詰将棋入門(35) 変別に注意

三上毅 木葉 第6番 将棋月報 1941.4

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この作品は15手詰なのですが、発表当時「意外に多数の誤解者(里見)」を発生させたそうだ。
難しくて解けなかったのは無解
解けたと答案を出したのに×とされたのが誤解


33歩、31玉、53馬、

まずは33歩と叩いてみたい。
同玉は44馬から押しつぶせる。
41玉は32角、52玉、43角成、41玉、32歩成まで。
31玉とまっすぐ下がられて、これは53馬といくしかない。

合駒を読まなくてはいけないようだ。

合駒には揮発性の合駒粘着性の合駒がある。(cf.詰将棋を語る言葉を増やそう2)

まずは揮発性と考えてすぐ詰みそうな駒から順に片付ける。

合駒の可能性は飛金銀桂香歩だから、まず飛車から考えてみると……。


やはり同馬で簡単。

同銀は21飛の一発だし、同玉、43飛、52玉、63飛成で逃がさない。

さて次は……

これも同馬で飛車合より簡単だった。
銀も同じことだから銀は省略。

これは同馬では全然詰みそうにない。
ここから先は粘着性の合駒と考えるべきだ。
つまり取られずに残るのだから、強力な駒の方が守備力が強いので有望……。
桂馬はこの局面では守備力が弱そうなので変化の可能性高し。

13角、41玉、32歩成、同玉、22香成、33玉、44金まで。

残る駒は香と歩だが、歩合でもまったく同じ順で詰むことがわかる。
これで4手目は香合と決まった。
香合ならばこの順では44金を同香と取られてしまう。

再掲図

42香、

32歩成、同玉、43金、

別の詰め筋が必要なので、角を手持ちにしたまま攻める。
43金は同香なら14角とここに角を使う狙い。

31玉、42馬、同銀、32香、41玉、63角、51玉、52角成 まで15手詰

43金と進出したので、52を抑えていた馬は不要になるので香と交換できる。
あとは手順の詰みだ。

本作は4手目の合駒読みが中心の作品だった。
ところで、「多数の誤解者」はどこで間違えたかわかるだろうか。

多かったのは香合の処を歩合とした誤解である。

33歩、31玉、53馬、42、32歩成、同玉、43金、31玉、42馬、同銀、32香、41玉、63角、51玉、52角成 まで15手詰

これが変別解というものだ。
変別とは変化別詰の略で、上の解答で言えば42歩とした場合は桂合と同様に
33歩、31玉、53馬、42、13角、41玉、32歩成、同玉、22香成、33玉、44金まで11手で詰む。

玉方は最長手順になるように逃げる(応手を選ぶ)決まりなので、4手目に42歩と書いた時点でアウト、この答案は誤解ということになる。

ところがこの答案も○でいいじゃないかという意見がある。

歩合のときも上の手順で詰んでいるのは確かだし、香合の15手と同手数の15手なんだから区別しなくても問題ないだろう。
作品によっては合駒が何でもよい場合もあるのに解答者にすべての合駒について最短の詰手順を見つけろと要求するのは不当だ。
……という意見だ。いわゆる変別○論である。

現行の変別×論と変別○論の間で長いこと論争が続いている。
これが変別論争といわれるものだが、入門編の範囲を超えるのでつづきは雑談で。

三上毅に興味を持った方は次の本をお薦めする。

    「木葉」三上毅 詰パラ編集部 1980.7.1

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