詰将棋入門(3) 「煙詰」

伊藤看寿 「煙詰」 図巧 第99番 1755

98番と見開きで並んでいる本作99番はその対称性からインパクト抜群だ。
98番が盤面最少の1枚なのに、本図は数えてみればわかるが(JSの図面は玉方持駒も表示されているので便利)39枚。使用駒39枚が標準である詰将棋の世界では、これを「全駒図式」と呼ぶ。持駒は「なし」というのが約束だ。

もちろん初形条件だけでは終わらない。
長編なので途中図も入れて簡単な手順の解説もしよう。

序盤は93の質駒入手を目指して、玉を吊り上げていくしか手がない。

81と、同玉、71香成、91玉、81成香、同玉、72と、91玉、
82と、同玉、

ここで93馬としたいのだが、以下同玉、73飛、94玉、83飛成、85玉、84龍、同玉で手が切れる。
34龍に着目して、2枚の邪魔駒を捌くのが好手。

73歩成、91玉、82と、同玉、73と、91玉、82と、同玉、

今度こそ93馬と行きたいが、実はまだうまくいかない。
76香も消去しておくのが妙手だ。

72香成、91玉、82成香、同玉、93馬、同玉、73飛、94玉、83飛成、85玉、84龍、同玉、54龍、

64とと74歩を消去した効果が54龍。

95玉、96香、同銀成、同歩、同玉、87銀、97玉、94龍、87玉、
85龍、78玉、88龍、67玉、68銀、58玉、57銀、47玉、
46と、57玉、56金、同と、同と引、67玉、76銀、

76香を消去した効果が76銀。
この手ができて盤上を斜めに大きく動かす手順に入ることができる。

同玉、66と、同玉、77龍、65玉、55と、同玉、66龍、45玉、
44と、同玉、56龍、

流れに乗って55龍としてしまうと、収束で歩が1枚不足して首をひねることになる。

55歩、同龍、33玉、53龍、34玉、44龍、23玉、24龍、

大駒を切って、いよいよ解答者は終盤に入ったことを知る。

同玉、15と、34玉、44金、23玉、24歩、13玉、23金、同銀、同歩成、同玉、35桂、

22玉は43金で角道を効かせて詰むから12玉と逃げる。
少しは考えてみたいという方は12玉の局面からいかがでしょうか。

12玉、13歩、同玉、14歩、12玉、13銀、同桂、同歩成、同玉、
23桂成、同玉、33金、12玉、13歩、同玉、25桂、12玉、
23金、同玉、33角成、12玉、13桂成、同玉、24と、12玉、
23と、11玉、21香成、同玉、22馬 まで117手詰

さて詰上がりに残る盤面の駒数は3枚。これ以上は少なくなることのない数だとすぐわかる。
全駒から始まって、駒を捌いて捌いて最少の2枚で詰めあげる。こんなにも気持ちの良い手順構成があるだろうか。

この初形条件と終局条件の2つを満たした図、すなわち

  1. 初形は全駒図式
  2. 終形は盤面3枚

を「煙詰」と呼ぶ。

つまり元々は看寿#99の固有名詞だったものが、いまや一般名詞になってしまったというわけだ。

握り詰めなどで終形3枚にすることを「煙らす」というように動詞にもなっている。

煙詰についてもっと知りたい方は次の情報にアクセスすると良いだろう。

  • 磯田さんの煙詰全作リスト(via.詰将棋一番星)
  • 角建逸「詰将棋探検隊」には煙詰の名作が7作収録されている。是非復活させてほしい良書だ。
  • 全日本詰将棋連盟編「けむり」には35号局までが収録されている。筆者が所持しているのは青焼き版。
  • 煙詰の第一人者添川公司が執筆中と噂の新刊には煙詰が100局収録されているらしい。

なお、余計なお世話ですが……詰将棋一番星のサイトは現在図面が見えないようですが、右クリックしてソースを表示して棋譜のファイル名を確認し、
……/kemuri/k???.kifと直接棋譜ファイルを開けば見ることができます。さらにその頁をコピーして柿木将棋やKIFU for WINに貼り付ければ鑑賞も可能です。

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