名局精解4 上田吉一

名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(1)

m04.PNG

名局精解も,細切れで書いていこうと思った。

今回取り上げるのは,3年前の解答選手権の第9番。
上田吉一の作品だ。

途中図の画像ファイルはもう3ヶ月も前に作ってあるのに,なかなかまとまった時間がなくて書けていない。
プロパラブックスから単行本が出たので,もういいかという気もしてる。

でも,ネットに上げておくのも悪くない。

今日,「アルキメデス」で画像検索して,昔日記に張った自分の撮った写真を見つけた。
すっかり忘れていた。
元データも,何世代か前のパソコンと共に消えた。
ネットに上げて置いてよかった。

もし,まだ解いていない方がいたら,急いで解いてしまうべし。
早ければ明日から,解題してしまうよ。

名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(1) へのコメント

  • アアー、もう明日だ。
    夢の中で駒が勝手に動いていく。
    蒲団の上を這いずり回る。
    眠れない夜になりそうだ。
  • コメント by さわやか風太郎  2009/9/11 金曜日 @ 0:15:34

  • すみません。
    眠くて眠くて、熟睡してしまいました。
    今夜にでも(2)、書きます!
  • コメント by 風みどり  2009/9/11 金曜日 @18:20:29

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(2)

    図00

    図00

    玉の周りは金銀,そして大きな枠として龍と馬に囲まれているのに,右上の配置が気になる。
    玉をこちらの方面に追い出していくということだろう。
    でも,どうやって?

    ともあれ,初手は何かから考えていこう。

    図01

    図01

    持駒の桂馬を打つ手がまず考えられるが,このように逃げられてどうも見込み薄そうだ。

    図02

    図02

    龍を活用しようと,8六銀と捨てても,8八玉ともぐりこまれてこれは詰みそうにない。

    図03

    図03

    では,初手に戻って,7六銀と攻めるのはどうか。
    やはり7七玉で後続手がない。

    図04

    図04
    5六銀と逆から攻めても,持駒は増えるが桂までは使いどころがない。

    図05

    図05

    では,思い切って龍から切っていってはどうか。

    図06

    図06

    7七玉は7六金,同杏,同龍で詰むが,2手目同杏,5九桂,6六玉とされてみると……。
    55と75に逃げ道がある。
    7六金以下まだまだ追うことは出来るが,69馬が活用できないし,小駒だけではとても捕えられそうにない。

    図07

    図07

    そこで,初手は5七金に違いないと手ごたえを感じた。
    同杏なら7九桂,7七玉,7六金まで。
    取れない捨駒,オープニングとして手ごろな感触の出だし。
    これは作意の香りがぷんぷんする(^^)。

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(2) へのコメント

  • 最初に手に取ったのが桂馬でした。でも成香の守備力が強く続かないのが明白でした。
    残るはその成香をどかしにいく手でした。
    いきなり駒を取る手はやらないでしょう。私のようなへっぽことはまるでわけが違うのですから。
    でも、まだ途中までしか追いかけていません。
    玉を敵陣近くまで押し戻したのですが。
    玉が逃げ方を間違えた分岐は詰ましました。
    さて、次は何手目まで教えてくれるのかな。
    コメント by さわやか風太郎  2009/9/12 土曜日 @19:41:17
  • 名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(3)

    図08

    図08

    さて,今日のスタートはこの図から。
    ここから三手一組の好手順で龍を活用する。
    これは比較的分かりやすいはずだ。

    7六金,同杏,6七金

    同玉では5六龍でオワなので,同杏。

    図09

    図09

    これで7四龍から玉を右上の方面に追い込んでいけそうだ。

    7四龍,6六玉,7六龍,5五玉,5六龍,4四玉で次図。

    図10

    図10

    ここで手が止まる。
    4五龍といきたいが5三玉と広いほうに逃げられて大丈夫だろうか。

    しかし,ここまでは作意の手ごたえがあるし,つぶしていけばいいだけの変化に違いない。駒を動かしてみよう。

    図11

    図11

    落ち着いて考えれば,ここから5手で詰む。

    図12

    図12

    4二龍,6三玉,9六馬

    馬を活用できた。
    これで安心,作意と思われる順に戻って続きを考えよう。

    図13

    図13

    4五龍に3三玉と逃げた局面。

    ここでは王手は2五桂打ぐらいしかなさそうだ。

    3二玉と逃げても4一龍,2三玉,1三と,3四玉,4五龍で詰むので,同金の一手。

    同桂,2四玉で次図。

    図14

    図14

    1五から逃げられそうなので,せっかくとった金だが1四金と投入するしかない。
    同玉,1三桂成,2四玉と逃走を阻止する。

    図15

    図15

    さて,この局面。
    ここで何を考えていたかというと「駒が足りない」だった。

    実はこの作品を解くには2つの鍵を得る必要がある。
    どちらから気が付くのが自然なのか実は悩んでいたが,ここは自分が考えた順番でいくことにする。

    図16

    図16

    まず考えられる手は3六桂,3三玉。

    4四龍,3二玉,2四桂で詰みかと思いきや,4四龍には同馬とされて青くなる。
    9九馬が守っていたのだ。

    あと1枚駒があれば3二玉,4一龍までの詰みなのに!

    そこで,今までの手順の中で,持駒を増やす手立てはないか洗い直すことにする。

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(3) へのコメント

  • 実は、22手目で手が止まっていました。
    持ち駒に桂が1枚残っているのを失念してしまったのです。
    だから言ったじゃないの、ちゃんと盤に並べてすればいいものを。もういい歳なんだから、記憶力なんか相当落ちているんだから。なんて、自分に突っ込みを入れています。
    コメント by さわやか風太郎  2009/9/13 日曜日 @>9:37:50
  • 私はこれからお風呂に行きますが,今夜続きをアゲるまでにさらに持駒を増やしておいておくんなさい(^^)コメント by風みどり  2009/9/13 日曜日 @11:36:47
  • 名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(4)

    再掲図10

    図10

    持駒を増やすとしたら,この局面しかない。

    先ほどは手順で4五龍と追ってしまったが……。

    図17

    図17

    4六龍!

    と寄る手があるのだ。
    玉から離れて有利なことがあるのかと思えるが,先の手順で上部脱出を防ぐためにせっかく入手したばかりの金を放出せざるを得なかったことを思い出して欲しい。

    3三玉なら2五桂打,同金,同桂,2四玉

    図18

    図18

    ここまで進めれば,4五龍より4六龍の方が有利であることが明確になる。

    この局面からは3五金でも1六桂でも5手詰だ。

    図19

    図19

    そこで遡って4六龍には4五歩と間駒をせざるを得ない。
    同龍以下先程と同様の手順を辿って次図になる。

    図20

    図20

    図15と比べて,持駒が歩1枚増えている。

    これが歩以外だったら,3六桂,3三玉,○○x,3二玉,3一龍まで。

    図21

    図21

    さあ,ところが当然ながら歩では3四歩と叩けない。
    32歩があるので二歩の禁手だ。

    しかし着実に正解に近づいているのは確かだ。

    次に考えなければいけないのは,そう「6九馬の活用方法」である。

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(4) へのコメント

  • 今日手に入れた柿木将棋で先に観賞してしまいました。
    確かにすごいですね。うなります。
    風みどりさんの解説がうまかったから
    この1局のすごさがわかりました。

    しかしこれ解答選手権で解けたら
    感激して思わず立ち上がりそうですね!

    んで、この解答選手権のときはこれが最優秀作なのかなあと
    調べてみようとしたら、解答選手権の記事はほとんど削除されてますね。
    残念。書籍が発売されたからなのでしょうか?

    コメント by onakapon  2009/9/14 月曜日 @3:26:35

  • このときはまだ作品を一般公募していないので,最優秀作などの選定はなかったですね。
    >しかしこれ解答選手権で解けたら
    >感激して思わず立ち上がりそうですね!

    そうなんです。
    解いている過程のクライマックスが何度もあって,解けた時はう~~~んよかった~と思いました。

    コメント by風みどり  2009/9/14 月曜日 @>7:16:16

  • 佳境に入りましたね。
    過去に解いた作品なので、凡その手順は覚えていますが、残るはまさに「6九馬の活用方法」で、これが急所。
    次が楽しみだこと(^^)
    コメント by タラパパ  2009/9/15 火曜日 @2:47:16
  • 名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(5)

    再掲図20

    再掲図20

    さて,持駒は歩1枚だが増やすことができて,あとは69馬の活用。

    しかし,これが簡単ではない。

    まず思いつくのは……。

    図22

    図22

    7九馬と王手することだろう。
    58歩や75銀がいるので,そもそも馬で王手できる機会がほとんどなく,この局面が事実上はじめての王手チャンスのようなものだ。

    図23

    図23

    ところが,普通に歩合されて困る。

    図24

    図24

    同馬,同杏と持駒を増やしてみても……
    使えない歩がもう1枚増えてもどうしようもない。

    図25

    図25

    では歩を取らずに3五桂としても……
    局面は一向に好転の気配さえ見せない。

    さて,タラパパさんもコメントしてくださったように,ここらあたりが本作品のクライマックス。
    で,もう一晩ひっぱるつもり満々なのだが,そこは読者の方に是非自力で発見してもらいたいという親切な気持ちからである事は言うまでもない。

    ただやはり知識の力というものは無視できない。
    前回(というか,解答選手権でこの問題に取り組んでいたときに)私がわりとすんなりと4六龍で1歩稼ぐ筋に気付いたのはその2年前に次の作品で痛い目にあっていたからである。

    図26

    図26

    この作品は,もう一息の所で駒が足りなくなって詰ますことは出来なかった。
    そうなのだ。
    中合で1歩稼ぐ筋が出てくるのである。
    しかも,それがわりと序盤にあるために,途中点もほとんどもらえなかった悲しい思い出がある。
    考えてみれば「上田・若島の作品で駒が足りなくなったら中合で稼ぐ」は基本定理の一つなのだった。
    また,図巧#99煙詰でも終盤の入り口で1歩稼ぐ味わい深い手順が登場する。

    そういった知識があるから,4六龍にはすぐに思い至ったということもある。

    そこで,次の図を紹介しておこう。

    図27

    図27

    富樫さんのデビュー作。記憶では塚田賞だったのだが,調べてみたら半期賞だった。

    それともうひとつこんなことも考えていたことをヒントに書いておこう。

    「どうもこの駒の働きが悪いなぁ」

    上田吉一の作品と解きながら確信していた。
    でも上田作品だとしたら,この配置はなんなのだろう。

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(6)

    再掲図25

    図25

    この局面で「もし99馬が88馬だったら,うまいのにな」と閃いた。

    しかし,どうやって?

    見るとどうも働きの悪い駒に気付く。
    97銀だ。

    この銀が,まさに99馬を88馬に動かす役割を担った駒なのではないか!

    つまり序盤で8八銀,同馬の2手を入れておくわけである。

    これは正解に違いないと確信した。

    そうすれば7九馬の時点では次のような形になる。

    図28

    図28

    富樫作の5手目に現れる形である。
    富樫作をたとえ最後まで解ききれていなくても,5手目まで進めていれば十分ヒントになったはずだ。

    図29

    図29

    88馬の形ならば,6八歩と合駒されても,3六桂で玉を追って,8八馬と角を入手すれば簡単だ。

    図30

    図30

    たとえ同馬とされても……これが当然作意だろう。

    図31

    図31

    馬の守りがそれたので,3六桂,3三玉に4四龍と追える。
    3二玉と追い詰めれば後は易しい(が,構成上重要で気持ちの良い)5手詰だ。

    これで残る問題は一つ。
    8八銀の時期だけだ。

    可能性は2つ。

    図32

    図32

    この局面だと8八銀に同玉なら8四龍とまわって詰む。

    図33

    図33

    この局面でも8八銀に同玉なら8四龍で詰みだ。

    さてどちらが正解なのか。

    図34

    図34

    これは冷静に考えれば難しくない。
    7手目(図33)に8八銀では同玉と取らずに6六玉と逃げられてこれが詰まない。

    したがって図32の局面で,つまり三手目に8八銀が正解だということが分かる。

    図35

    図35

    97銀がいなくなると8四龍に8六玉とかわされる変化が難しくなる。
    棋譜ファイルには入れてあるが,7六龍,9五玉,9六馬,9四玉,8五馬,8三玉,7四馬……かなり難しい。

    解答選手権の時には「これは変化に決まっている。(つまり詰むはず)」と決め付けてまったく読まなかった。

    きちんと作品を鑑賞する態度ではないが,時間を争う場所では許してもらえるだろう。

    それでは,最後に作意順を並べて鑑賞してもらおう。



    馬を活用せんとする7九馬に対し,6八歩合の変化を詰ますために,序盤に8八銀,同馬という伏線を施す。
    その結果,作意表面上では,「8八銀とすることでわざわざ6九馬を取れるように馬を近づけた」という摩訶不思議なストーリーが実現できているわけだ。

    名局精解 第4回 上田吉一氏の伏線作品を解く!(6) へのコメント

  • すごく面白かったです。
    自分は棋力が低いので、これくらい解説してもらわないと、構想的な作品の面白さがわからないんですよね。
    大変だとは思いますが、ぜひまたお願いします。

    コメント by ogie  2009/9/17 木曜日 @ 11:53:02

  • 丁寧に解説していただき有難うございました。
    分割して指し手を進めるというのは、親切設計でした。
    その間考慮時間ができるし、ヒントもいただきながらというのも嬉しかった。
    図面も豊富で、指し手が追いやすく、頭の悪い私には好都合でした。
    またこういう素敵な企画をしていただけることを期待しています。
    コメント by さわやか風太郎  2009/9/17 木曜日 @16:46:34
  • 作意を知って眺めても、次はどうなるんだろ?
    そんなわくわくした楽しみに溢れる解説でした。
    ありがとうございます。
    コメント by タラパパ  2009/9/17 木曜日 @17:38:23
  • みなさん暖かいコメントありがとうございます。
    楽しんでいただけたとしたら,それはもちろん100%作品の手柄です。
    ogieさんはじめまして。また気軽にコメントください。

    コメント by風みどり  2009/9/17 木曜日 @ 20:47:36

  • 懐かしいですねぇ
    丁度参加した時の作品ですね
    集中できずに何故かフェアリーを作っていたのが思い出させますw
    解説良かったです
    時間があればまた別の作品でもして欲しいです!!

    コメント by クロ  2009/9/18 金曜日 @2:01:33

  • クロさんはむしろひとつ書いてみませんか?
    図面作ったりは私がやります。
  • 以前,小林さんが書いてくれました。
    ネタはまだあるといっていたので,また書いてくれないかなぁ。

    半袖の人も国分寺の路上で1本書いてくれる約束を取り付けました。気長に待っています。

    他にも「名局精解」を書いてみたいという方はご連絡を。

    コメント by風みどり  2009/9/18 金曜日 @20:39:18

    「名局精解4 上田吉一」への2件のフィードバック

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