詰棋書紹介(94.3) 特別懸賞出題[2] 結果発表<第3問>

詰棋書紹介(94)

【問題】
次の作品の狙いの一手を答えてください。

という出題をした。
「狙いの一手」は鑑賞者の主観によるので正解というものはない。

<第3問>

柏川悦夫 『詰』第99番 詰パラ1967.3


まずは作意を並べてみよう。

馬で坦々と追っていく。

68馬、66玉、67馬、65玉、56金、74玉、

65桂を消さないと、74玉に73桂成がある。

66桂、75玉、87桂、同と、65金、同歩、

87桂でと金の守備力を弱めた瞬間に65金。
同玉は76銀から53飛成で簡単。

76銀、86玉、87歩、95玉、68馬、94玉、
95歩、83玉、82銀成、同飛、同飛成、同玉、

下段に追い込み、飛車を入手する。

12飛、81玉、92香成、71玉、82成香、61玉、

理由はまだ不明だが12飛の最遠打は直感で打てる。

72成香、51玉、62成香、41玉、52成香、31玉、

成香で玉を横追いすると飛車が取られてしまう危険が高まってくる。
サスペンスを感じる件だ。

42成香、21玉、32成香、12玉、13歩成、同玉、

飛車を取られてさらに中空に投げ出すような13歩成。

34桂、23玉、22桂成、34玉、24馬、45玉、

大海に逃したかに見えたのが、一転34桂で既に網の中。
大ドンデン返しだ。

35馬、55玉、46馬、66玉、67銀上、77玉、68馬 まで55手詰

さて、「狙いの一手」をどの手に感じるか。
解答者の答案を見てみよう。

占魚亭 1二飛

一手で解答者の心を掴むのは今も昔も遠打・限定打というのは間違いない。
しかもこのタイプの横飛遠打は22や32に利きを作る、具体的には32飛成としたいという理由が考えられるが、本作は12で取らせる目的。
目的も新鮮だ。

この手を狙いの一手と鑑賞する人も多いだろう。

山路大輔 17手目の68馬が狙い?

12飛が花形役者なら、その役者を引き立てる役者が居てこそ、花形役者が光り輝く。
12飛を成立させている渋い妙手は68馬だ。
87歩、95玉と玉が離れていくところであるから、ついつい追いかけて77馬としたいところ。
また79角の活用を考えても77馬としておきたいところをわざわざ79角のラインを塞ぐ68馬。

これが結果的に馬にエンジンをつけ、遠く13の地点を臨むわけだ。

山路大輔 最終手も68馬で詰上がる。

初手も68馬。
68馬で始まり68馬で終わる。
これはもちろん作者が意図的にそうしている。
そして途中で狙いの一手68馬。

オオサキ 終盤に34桂の開き王手から活用するために17手目68馬とそっぽに引くが、このとき86歩と捨合されると同馬と取ったときに53まで馬の利きが届いていないと詰まない。

77馬でなく68馬と引くのが作意なら、玉方には中合という手段が考えられる。
7筋には73歩があるので合駒したら、後に32飛成、11玉にその駒を打って詰む。

しかし8筋には歩が立つ。

(68馬に対し)86歩、

この変化はどう詰むのか。

同馬以下作意同様に追って53馬で簡単だ。

しかし、初形を見れば86から53は直射していない。
なぜ、53馬が可能になったのか?

オオサキ そこであらかじめ65金と捨てて64の歩を釣り上げておくのが狙いの一手となる。

と金を動かし76銀と打つ前に65金と滑り込んでおく。
この捨駒の効果は、作意表面上には現れない。
変化伏線だ。

オオサキさんと同様、私が想定していた正解は次の通り。

変化伏線の11手目65金

つまり作者が想定していた【失敗図】次のようなものであったと想像するということだ。

【失敗図】

12飛から34桂、それを成立させる68馬に辿り着いた人に最後の設問として86歩への対処を考えてくださいと言っているわけだ。

この【失敗図】に到達しなかった人は65金、同歩の2手を省略してしまうことになるが、詰パラでの発表時、誤解者は16人中3人と比較的少なかった。

これは伏線とその効果が表れる場所が近いということ、56金が67馬のラインを塞いでいるように見えるので捨てやすいこということもあるが

【誤解者の終形図】

誤解した場合は図のように47手になってしまい、「大学院」という発表場所の手数区分と一致しないというのが原因だろう。

大体、変化伏線というのは誤解狙いではない。
誤解しても正解発表をみて「やられた~」と感動できるのは、玉方の妙防手を見落とした場合だろう。
変化伏線はその妙防手をさらに前もって予防するという手である。


(追記)

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