銀から剥がすと紛れBのようにぎりぎり詰まないのだ。
筆者はここでかなり悩んだのだが、強腕揃いの院生諸君はここは素通りだった。誤解者は1名のみ。

収束は72銀打が打ち難いという声があったくらいで淡々と進む。
途中2カ所の手順前後も痛いキズだ。

銀歩送りという煙詰では数多くの作品で採用された収束、「この作者なら」もっと新鮮な収束をという声があった。

その気持ちはわかるが詳らかに調べてみれば序盤の趣向に大駒4枚とも使ってしまう。持駒は剥がした歩が豊富。となれば「この作者にしても」銀歩送りの収束を使わざるを得なかったと読み解くべきであろう。

作者 龍鋸連取り入りの煙詰。連取り後の展開をどうするか中々決まらず苦労しました。収束はよくある銀歩パターンですが、88香/97金型は初めてだと思います。

中沢照夫 難しい導入を通り抜けると楽しい趣向手順が待っていた。龍鋸と飛合からなるリピートが手数稼ぎに貢献している。つなぎの部分は軽快だが、左辺では紛れも豊富で苦労する。72銀打がピッタリの好手で、その後のスピード感は実に爽快だ。
今川健一 煙らせるだけでも、凡人には難しいのに竜鋸まで入るとは!これで添川さんの煙は何局目かな。今に煙詰だけで、作品集が作れますね。
佐藤 司 龍泉洞ってどんな所ですか?また本作との関連は?
内藤陸 龍鋸+連取りの煙詰を初めて見た。舞台が右から左に移る手順がなめらかで感心させられる。終盤の7二銀打が盲点に入った
凡骨生 収束細かいキズがあるものの、と金剥がし入り煙詰で大いに楽しみ(苦しみ)ました。
利波偉 例の龍鋸が煙になるという添川氏の嗅覚には感心しました。ただ取った歩を既存の銀歩送り収束で消化するのは、作者が添川氏だけに不満が残りました。
加賀孝志 序の歩を取りながらの趣向、中盤の横追い、収束の例の手筋基本的煙の手筋ですがまとまりがあり楽しめました。
吉川慎耶 84銀、94玉の局面からがスッキリしないのは残念だが、適度に考えさせる作品で楽しめた。72銀打は非常にやりにくい。
和田 登 飛車が縦横無尽
国兼秀旗 仰天驚愕の龍鋸煙。難しいところはなく、水がさらさらと流れるように解図できる。しかし趣向手順の印象が強く残る、解後感抜群の煙詰である。
塚越良美 歩の連取りと龍鋸。72銀打盲点。
増田智彬 右下のと金群からと金はがしをすることは予想がつくが、プラス龍鋸を組み合わせるとは!中盤の駒の整理に唸りつつも、大量の歩をどう消費するのだろうとは思ったが、左下の装置からピンときた。銀歩送りか!しかしこれが煙とは信じられないなぁ。A
宮本慎一 打歩詰に注意して詰ます。玉は8,9筋方面で寄せる。
小川悦勇 感心のため息が出るばかりです。評価はA
斎藤博久 と金を取る趣向だけでも素晴らしいのに煙詰まで持っていくとは巧みの技。
武田静山 指し手と合駒が限られてtいたため序盤が楽なので助かった。氏の作品を前号と続けて解けて感激です。
永島勝利 序の11飛~34角が見えにくかった。到底「易しい」とは思えない。龍鋸に入って以降の順はむしろ「楽しい」世界でした。収束もユーモラスで良いですね。
池田俊哉 方や、森敏宏氏、鈴木利明氏の龍鋸連取りを主題とした煙詰変奏曲と言ったところか。添川氏らしく、おそらくは序の趣向から正算で仕上げた煙と思われるが、収束の銀歩送りの是非はともかく、143手目と167手目の手順前後は少々いただけない感じがする。序に既視感があるだけにしっかりした収束が欲しかったように思う。    A
神谷 薫 一見して右辺は森敏宏さん作(近将64.03)で左辺は定番収束(に近い形)。趣向と左辺をつなぐ「21龍~22龍~33龍~52角成」と左辺で銀歩収束に辻褄を合わせる「73銀~95桂~83金の精算」に作図技術を感じる。この前半の趣向は角合いを防止する必要があり、それを煙と結びつける発送と作図力は素晴らしいと思う。
竹中健一 趣向への入り方と左辺へ追った後が少し面倒だが、最後は思った通りの形で見事に煙りましたね!!
詰鬼人 右下のと金を取るのは面白い狙いですがやや追い手順気味。
野口賢治 龍の足の長さを生かした連取りが序幕だが、プロットの成立過程も合駒が入って筋金入りのウデを感じさせる。左辺に移って成銀配置の役割が焦点だが、これを頂戴しての銀歩送りには思わず笑ってしまうほどの楽しさがあった。
鈴木 彊 先月に引き続きまたしても煙詰。中盤までの飛角による空き王手による「と金はがし」は圧巻でした。このような「と金はがし」は初めての体験で充分に楽しめました。詰将棋バンザイです。
須川卓二 この趣向手順と煙が結びつくかねえ~本当に作者の技量には驚くばかり。作者には40枚が少なすぎる! A

「長編詰将棋の世界(10) \(龍鋸+煙詰\)」への2件のフィードバック

  1. 「ノキ王手でと金を剥がし、龍鋸で近づいていく」の部分について。
     ①原文では「ノキ王手」→「退き王手」となっていますが、改変の理由は?
     ②「退き王手」という用語は初見ですが、どういう意味でしょう? また、他の用例があれば、ご紹介を。

  2. こちらが原文でパラに掲載にあたって細かく改変しています。つまり理由は忘れました。
    ノキ王手は普通に使いませんか?田宮さんかな使っていたのは。

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