詰将棋入門(10) 持駒「歩18枚」

久留島喜内 将棋妙案 第48番 1757

前回、角不成+銀歩送り趣向の作品を紹介したが、今回は純粋な銀歩送り趣向である。

難しくはないが、見たとおりに持駒歩18枚という仕上げと、いくつかの妙手を織り込んだ造りになっている。
よって簡単に手順の解説も加える。


初手はこれしかない。

13飛成、同玉、68角、

3手目に伏線といえる角捨てがでてくる。

同成銀、14歩、同玉、15歩、同玉、16歩、同玉、17馬、

17歩ではギリギリ届かない。17馬が好手だ。

同玉、26銀、16玉、


これで1回目の銀歩送り趣向の舞台が完成した。

さて、ここからはしばらく歩打~同金~銀たちで進めることができる。
ただし、どのタイミングで金を取るかが考えるポイントだ。

12歩、同金、同玉と「12」で取ることができたら、23金、21玉、22金で詰む。
しかし、51飛が守っているので21銀不成ができない。

14歩、同金、同銀と「14」で取っても良さそうだ。
ところが、以下25金と打つことになるので、
23玉、24金、32玉、23金、41玉、42歩、52玉、62桂成、42玉


これで詰まない。

正解は「13」で金をとる順。

17歩、同金、25銀、15玉、16歩、同金、24銀、14玉、15歩、同金、23銀不成、13玉、14歩、同金、22銀不成、12玉、13歩、同金、同銀成、同玉、24金、22玉、23金、31玉、32歩、

32歩と打たないと左辺に追えない。(22金では42歩に同金とされる)
「14」で清算した場合より、歩を2枚余分に使うことになるので損であるように思えるが

52桂成に42玉と戻ったときに、この32歩のお陰で31銀以下詰むことがわかるだろう。

作意は次のように進む。

42歩、52玉、62桂成、同玉、63歩、同玉、64歩、同玉、65歩、同玉、66歩、同玉、67銀、同玉、76銀、66玉、67歩、同成銀、75銀、65玉、


二度目の銀歩送りの舞台が完成した。

3手目の68角はここで打歩詰とならないの伏線だった。
打歩詰を回避する目的の妙手が68角だといえる。

以下は容易である。

66歩、同成銀、74銀、64玉、65歩、同成銀、73銀不成、63玉、64歩、同成銀、72銀不成、62玉、73香成、同玉、83桂成、62玉、74桂、同成銀、63香 まで79手詰

将棋妙案についてもっと知りたい場合は次の情報にアクセスすると良いだろう。

銀歩送り趣向については北村さんの研究論文があった記憶があるのだが、見つからなかった。
コメントをいただけたらありがたいです。

また持駒歩18枚に興味を持たれた方は次の資料がある。

これらの江戸時代の詰将棋については次の文献を参照している。

  • 門脇芳雄 「続詰むや詰まざるや」 1978 東洋文庫
  • 三木宗太 「江戸詰将棋考」 1987 将棋天国社
  • 二上達也 「将棋図式集(下)」 1999 ちくま学芸文庫

追記(2021.5.12)

コメントで指摘いただいた内容。
本作狙いの一つの68角の伏線手が不成立で
3手目より14歩、同玉、15歩、同玉、47金、
以下余詰があった。
伊達宗行による修正案が下図。

「詰将棋入門(10) 持駒「歩18枚」」への6件のフィードバック

  1. 北村憲一さんの研究論文というのは『昭和詰将棋 秀局懐古録』下巻の「第二部 大家言々」にある「私の好きな趣向局『銀歩送り』趣向の系譜」ですね。

  2. 本図、68角と出るところで14歩~47金の空き王手以下の余詰がありましたよね。どなたかが修正図を作られてたかと思いますが、誰だったかな…

    1. 確かに余詰ですね。
      この作品門脇芳雄『続詰むや詰まざるや』には採用されていないんですね。門脇さんだったら修正案も載せてくれていたでしょうに。

  3. 「詰将棋一番星」の「持駒歩18枚 全リスト」には、妙案48番の備考として「余詰指摘と修正案(詰棋めいと91.12)」とありました。
    そこで、詰棋めいとを見たところ、門脇氏が、伊達宗行による修正案(攻方38桂→玉方37圭)を紹介していました。

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