詰棋書紹介(17) 近代将棋図式精選

近代将棋図式精選 森田銀杏 西東書房 1983.2.10

本来は箱入りなのだが、我が家ではもう長いこと箱は見た記憶がない。

表紙のケンタウロス駒(黒川一郎画伯の絵か?)も背表紙の金文字もだんだん見えなくなってきた。

近代将棋は塚田賞を制定して詰将棋に力を入れてきた雑誌だ。

「塚田賞作品の魅力」という連載(7回目から森田正司が担当)を元につくられた本。
184局の受賞作品に、選に漏れた佳局を追加して、401局のボリューム満点の名作選だ。

箱に仕舞っておく暇があるわけがない。

ヤフオクでたまに4000~5000円で流れていることがあるが、その価格帯ならば迷わず購入することをお勧めする。

近藤孝 「土柱」 近代将棋 1974.12


第44期塚田賞長篇賞

一見すると平凡なと金の連取り趣向の作品に見えるが、よく見ると7回ある62飛合はすべて不利合駒

つまり角桂合は63龍があるし、金合は切って63金で簡単。
歩合は二歩でできないので、残るは飛車と香車。
これらはいずれも次に同龍ととられる揮発性の合駒
ならば攻方に渡すのは弱い駒である香を選ぶというのが常識だ。

その常識に反して飛車合が正解なので不利合駒とよばれる。

タネは打歩詰禁止ルール。

香合だと同龍、同玉、64香で詰む。
飛合だと同龍、同玉、64飛……に51玉なら詰むが63桂合という捨合がある。
同飛成、51玉で打歩詰だ。
香だったら同香成、51玉、52歩…で詰む。

収束への入り方や歩の消費方法など素直な造り。
だが73歩は角合も交えて消去するとか、途中に76飛生を入れるとか丁寧に創っている。

この近藤孝さんも作品集をみてみたい作家の一人だ。
四国名所シリーズの長篇作が有名だが、短篇も凄い良い。

なお、この本の元となった「塚田賞作品の魅力」およびその続編もネットで読むことが可能。

「詰棋書紹介(17) 近代将棋図式精選」への4件のフィードバック

  1. はじめまして。突然ですが二つ質問があります。
    ①近代将棋図式精選の続編(第55期~第100期)を出版する予定はないのでしょうか?
    ②近代将棋誌に連載された駒場和男氏の「詰将棋トライアスロン」は一冊の本として出版されてないのでしょうか?

  2. (1) 『完全版 近代将棋図式精選』を書くとしたら柳田さんが適任だと思うので何度かお目にかかったときに「書いてください」とお願いしたことがありますが、あまり感触は芳しくないです。今読めるテキストとしては小池さんの詰将棋の欠片(https://hirotsume.blog.fc2.com/)で【続・塚田賞作品の魅力】で森田正司さんの連載が読めます。【第82期以降の塚田賞受賞作品】で小池さんの解説が読めます。

    (2) 山田修司さんの「名局リバイバル」は角さんが出版したいといっていました(ただしキューの後ろの方でしょう)。
    駒場和男さんの「詰将棋トライアスロン」は出版された・したいという声は聞かないですね。コピーして私家版を作っている方は多いと思うので会合に行って誰かに貸してもらうという手があります。また国立国会図書館オンラインで近将は読むことができます。連載第1回は平成元年10月号。最終回は平成6年9月号です。

    1. 返信ありがとうございます。
      「詰め将棋トライアスロン」はそんなに長く続いたんですね!僕は平成3年6月号までコピーして保存していますが続きがあったとは・・僕の持っている分だけを冊子にして地元の将棋道場に寄贈しようとしているところです。

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