詰将棋創作講座を読む(7) 伊藤果「詰将棋の創り方」より

1冊まるごと「詰将棋の創り方」です。
類書はちょっと思いつかない貴重な本です。

1983年4月発行の本ですでに絶版のようですが、伊藤果八段はプロ棋士でもありますし、いつ復刊されるか分かりません。部分的にコンテンツを再利用することもあるでしょうから、丸々ここで紹介するわけにはいきません。全部読みたい方は是非実物を入手してください。

ではこの本からなにを引用するのかというと、実はこの本の中で伊藤八段は清水孝晏氏の創作法の話と野口益雄氏の創作法を引用しています。
その部分だったら、ここで孫引きしても問題ないだろうと判断して紹介します。

今回は清水孝晏篇です。原典は「将棋」に発表されたものだそうです。

【図1】
34龍、同飛、15歩、同角、25銀まで(余詰あり)

これは別の作家の作品の収束部分。
この図を見て「34龍と捨てる別の手法を思いついた」。

【図2】
34龍、同歩、15歩、同玉、33角、14玉、24角成まで

しかしこのままでは

    23角、15玉、35龍まで
    15歩、同玉、35龍、14玉、24龍まで

などの余詰がある。

【図3】

そこで33香に変更して35龍を消す。
しかし検討するとまだ
15歩、同玉、24角、14玉、13角成、同玉、33龍以下の余詰がある。

【図4】

そこで13角成を同香ととれるように11香を配置した。
そこで某八段から助言がある。
「歩でなく金を捨てた方が詰将棋らしい」

【図5】

持駒を金にしたので、23角、15玉、25金までの余詰に対処して16とが16龍に変わっている。
また32角、15玉、26金の筋に対処して37龍を38龍に変えている。

しかし、清水孝晏はこの図に不満を感じる。

  • いきなり狙いの34龍とするのでは味がない。
  • 短手数なので盤面をスッキリさせたい。
  • 特に「33香が何とも重い感じがする。」

そこで次の図を完成図とした。

【完成図】
15金、同玉、35龍、同歩、16歩、同玉、43角、15玉、25角成まで9手詰


15金の一手を付け加えただけのようですが、龍の捌き捨てという一手単発の狙いから、金、歩、龍の3枚を使って、初形から34歩を35歩にひとつ進ませるという複合手による狙いに変化しています。
余詰消しの意味しかない配置も消えてすっきりしました。
34香が重いだけでなく、いろいろ味を消していたことも分かりますね。

結局、八段の助言だった金捨てを、歩のたたきに戻しています。
これは持駒を角金金にすると初手から36龍、26合、15金、同玉、25金という余詰があるためです。

この余詰を消す方法もあります。
例えば次の図が考えられます。

【別案】

15金を守備駒で取る変化も消えていませんし、35龍には同桂の変化も増えていますから、この図も悪くは無いと思います。

しかし本には書いていませんが多分この図も清水孝晏は比較検討した上で【完成図】を選んだのだと思います。
歩の頭に金を捨てる味は消えていますし、2枚の桂馬の配置が異様です。

この辺の完成図を選ぶ感性が勉強になります。

「詰将棋創作講座を読む(7) 伊藤果「詰将棋の創り方」より」への2件のフィードバック

  1. 図2以降が急所だから、どうでもいい指摘だが、
    図1は、初手より25銀、15玉、18龍までの余詰がある。
    誤図なのだろうか。

    1. 誤図ではないのです。
      清水さんのところにアマチュア作家が余詰を修正してほしいと図を持ち込んだという話なのです。
      その15手詰の収束5手の部分図ということでした。
      本筋に関係ないので省略しました。
      28香に直しとけばよかったですかね。

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