詰将棋入門(72)で「夏木立」趣向を守備駒の移動を伴った取れない捨駒による追い趣向という認識としたが、異論のコメントはなかった。
確認するために『漫陀楽』を繙いたが、「夏木立趣向」という言葉は無く、守備駒移動を伴う捨て追い趣向に「夏木立型」と命名してあった。
考えてみると、「取れない捨駒で追う」趣向というだけで稀少だ。さらに守備駒移動も伴うとなればさらに数少ない。
というわけで、かなりポンコツになった頭の記憶に頼って探してみた結果が以下の通り。
九代 大橋宗桂 『将棋舞玉』第8番 1786
これは有名な傑作。
九代 大橋宗桂 『将棋舞玉』第11番 1786
この作品は非常に易しいので初見の方は解いてみることをお薦めする。
九代 大橋宗桂 『将棋舞玉』第72番 1786
桂でなく銀で守備駒を移動させる意欲作。
ただし収束で99角の余詰がある。
山本昭一 『怒濤』中編の部第44番 将棋天国1979.12
『舞玉』第11番を究極に簡素化した図。
原図は11玉で21飛打から始まるものだったが、なんと初手21とで余詰。
巨椋鴻之介 「兎狩り」『禁じられた遊び』第31番 詰パラ1962.11
守備駒移動に反対側から銀を捨てるという傑作。
巨椋鴻之介 「あられ」『禁じられた遊び』第53番 詰パラ1964.4
作者の思惑は『朝霧』の新作という点にあるのは明らかだが、復路は夏木立になっている。
酒井克彦 『からくり箱』第43番 近代将棋1983.2
これは奇跡的な作品だ。
なんと往路も復路も夏木立趣向なのである。
言わずもがなだが、この初形で!
以上だ。
とはいえ、これだけということはあるまい。
諸賢の教えを乞う。(『舞玉』第11番の類作は除く)