詰将棋用語の最前線(6)

若島手筋

筆者が初めてこの言葉を見たのは宗岡博之「MOTOR DRIVE」の解説。
担当者は阿部健治氏。

宗岡博之 「MOTOR DRIVE」 詰パラ1994.10


作者–若島正氏作(順位戦92年10月)がヒント。21飛が66角という訳。しょせんは模倣作であり…自分では評価はよくわからない。
☆ご謙遜。ご謙遜。若島手筋を変化に隠し、中合、限定打、意外な詰上りと何重ものベールをかけて解答者を惑わせました。解けた人からも絶賛の嵐です。

この作品は平成6年度の看寿賞を受賞した。
その選考委員の短評で森田銀杏氏と阿部氏が再び使用。

森田銀杏–若島手筋(?)の飛を角に変えただけでなく、中合を組み合わせて全く違った味に仕上げた。収束も意外性があって面白い。◎
阿部健治–若島手筋のアレンジだが、収束まで良い手がギッシリと詰まって、謎解きとしての深みもある。○

おそらく,これで「若島手筋」という用語が定着したのであろう。
『看寿賞作品集』でも柳田明氏は本作の解説に「若島手筋」という用語を使用している。

縫田光司 詰パラ 1997.9

☆若島手筋のアレンジ作ですが、序の3手が上部に呼び出す感があり、非常に抵抗があります。評価の方も上々です。

この解説を書いたのは周藤裕也氏。

原亜津夫 詰パラ 1998.1

この作品に次の短評が付いた。

尾形充–若島手筋の龍香版?

さて,ここまでは順調だった。
ところが事件が起こる。

原亜津夫 詰パラ 1998.5

足利太郎–23飛出の妙手性は最高レベルで、若島手筋の中でも存在意義を十分に主張できる作品だと思う。

あれれ?命名者の阿部さんが今度は別の使い方をしている。

中筋俊裕 詰パラ 2010.7

葉井来人–幼稚園にあるまじき難解作。若島手筋か?
☆2手目22合は、42角成!、同玉、22飛行成以下です。25飛の利きを遮る角を遠くへ捨て飛の利きを連動させるこの手法を、発案者の若島正氏にちなんで「若島手筋」と呼んでいます。

担当者は酒井博久氏。

ということで元のラインに戻ったようで一安心。

当面,若島手筋は「合駒が効くようで,実は線駒を連結させる手段があり,効かない線駒を打つ着手」と理解してよさそうだ。

ただ,最初に「若島手筋」を出した時のちょうちんさんのリプライが気になる。
最近はまたいろいろと揺らいでいるのかもしれない。

ソモソモ,新手筋をばんばん開発する若島正の名前を使った「若島手筋」という命名に問題があるのかもしれない。
「若島手筋I」「若島手筋II」……「若島手筋IV変位系」みたいにする?

ついでに教えて。
原亜津男「23飛」は今は回収手筋と呼ぶということであってますか?

ところで,なんで肝腎の元祖若島手筋の図面がでてこないんだと訝しんでいる読者もいらっしゃるかもしれない。
それは「詰将棋入門」の方で手筋の解説をするときのために残してあるのでございます。
本稿はあくまで「若島手筋」という用語の由来を探ったテキストなのでご了承ください。

最後に余談。
オイラも若島手筋という用語をこのブログでかつて使ったことがある。
黒歴史の一つだ。



https://twitter.com/akkale802shosyk/status/1307658528258023425?s=20


(こっそり直しときました。酒井さん、失礼しました。)

「詰将棋用語の最前線(6)」への3件のフィードバック

  1. 宗岡作の解説に「若島手筋を変化に隠し」とありますが、作意手順に現れる作例は見たことがありません。

    1. 「変化に隠し」は慥かにおかしいですね。
      私は66角が若島手筋だという認識ですが、阿部さんと不透明さんは変化の39龍から57角成の順を若島手筋としているのですね。
      作意にこの順を出している作品ってありませんでしたっけか?

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