名局精解1 大橋健司

第1回 大橋健司 氏の間駒作品を解く!


眼につく手を見てみましょう。
48銀と17飛ぐらいしかなさそうですね。
入り口が易しいと「解いてみようかな」という気を起こさせてくれます。

先に平凡な48銀から試してみます。
26玉は38桂,27玉,17飛,同玉, 35馬ですから……

27玉と決まります。
以下,39桂,26玉, 37銀,同玉,17飛, 26玉,27飛,15玉で次図です。

24銀,同と,同馬も自然な流れです。

16玉で打歩詰。
やはり簡単には詰みませんでした。しかし,この順に踏み込んだことは決して無駄ではありません。
いえ,逆にこの順を考えて初めて作者の意図を掴むことが出来るのです。
「この打歩詰をどう打開または回避するか」が,この作品のテーマなのですから。

さて,それでは初手に戻って先に進みましょう。きっと,候補にあったもう一つの手が正解です。

17飛
46玉も26玉も38桂で簡単ですから,間駒です。

まずは歩から順に考えていきましょう。

48銀,26玉,38桂,17玉,35馬で次図です。

案外簡単でした。
この図を間駒が「香」「桂」でも同じことだということがわかります。(桂はありませんが)
すると27の間駒はこの図で「26」に間駒できるように「飛」か「金」なのでしょうか。

2手目に戻って飛合を次に考えましょう。 48銀,26玉,
今度はさっきと同じ38桂では詰みませんので……
27飛,同玉,37飛

以下,26玉,35馬,15玉,27桂まで
最初の間駒が「金」だったら,この図で37金と打つことになるわけですから,もっと簡単に詰むことがわかります。
では,2手目の間駒は何が正解なのでしょうか?

「角」が残っていました。「銀」は4枚すべて盤上にあるので,後手はもっていません。(例え持っていたとしても「角」より簡単に詰むようです)

角では26への効きがないので,「歩」と同じようですが, 48銀に対して46玉と逃げる手があります。
この図になっては38桂と打っても同角成で詰みません。

ということは,角合はすぐさま同飛ととるしかありません。

同玉でこの図になります。
実はこの図がひとつの考えどころなのですが,一見,39桂しかなさそうです。
17玉,28角,26玉

…………詰みません。
手を戻して考え直します。すると,前図でありました。うまい手が!

19桂

39桂でなく19桂とわざわざ隅に打つのが妙手です。この手の意味は次の手でわかります。 17玉と同じように逃げますが,

39角

こう打てるのが19桂の意味でした。 28歩合は同角,26玉,27歩,15玉, 37角までですから,
26玉と逃げる一手。
対して48角と追ったのが次図です。

さて,また間駒です。しかし,35歩の配置がありますから歩合は二歩でできません。
飛車・金・香だけなので簡単そうですね。

金合は同角,同玉,48銀,26玉, 37金,15玉,27桂までと簡単です。残るは飛車と香ですが,香合から考えていきましょう。

同角…48銀…27香
最初に考えた順と似た形になってきました。

先ほどは27飛でしたから,打歩詰でしたが,今回は27香です。ですから, 17歩,同玉,35馬で詰みます。
これで正解は飛合だということがわかりました。

37飛

この間駒は直後にすぐ取られるしかない間駒です。世間の常識から言えば,なるべく安い駒にするのが当然のところです。そこで,香が持駒にあるのに飛車を打つ!「不利合駒」と呼ばれる高級手筋です。

復習しておきましょう。
同角,同玉,48銀,26玉,27飛だと……

15玉,24銀,同と,同馬,16玉で打歩詰。
しかし,良く見ると打歩詰最初の図とは違うところがあります。そうです。48銀が存在しています。これを利用して打開する方法はないでしょうか?

28飛 と離して打つ手があります。

同じように進んで図のようになりますが, 27飛でなく28飛なので17歩が打てます。

17歩,同玉,35馬,16玉,26馬まで
もちろん歩が余りますし,これで終了ではありません。玉方にも対抗する手があるのですね。

28飛に対しては呼び寄せる27歩

これはただで取られるだけの間駒ですので「捨合」と呼ばれています。

……で,またもやこの図になってしまいました。
違いは持駒が歩2枚になったこと。

しかし,この1歩の違いをどう活かせばよいのか……。

図を戻して考えます。

今までの読みをまとめてみるとこの局面は実に不思議な局面で持駒が「飛車」以外だったら全部簡単に詰むわけです。
歩の場合は読んでいませんが, 27歩と打てば香の場合と同じように詰むことが確認できます。
最強の駒である飛車を持っているのに困るというのは面白いものですね。

「飛車」以外なら詰む

だったら,なんでもいいから飛車と交換してくれ~という手が  76飛 です。

飛合以外は詰むわけですから,考えるのはどこに飛合をするかですね。

46飛合は同飛,同桂,37銀,同玉,27飛で詰みです。
次に56飛合を考えて見ましょう。

同飛,同歩で図となります。

やはり37銀,同玉,27飛,36玉,56馬で詰みますね。

そこで,66飛合が正解とわかります。

2回目の不利合駒です。

同飛,同桂で図となります。
桂馬を移動させた結果になりましたが,どういう意味があるのでしょう。

桂馬が移動したので 46飛 と打てます。

3度目の不利合駒!

お見事です。拍手したくなりますね。

同飛,同歩,28飛,27歩

もう縦から王手するしかなくなりました。

同飛,15玉

しかし,先ほどの打歩詰の図とどう違うのでしょう。

24銀,同と,同馬,16玉

やはり打歩詰
前の図との違いは……36歩です!

このお蔭で 26飛 という手が成立します。

同玉ならば27歩と飛車と歩を打ち替えようというわけです。

36玉と逃げられなくなっているので,この手が成立するわけです。

実際には26飛には,17玉とかわすのが 2手伸びるので,最長の手順になります。

18歩,26玉,27歩,16玉
で打ち替えたことになり,
17歩と突くことで同じことになりますね。

以下,同玉,35馬,16玉,26馬まで

長い道のりでしたが,やっと解決しました。

三度にわたる不利合駒,19桂の妙手など作意手順は楽しいだけでなく夾雑物がまったくありません。
無用な難しさを排除しているわけですね。
配置もすぐに意味のわからないものは69銀のみ。(おそらく余詰防ぎでしょうが,そこまで鑑賞してはいません)
どの駒も二重三重の意味を持った配置であることが調べればわかるはずです。
解きあげて手数を数えてみると41手もかかったことに気づきます。
逆に言えば,手数の割りに重量感にかけるとの批判もありえるのですが,1テーマだけでまとめられたこの潔い創作理念に私は共感を覚えます。

最後に作意手順をまとめて味わってください。


コメント
お久しぶりです。ミーナです。
名局、堪能しました。
この図はすっかり忘れていたのですが、やっぱり大橋さんは飛車使いがうまいなあ。
このタイプの趣向的な不利合は首さんにもありましたっけ。
これくらい途中図や変化図があれば、あたしのような不精者でも眺めるだけで
頭に入ります。そのうえ駒が動くし、至れり尽くせりです。
一局にこれだけ丁寧な解説ってのは今までなかったんじゃないかしら。
小林さんの解説も楽しみです
Posted by: ミーナ : 2004年08月22日 23:14

お久しぶりです。ミーナさん。
どうか,また,掲示板で作品見せてくださいませ。
手数より図面が多いってのは初めてではないかと
思っていますが,どうでしょうね。
Posted by: 風みどり : 2004年08月22日 23:16

たまにホームページを覗いていましたが、ようやくまた動き出したのは嬉しい限りです。
イロハかるたが更新されたのに加え、名局詳解の新コーナー、楽しみです。
ただ指し手の符号の間違いが何箇所かありますので、早めに直した方が…。
このコーナーが知られるにつれ、大勢の人が見に来ることが予想されますから。
Posted by: 解答欄魔 : 2004年08月22日 23:24

ご無沙汰しています。「詰将棋探検隊2」はないのですか?作品集のうわさも以前ききましたが。
間違い2箇所はなおしました。まだありますかしら??
Posted by: 風みどり : 2004年08月22日 23:24

風みどり様
第一回名局精解に取り上げて頂きありがとうございました。詰将棋のサイトはめったに見ないので、今やっと気づいたところです。のんきなもんです。
解説は実に詳細、適切で、先回りせず、解く人の心の動きに合わせたテンポを心得た名解説です。作者自信よりもツボを心得た内容と感心しました。
私は二度目の冬眠中です。(30代の10年間に次いで)おそらく復活は60才ないしは65才でしょう。(現在58才)それまでは駒を握りませんが、詰将棋で何をしたいのか追々考えることにします。頭が錆びるか、復活が成るか、それ自体が興味の対象です。
機会が有ればお会いしたいと思います。
Posted by: 大橋 健司 : 2004年08月22日 23:25

これは,詰将棋界の吉報ですね。大橋健司 ウィル カム バック スーン! 2年なら間もなく,7年でもあっという間です。
事前にお断りもなく,作品を使わせていただいているのでお叱りをいただいてもやむをえないところを解説をお褒めいただき,正直ほっとしました。
Posted by: 風みどり : 2004年08月22日 23:26

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