いよいよ具体的な作図法の解説に入る。
引用すると長くなるので、図面だけ利用させてもらって説明は要約する。
実戦形作図法
実戦をヒントにイ図という素材を得たとする。
これでは簡単すぎるので逃げ道を開け、持駒を増やしてみる。
【ロ図】
まだ綾が無いので物足りない。
そこで駒の移動を行い、形をちょっと飛躍させてハ図とする。
【ハ図】
持駒は「角歩」でも「角金」でも「飛角」でもよいが、歩では大概の人が13歩の手に気づく。13飛だと気づかなくなる。
この図はまだピンとこない。31角打の狙いが見え見えだからだ。
31に邪魔な駒を置いてみよう。
【ニ図】
この図は早詰だ。(13飛、同玉、22角、12玉、11角成、同玉、22銀成まで)
これを修正してホ図とする。
【ホ図】
これで完成。13手詰。
技巧型作図法
私は大体に於て、他の作品からヒントを掴み出し、それに演出的技巧を加味していく所謂、技巧型作図法をとつている。公式として表はすと、\(詰将棋の手筋+技巧=作品\)
ということになる。
詰将棋蒐集ノートからイ図のようなヒントが閃く。
【イ図】
81桂を銀に替えると詰まない形になる。
【ニ図】
そこで92香とする。
また、ハ図は74桂、92玉、81飛成で詰むので金は置き駒にする。
【ホ図】
ニ図はまだ74桂、91玉、81飛成、同玉、82銀で詰む。
そこで92金にした。
この3手詰が詰将棋の赤ん坊。
ここからが技巧の世界で、奇策縦横に解図力と創作力の活躍となる。
さらに71角成、同玉の2手を付け加えてト図。
【ト図】
ところが81角成に91玉と逃げられると7手では詰まない。
【チ図】
そこで63金と強くする。
これで71角成に91玉は7手駒余りで詰むようになったが、
63金が強力すぎるので余詰が生じる。
そこで61飛を邪魔して61香と置く。
【リ図】
ここで、持駒に何を補足したら良いか考える。
71角成、同玉、62〇、同香としたいが、〇はなにか。
82玉と逃げた場合に詰ますことができるのは角だ。
【ヌ図】
次に61飛を可能にするためには62に利く駒を他点に置かなくてはならない。
64香としたのが次図。
【ル図】
この局面では持駒の金が不要になっている。
これで完成図となる。
綾をどの程度で打切って完成図とすべきかは作図家にとって重要な事柄である。
複雑化するに従って、相互の駒数が多くなる事は当然で、余り複雑化して凝り形にしては返つて藪蛇で、このあたりの選択が難しい。完成図あたりが最上ではないかと思う。
図で72玉として63金とか63銀といった手を入れたくなるが、すると余詰もでるので駒数も増えてしまう。
いくつかの案ができたときに完成図をどれにするかは悩ましいものだ。
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