伊藤看寿 『将棋図巧』第91番 1755.3
看寿にしては単純な造りの作品。
右下の配置がなんとも意味深だ。
72飛成、91玉、27歩としてみても、19とでなんの効果もない。
92桂成、同馬、82銀、同飛、73桂不成、91玉、
82桂成、同馬、81飛、同馬、同桂成、同玉、
序盤は単なる駒交換。
手が続くように攻めると配置が整理されて持駒に角が残った。
盤面を広く眺めると、18の地点が「角を打て」と囁いている。
18角、
同桂成は同馬で桂馬が入手できるから、91玉、83桂まで。
91玉、27歩、19と、92歩、
91玉で打歩詰の局面だが、この打開は簡単。
27歩と打ったばかりの角の利きを塞げば良い。
81玉、26歩、18と、
さらに開き王手をすることで桂馬が入手できた。
93桂、71玉、72飛成、
手拍子で73桂と打ちたくなるが、それは失敗する。
この最終局面で93桂を出す所は看寿の片鱗を感じさせる。
同玉、73歩成、71玉、72と まで27手詰
遠打の意味づけは打歩詰の打開のために後で自らの利きを塞ぐことが可能な位置に打つというもので、所謂ブルータス手筋の基本形である。この発展形が第49番だ。
詰上りはスッキリと大駒が消えており看寿らしいと言えば言えるが、序盤は単なる駒交換に過ぎないし全体的に硬い感じを受ける。かなり初期の作品なのだろうか。
遠打であるから中合の変化処理を確認しておこう。
そのためには13手目63角の紛れを調べれば良い。
【紛れ図】
以下、
91玉、61飛成、82玉、81龍、93玉、
94歩、同玉、72角成、95玉、73馬、96玉、
97歩、同玉、64馬、98玉、
【失敗図】
これで手がなく失敗だ。
もし、18角に27歩合など中合をすると、同角と取って同じ局面で持駒にその歩が残る。
そこで以下19歩、同玉、55馬、98玉、88馬までの詰みとなる。
35手かかるから作意よりかなり長い。
妙手説の時代なのでこれで良かったのだ。