詰将棋つくってみた(69) 課題14:選評

Judge:谷本治男

色々な意味の限定打を楽しませていただきました。
作家の皆さま、ありがとうございました。
三転四転した各種授賞作は後半に発表いたします。

選評

【第2問】松田圭市

正解
61龍、41香、42銀、32玉、41龍、同馬、
35香、同飛、23金まで9手詰

 限定打というテーマがあるだけに、まずあれっと思ってしまう。
 作者は限定打の種駒を明示しないよう意識したのかもしれない。
 合駒で得た香限定打は、受方飛の利きを遮断し取るか合するかを強要する常套手段で、角の二つの働きを防ぐ飛の利きの単一化。

【第3問】keima82

正解
35香、34角、同香、同龍、71龍、同馬、
42角、21玉、12香成まで9手詰

 受方の龍馬配置からまず目につくのはその交点への35香打ちだ。同龍なら馬の利きが遮断されるが、同馬で龍の利きが遮断されても一見は何も幸せはなさそう。しかしよく見ると、香筋が通るとともに馬を取り返す手があるようだ。同龍の場合にもそれを取り返す手も成立するように、初手の目的は駒交換であるということも言える。これが面白いかは別にしてあまり見ない手ではある。まぁ、あまり見ないのは駒取りになるからかもしれない。
 結局は逆王手合を取り角の入手を果たすが、もう一つの目的である香筋開放のために龍捨てが必要になるのはうまい。

【第6問】negitarou

正解
67香、56玉、57歩、同玉、62香成、56玉、
67角、65玉、66歩、64玉、63成香、同玉、
83飛成、62玉、73龍、51玉、42歩成、同玉、
43龍、51玉、41銀成、62玉、73龍まで23手詰

 氏の作品の多くから、詰将棋は自由だ(詠人不知)ということで本当に詰将棋創作を楽しんでおられる、という姿が思い浮かぶ。

 しかし…、

  • お客様は神様です。(詠人:昭和の歌手・三波春夫先生)
  • 解答者は神様です。(詠人:詰将棋作家多数)

時間を割いて解いてくださる神様の幸せも考慮して、解答者達に自作品をより一層楽しんでもらえることを意識してみませんか。そのために、以下の制約を課して創ってみてはどうでしょうか。全作品とはいいません、できそうだと感じた時だけでよいので。

  1. 主題に繋がらない手順は省いて17手以下に抑える。
  2. 盤端・中央不問で初形面積を49平方マス以下に抑える。
  3. 初形盤面駒数を12枚以下に抑える。
  4. 駒取りを1回以下に抑える。

(以上 数値はいい加減で、少なくすることが本意)

 本作に関しては以下のような感想を持ちました。
 前半と後半が分断して、後半手順は単なる追い詰になっている。こんな風にならないかと手順を想定(妄想)してみるのも一興。
 次図は作意不詰も、27香、16玉、17歩、同玉、25香、16玉、17飛、同玉、44馬、27玉、26馬の11手を想定。これを実現するために、縦横移動、駒の追加・変更、等を検討し完成を目指してみる。飛を龍にしてみると、初形盤面枚数一桁も夢ではないようだ。

(参考1図)

【第7問】negitarou(その2)

正解
78角、同と上、56角、同と、27飛、24角、
同飛、33玉、22角、同香、同飛成、43玉、
44歩、53玉、54歩、63玉、64歩、73玉、
74歩、83玉、84歩、93玉、94香まで23手詰

 受方と金の移動により飛の転回を目論む構想は文句なく面白い。凝縮・コンパクト化と非限定を回避できれば優秀作だったかも。
 ところで、すぐに目に付く改良点が二つあります。

  1. 初手の意味は「歩の入手」と「受方と金の位置変更」である。
    これを「と金位置変更」のみにできれば一手の価値が高まる。
  2. 龍を消せれば詰上りの味良し、15手目33龍の手もなくせる。

で、改作図というのは好まないのですが、論証・百一の意味で、一案として次の改良図を示してみます。

(参考2図)
78角、同と行、56角、同と、27飛、24角、同飛、33玉、22角、同香、同飛成、同銀、34歩以下

 以上2問のコメントは勝手なことを色々言っているようですが、negitarouさんへの声援と受け取ってくだされば幸いです。

5手詰Revolution賞

【第1問】小林敏樹

正解
37角、同龍、72龍、64玉、74龍まで5手詰

 55角は57馬に66歩合で逃れ、462819角は9559ラインへ転回不能、ということで、わざわざ取られる位置に打つ初手が高級手筋。
 ひょっとして作者もそれを意識して創られたのかもしれないが、5手詰Revolution(焦点合を回避し後に転回する限定打)に最適の作品である。この仕組みで作意を最終59角にするのは不可能?73玉に37角打の位置関係は上田吉一氏の名作を思い浮かべる。(X手詰Revolutionとは、若島正氏の発案で始まったとされる、手数指定で条件を課した作品をツイッターで募集共有するもの)
<限定打1回+紛れ受方限定打1回>

強度な一手賞

【第5問】松θ拓矢

正解
36馬、同玉、63角、54角、45龍、同角、
48桂、25玉、52角成、同銀、26金まで11手詰

 全体として、逆王手狙いの中合とそれを回避する龍捨てを柱に、52金を狙う一連手順が繋がっており、一体感のある創りである。とにもかくにも、54角合と45龍が強烈な印象を残す作品。
<限定打1回+受方限定打1回>

スッキリ賞(佳作)

【第4問】武田裕貴

正解
63角成、同歩、69香、55玉、75飛、46玉、
47歩、57玉、55飛まで9手詰

 物理的遠打(退路封鎖)と論理的限定打(打歩詰回避)の共演。初手のアクセント・簡明な中合処理・心地よい両王手の詰上りと今回の中では手順・初形ともにスッキリした品の良い仕立て。捨駒が最初の一手のみで、後は追い詰になるのが物足りないか。
<限定打2回>

くるくるおもちゃ箱賞(優秀作)

【第8問】本間晨一

正解
77角、94玉、99飛、84玉、95角、83玉、
89飛、72玉、92飛、63玉、62金、53玉、
52金、43玉、42金、33玉、32金、23玉、
22金、14玉、19香、25玉、29香、36玉、
39香、47玉、49香、58玉、69金、49玉、
59金、39玉、49金、29玉、39金、19玉、
29金まで37手詰

 図巧90番等に見られる最下段の香設置~金追い趣向。支え駒の飛を序盤に設置するのが新味で、打った後に転回するのも面白い。
 作品の性格上スラスラ解けた方がよいのかもしれないが、序盤にちょっとだけ変化があるのはご愛敬。
 詰将棋おもちゃ箱サイトのくるくるおもちゃ箱のような楽しさ。
<限定打4回(49香は除く)>

「詰将棋つくってみた(69) 課題14:選評」への1件のフィードバック

  1. 「お客様は神様です」はレツゴー三匹が詠み人のようです。
    https://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html

    あと、第7問の改作案。29角にしてみたくなりました。
    2手目の応手によって、3手目は同じなのに意味が異なる…というのが面白いかと思ったのですが、こんなこと言うから「風みどりは変同が好き」という風評が立ってしまうんですね。

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