両王手


両王手は超短編の有力なテーマだ。
ところが,こうやって並べてみると,角道を飛車が止めていたり,逆に飛車道を角や馬が塞いでいたりというよくみる構図の作品は一つもないことに気がついた。
へそ曲がりな者で避けていたのだと思う。
逃げたというべきか。
一度,真正面から取り組んでみたいものだ。

15-1
Chun詰将棋の杜

本作は専門誌ではなく,全さんのサイト「Chun詰将棋の杜」の作品募集に応じたもの。
解答者が少ない(この作品に対しては9名だった)のが寂しいが,その分,行数を気にせずにたっぷり解説を書いてもらえるのが魅力だ。

ところが,のんびりしていたらサイトが閉鎖されてしまった。今回,解説を再録できたのはweb.archive.orgのお陰。

全 邦釘

いかにも風みどりさんの短編、というような切れ味の良い短編。
舞台装置を作る、(一応、限定打の)初手から始まって竜を捨てることによって玉を舞台装置まで移動させてから両王手ですぱっと終わる収束。
余分なものは一切入っていない、蒸留水の様な純度の高い作品です。
短編の一つの理想ではないでしょうか。
では、解答を頂いた方からの短評を。

磯田武司さん>
最初に2五角と打つと、4五玉と逃げられて、詰みそうでなかなか詰まない。
ただ、初手はどう見ても、1四角か2五角のどちらかなので5手詰と聞いてしまうと、それほど難しくはないような気がします。
竜を捨てて、きれいな両王手、うまいもんですね。

由良祇毘さん>
初手25角以下45玉、34角、54玉、43飛成、65玉、77角…がつかまりそうに見えて捕まらないですね…。
5手詰とあったのでわかりやすかったです。
このコーナーに自作を載せるのが夢ですが、作品は相変わらず制作中…(^^;)
気長にお待ちください。目標は今年中?(笑)

はい、作品の方は気長に、ずっと待ってます。(笑)
初手の紛れは深い、というよりも、ついはまってしまう紛れなのかも。
「竜を捨てて、きれいな両王手」短編の最高の収束かな?
それにしても5手詰めって書いたのは失敗でした。
磯田さんと由良さんが一緒のことおっしゃってるし・・・。
風さん、すんませ~ん。m(._.)m

西村誠一さん>
ポイントは、
・飛車利きをわざわざ遮っておいてからの両王手
・変化にも現れる両王手ですね。
一流作家の短編は、さすが!密度が濃くて凝縮されているものだなあ、と感心。

変化にも現れる両王手とは、おそらく2手目の合駒のことをおっしゃってるんですね。
この変化では竜を動かしての両王手、作意では角を動かしての両王手。

この対比もこの作品の質を上げていると思います。

たくぼんさん>
どうも次元が違うという感じがします。こうなればいいなあ・・という手順が作意ですもん。

いぬたさん>
見事にはまっていますね。うまいと思います。

多分、風さんはこの作品を作る時、まず作意が出来ていてその作意に合うように作図して行ったのではないでしょうか。(推測)
だとすれば、たくぼんさん、いぬたさんの評も納得が行きますね。

神無七郎さん>
初手がチェスプロブレムでいうところの「バッテリー」を作る手になっている。
風みどりさんの超短編は、チェスプロブレムから影響を受けているところがあるように感じるのは気のせいだろうか?

チェスプロブレムは全く知らないので、バッテリーという言葉の意味が分からない。
さあ困った、ということで神無さんにバッテリーの意味について聞きました。

神無七郎さん>
角の利きを飛で止めたり飛の利きを角で止めたりして、後で両王手のできる形のことをバッテリーと呼ぶようです。
日本語に直すと「砲台」ですね。これなら何だか雰囲気がわかります。

わかりやすい説明、ありがとうございます。
短編ではたまにある、舞台装置を作るところから始まる作品(その中でも詰将棋A級順位戦小林敏樹氏の作品が僕の印象に残っています。)
みたいなのがチェスプロブレムでもあるんですね~。
やはり、他にも似た手筋はあるんでしょうね。

田利広さん>
47から、57あるいは、58方面へは、逃がせない。で、25角では45玉でこまる。逃げられぬよう、14角(読まずとも、かっこいい)。これでOK。
で、改めて詰上りをしげしげと見る。ウーム、確かに詰んでいる。

そうですね。5七、5八に逃がしてしまうと物凄い量の持駒が無いと詰まない形(もしかしたらどれだけあっても詰まないかも)なので、ここに逃がさない手順を考えると、初手は1四角あるいは2五角しかありません。(あれ?一番上の磯田さんの短評と同じ事書いてるやん)

三角淳さん>
飛車利きを遮断する角打ちから両王手までの詰め上がり。誰もがやってみたい手順ながら無理なく実現したのが作者の腕でしょうか。

そうですよね~。
僕も手順を思い付いてそれに合う図面を捜す、という創作方法を良くするんですが「無理なく」ってのが出来なくていつも駄作を製造してしまいます。
この作品は本当に無理なく出来ていて嫉妬したくなります。

たじさん>
将棋を初めたばかりです。
「強くなるためには詰め将棋をしたら良い」と進められ、詰め将棋を探しているうちに、このHPに来ました。
短手数なのに紛れが多くて嫌らしい作品ですね。
初心者泣かせです。
風みどりさんの作品はみなそうなのかな?
一手、三手、五手詰めの作品がもっと有ると嬉しいです。
今後の活動に期待しています。
それでは(・、・)ノ

そうですね。強くなるためには詰将棋、良く言われることです。
でも、この作品が解けたんだから初心者では決して無いです。
僕が保証します。(僕が保証しても特にいいこともないですが)

最近の短編は確かに紛れの多い作品が多いです。というのも、短編で高い評価を得るには狙いを持っている作品でないといけない、そして狙いに気付いてもらうためには考えてもらわないといけない、考えてもらうためには紛れが多くないといけない、っていう循環があるからと思います。
(と誰かに飲み屋で聞いて、なるほどと思ったんです・・・金子清志氏だったかな?)

こんなに丁寧に解説してもらって,これ以上の喜びはありません。ありがとうございました。

本作は180度回転させた構図で作ったのだが,それが山本民雄作とぶつかった。
当時,私はなんでもかんでも7手詰にしていた。
伊藤正さんが山本民雄さんの5手詰を紹介して,これ以上何も付け加えるものは無いと評した。
仰るとおり。
私は打ちのめされた。
詰将棋を作れなくなった原因の一つだ。
今は心臓に毛が生えてきて,上下入れ替えてこうして発表できるようになった。(成長したのか?)

15-2
読売新聞西部版

読売新聞だったと思うのだが,もしかしたら将棋ジャーナルだったかもしれない。
それにしても,もうちょっと紛れをつくれば良かったか。
22馬ははじめは金で,初手11飛,12金という紛れを用意していた。しかし色々と支障がでて,駒数優先で完成図にしたのだと思う。

15-3
詰パラ?それとも未発表?? 

T-Baseには引っかからなかったので,たぶん未発表だと思う。
角桂による両王手を地味にやりたくて変化に隠した。
もっとも変同なので隠したとはいえないな。

15-4
近代将棋 1977-06改


近代将棋への初入選作。
伊藤果先生に解説していただいた。

伊藤果

中段玉で捕えにくそうな玉だが,初手4三飛の一発で急に玉筋が狭くなる。
さて,3手目が本局一番の考え所で,飛を開いては馬を抜かれてダメとなり,6四金は同馬で,又6三銀は6五玉で捕まらない。
4五銀が好手で,6五玉には6三飛成,7五玉,7六金までの早詰の用意がある。よって4五銀は同金の一手となるが,そこで4四飛成がパンチのある好手で玉を下段に落とすことに成功する。ピリッとした好作だが配置にもう一工夫という所か。玉方1二香は7手目7三金以下の余詰を防いだ駒である。

発表原図
9-1.PNG

この1二香が平行移動すれば減らせることに気付いたのは10数年後。逃げ道を狭くすることで逆に余詰が消えるなんて…。伊藤先生はおそらく一目でこのことに気付いたんだろうなぁ。玉方の金をと金にしたのは,原敏彦さんのアドバイスを受け入れたもの。金の方が自然かなと思ったのだが,確かに初形がさっぱりして良かったかもしれない。

飛角二枚を捨てるというイメージだが,飛車を捨て損ねたと見られるかもしれない。実際,3手目6四金の防ぎに馬を配置したことにより,4一馬が自然に入ってラッキーという創作だったような記憶がある。当時はまだ7手詰に拘っていなかったのが良かった。数年後の創作だったら間違いなく7手詰に仕上げていただろう。そして,その後に細田強さんの作品を知り愕然とすることになったはずだ。(本作の仕上げでも細田作の改悪のそしりは免れないかもしれない…)

hosoda.PNG

まったく短編詰将棋だったらこっちから銀を打つように作らなければいけませんでした。まだ私が生まれる前の作品で,知らなかったのは仕方ないとお許しください。

15-5
詰将棋パラダイス 1999-07


専門用語では「バッテリーの形成」というらしいです。
飛角の両王手に見せかけて,実は角金の両王手…ってのを考えていただけなんですが。
つなぎは2枚龍を捨てて無駄の無い手順に仕上がりめでたしめでたし。

中島清志

☆初手は金を動かすしかないが,2手目98玉に備えて角道を塞ぐ76金が正解。その時,同玉の変化が一寸した良いアクセントになっている。以下も冷静に見ればほぼ一本道なのだが,それでも76金,65角とわざわざ壁を築いて両王手で仕留める手順には充分面白みが感じられる。まるでからくり細工の玩具のような作品であった。
石井秀幸—派手な龍捨ての後の金引きの味が良い。
岡島民雄—2つの空王手が収束の準備運動だったとは。
柿久桂古—再度の87龍,77金の両王手見事。
門倉義孝—初形が重い感じだが,順繰りに大駒が出撃してくる手順が面白かった。
鴨藤弘—祝「出島の大関の如し」低く構えて龍を押し出す。
下西憲之—重なり合った大駒の糸解きが素晴らしい。
武内洋介-龍捨てのリフレインで,解後感も良い。
戦部将基—軽快。

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