詰棋書紹介(16) 極光21


極光21 上田吉一 河出書房新社 2001.12.30

この本をまだ読んだことがない人は不幸だ。
それは詰将棋の極上の旨さを味わっていないということだから。
そして最高に幸運だ。
これから読めるんだから。

もう最近は記憶が怪しくて嘘を書いていたら申し訳ないのだが、森信雄七段だったと思う。
「皆が皆、上田吉一と若島正を崇拝している現状は危険だと思う。」
こう発言しているのを聞いた。(「将棋マガジン」がまだあった頃)

多様性が詰将棋界の発展の基盤なのに、皆が上田と若島のコピーばかりしていたら今後の詰将棋界の発展はどうなるんだと心配しているわけである。

このサイトが「風みどりの玉手箱」という名前だった頃に、「詰将棋イロハかるた」という名作紹介を書いたことがある。(ほんの序盤で中断したままになっている)
「あ」の項なら「合駒の綾」「朝霧」
「い」の項なら「移動捨合」
「う」の項なら「打歩詰」「馬鋸」「打ち替え」
という感じで、それぞれ数作集めて並べて鑑賞するのが狙いだ。

ところが、作品を選んでいるといくつもの項目で上田吉一作品がトリになってしまう。
もしかしたら上田吉一もイロハかるたを考えて、それぞれの究極の作品を作ろうと創作活動をしているのではないかと思った。

いや、少なくとも様々なテーマを縦断的に創作していることは間違いない。

なので、作品を1つ紹介するパターンで書いている「詰棋書紹介」だが、とても1つに絞れないのだ。

で、結局選んだのが、本書の中で最も特徴が薄いかもしれないこの1局。

4手目と6手目の合駒の読みなんだけど、伝わるかなぁ、解き味が上品なのだ。
是非味わってみてほしい。

若島正による解説から引用する。

上田さんはよく「遊ぶ」という言葉を口にする。上田さんにとっては、詰将棋を作るのも、フェアリー詰将棋を作るのも、みな「遊んでいる」だけなのである。いっぱしの芸術家になったような思い込みは、上田さんには無縁だ。

この「極光21」、河出書房新社さん、是非是非重版してほしい。

現状では古書で探すしかない。

筆者も5冊ぐらい購入したのだが、いつの間にかなくなっていて販売できるのはあと1冊だけ。
古書といっても新品同様の綺麗さです。早い者勝ちですよ。→つみき書店

売り切れました。

残り1冊は死ぬ前に売ります。

また本書には収録されていないのだが、このサイトでは上田吉一作品をもう1局紹介している。
名局精解4上田吉一の伏線作品を解く!

「詰棋書紹介(16) 極光21」への2件のフィードバック

  1. 創棋会作品展に若島さんが発表済みの手筋を変化手順に組み込んだら、変化手順を作意手順にしろと、解答者からお叱りを受けた、っけ。
    詰パラ誌の解答者レベルの低さが本当に嫌になった。
    大作家の真似をしろ、ていうかひと回り下の僕ですら、彼等は過去の人だと思っているから彼等の真似をしたいとは思わない。

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