若島正『恋唄』第26番 詰パラ1972.11
『盤上のファンタジア』には収録されていない作品なので知らない方もいるかもしれない。
持駒が歩のみ。
初手は誰もが不成だろうと予想するだろう。
でも一応確認しておこう。
33歩成、
【紛れ図】
15玉は25金から14龍まで。
13玉は25桂まで。
24に間駒するしかないが
25金、13玉に24龍と間駒を取って詰むのでは?
24桂、
【失敗図】
桂ならとられても14に打てない。
これで失敗のようだ。
そこで初手に戻って作意は
33歩不成、
これで24桂合ならば
24桂、25金、13玉、14歩、22玉、
62龍、
【変化図1】
14歩が打てるので62の質駒を取って簡単に詰む。
それで2手目は24桂ではない。
【再掲図】
62金をとられないように例えば54歩と中合をしても
54歩、25金、13玉、14歩、22玉、
62龍、
【変化図2】
【変化図1】と殆ど変わらない。
これ、どこに何を受けても同じなのではないか。
一つだけ手段が残っている。
54角、
62金を取られるのは避けられないので、32金を防ごうという狙いだ。
なんと贅沢な中合。
しかし緊急事態だから仕方ないのだ。
これは取るしか手がない。
(54)同龍、
62金を取られることは回避できたが、まだまだ緊急事態は続いている。
大駒の角を手持ちにしたのだ。
13玉に31角と逃げ道を塞ぐことが出来る。
最初の予定通り24桂だと
24桂、25金、13玉、14歩、22玉、
31角、
【変化図3】
これで今度は51金を取られて簡単だ。
それではどう受ければ良いのか。
【再掲図】
34に中合はできない。
同龍以下14歩、22玉に32歩成で簡単だ。
中合するのなら44だ。
しかし何を?46歩があるので、歩は打てない。
例えば香合だと
44香、同龍、24合、25金、13玉、
31角、
【変化図4】
以下22合に14香だ。
頭に利く駒は駄目だということになる。
では桂馬ならば……
44桂、同龍、24香、25金、13玉、
14歩、22玉、34桂、
【変化図5】
今度は31角を保留して、34桂と打てる。
すると残ったのは一つしかない。
44角、
またしても角の中合が登場する。
取らずに攻めてみると……
25金、13玉、14歩、22玉、31角、33玉、
【失敗図】
45桂と手は続くがこれで失敗である。
ということは44角は同龍と取る一手で……
(44)同龍、24桂、
24香合の変化も片付けておこう。
24香、25金、13玉、31角、22合、
24金、同歩、15香、14合、25桂、23玉、
【変化図6】
22の間駒が桂馬なら32角。
それ以外なら45角の1手詰だ。
さて作意を進める。
24桂合に
25金、13玉、
さて、ここまでで8手。
狙いの角2連中合は実現した。
そして盤面の配置の意味もこの2枚角の中合を出現させるための仕掛だとほぼ理解できたはずだ。
あとは収束である。
攻方の大駒3枚。貴方はこのうちの何枚が消えると予想しますか?
若島正だから「全部消える」に賭ける一手?
でも収束用の配置は12を埋める駒が銀であることぐらいしか見当たりませんよ。
31角、
14歩ではなく、角を間駒と交換にいく。
22香合だと……
22香、24金、同歩、22角成、同玉、
34桂、13玉、15香、
【変化図7】
これで角打ちで捉まっている。
桂合も同角成~34桂で簡単。
飛金合も同角成~32飛金で簡単。
すると残っているのは……
22銀、
なんと角を銀に交換できる。
望外だが、まだまだ簡単ではない。
同角成、同玉、32歩成、同玉、
収束なのでどんどん進める。
54角、22玉、21角成、同玉、
54角に31玉は32歩以下結構長いが省略。乞御研究。
22歩、31玉、32歩、同玉、33銀、31玉、
22歩は取ると34桂があるので取れない。
これでいよいよ終わりが見えた。
43桂、41玉、51桂成、同玉、41龍、同玉、
42金まで 31手詰
角の中合を発生させる仕組みだった2枚金が最後にまた存在感を発揮して主役の龍が消える収束。
なんでこんなに上手くいくのか不思議な傑作だ。
『ファンタジア』に選ばれなかったのは下辺の駒が残ってしまう所為かなぁ。どう考えても仕方ないのではと思うのだけれど。
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