詰将棋入門(72) 「夏木立」

伊藤看寿 「夏木立」『将棋図巧』第10番 1755

「夏木立」と後世の人に命名された美しい趣向作。
序さえ越えれば楽しい趣向が現れる。

よく見ると手は決して広くない。31馬から32歩~44桂で詰みそうだ。

31馬、同玉、32歩、42玉、52と、同銀、43歩、同銀、53銀、

32歩に玉は躱すが,すると銀を剥がして53銀と打つ順は第一感だろう。
変化はあるがさほど長くないので省略する。

32玉、43金、同玉、44銀打、54玉、45金、同成桂、同龍、同玉、

44銀打で舞台が着々と完成していくのを感じる。
ここまでの変化を担ってきた25龍を切って,いよいよメインの趣向の始まりだ。

37桂、同龍、36金、54玉、

桂捨てで龍を質として確保しておいてから,36金のすりこみが気持ちよい。
桂馬はまだ3枚残っている。

46桂、同龍、45金、63玉、

この4手1組の手順が繰り返される趣向だ。

55桂、同龍、54金、72玉、

4拍子4小節の趣向。ただし最後の小節では破調がある。

64桂、同龍、63金、

63金に81玉と逃げることはできない。61金も1手詰だ。

同龍、73馬、61玉、71銀成、同玉、82と、61玉、72と、同龍、同馬、同玉、

馬と龍を清算することになる。
これでそのまま収束かと思ったら,第2幕があった。

82飛、63玉、62飛成、54玉、64龍、45玉、55龍、36玉、46龍、

82飛のところ62飛,73玉,82飛成,63玉,62龍でも詰む。
これは迂回手順であり現代では大きな瑕疵ないしは余詰扱いされるが,当時は気にする人はいなかっただろう。

第2幕として龍での追い戻しが出現した。
うれしいデザートだ。
さらにその龍も綺麗に捨て去り……。

同玉、47金、45玉、46金、54玉、55金、63玉、64金、72玉、73歩、

第3幕では金による追い落としが味わえる。
ここからは流石に収束だ。

71玉、62銀成、同玉、53銀成、61玉、72歩成、同玉、63金、71玉、62成銀 まで73手詰

趣向の主役であった大駒はもちろん,趣向の舞台を作っていた2枚銀も捌ききる看寿の腕の冴え。

ちょっと考えさせる序盤。
楽しい中盤の趣向手順。
舞台を片付けてしまう収束。

この構成は永遠に廃れないことだろう。

斜め1往復半の追い趣向だが,「夏木立」趣向と言う場合は最初の斜め移動の部分を指すものだと思われる。
(違うだろうか?)
守備駒の移動を伴った取れない捨駒による追い趣向という認識だ。
この話題も「漫陀楽」を読んでから雑談でとりあげよう。

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