詰将棋入門(20) 酒井桂史の小駒趣向作

酒井桂史 「将棋王玉篇」 第51番 1938

大駒を使用していない小駒図式。
易しく楽しい作品なので是非挑戦してみることをお薦めする。
初手、桂馬をどっちに成るか悩むが、そこは悩まないで大丈夫(後述)。


41桂成、同玉、43香、51玉、42香成、

まずは攻方の勢力圏である三段目におびき寄せたい。
なので、玉は成香を取らずに逃げることになる。

61玉、52成香、71玉、62成香、81玉、72銀、91玉、81金、同金、同銀成、同玉、72成香、

端で駒交換を済ませて72成香(図では杏と省略する)
これは取らざるを得ない。

同玉、83歩成、61玉、72と、

なにやら今度は右に追うことになるらしい。

51玉、62と、41玉、52と、31玉、42と、21玉、32銀、11玉、21金、同金、同銀成、同玉、32と、

右でも左と同じような駒交換を経て32と。
これは取らざるを得ない。

同玉、23歩成、41玉、32と、

もう片道あるようだ。

51玉、42と、61玉、52と、71玉、62と、

最後の逃避行は71まで、持駒が金2枚なので、もう逃げられない。

同玉、63金、51玉、52金打 まで49手詰

取っても逃げても同手数だが、ここは51の玉座に逃げて詰上げるのが解答者のマナーだろうか。

玉がひたすら逃げまくる楽しい作品だが、一つ問題点がある。

それは初手61桂成でも同じように詰むということ。

配置位置は対称形だが配置は対称ではないので、これは余詰だ。

いや余詰が問題なのではなく(十分問題だが)、解答者がこれはどちらかが詰みどちらかが不詰のはずだから…と無駄な労力を費やすことが問題だ。
それは作者の本意ではないはず。

そこで筆者の案は下図。

これならはじめから
「左右対称だ。それなら初手はどっちでもいいんだね。」
と悩まずに済むと思うのだがどうだろうか。

本図は石沢孝治編「酒井桂史作品集」(1974)目録#1586 から録った。

熱心家は酒井桂史「琇玉篇」、山村兎月編「将棋王玉篇」や清水孝晏編「酒井桂史作品集」を探してみると良いだろう。

酒井桂史の主な活躍の場は「将棋月報」であったようだ。
月報については利波偉さんの将棋雑記や、金子義隆さんの借り猫かもが勉強になる。(消えた?)

この連載は門脇芳雄「詰むや詰まざるや(正・続)」と福田稔「名作詰将棋」を基に書いてきたが、ここからしばらくは湯村光造「『将棋月報』で辿る戦前の詰棋界」(詰棋めいと第23号~第30号)がネタ本となる。

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