風みどりの詰将棋と関係ない話(38) 狐

 狐という動物は雑食で暑さにも寒さにもけっこう対応するので世界中に分布している。それってつまりヒトも同じだ。ということで世界中で人の住むところの近くに狐も住んでいる。そういうわけでどこの国も民話にも狐という動物は登場することが多いそうだ。確かに日本の民話にはペンギンとかシロクマとかあまり出てこないなぁ。
 そこで今夜は風みどりとキツネの関わりについて思い出すままに書いてみる。

竹田津実

 だいぶ怪しくなったオイラの記憶に残っている一番古いキツネは、平凡社がだした『アニマ』という雑誌の創刊号に載った竹田津実という獣医さんの撮ったキタキツネの写真だ。

 評判を呼んだらしく、すぐに増補されて写真集として販売された。

『キタキツネ–北辺の原野を駆ける』


 数冊、出たように思う。もちろん全部買って毎晩眺めた。中学3年生の頃だ。

チロンヌップの詩

 その頃はイルカという歌手が好きでよく唄を聴いたり、ラジオも聴いていた。


 まさにそんなとき、NHKがキタキツネのドキュメンタリー番組をイルカの曲を使って作った。

NHK キタキツネの詩 総集編

 キタキツネはアカギツネの一種だが日本の本州に分布するものをホンドギツネ、北海道に住んでいるものをキタキツネとよぶようだ。チロンヌップとはアイヌ語でキツネのこと。

 この番組を観て、これはもう北海道に行くしかないと決心した。
 高校に入ってアルバイトができるようになったので高校1年の夏に晴海の展示場で焼きそばを売り、冬には年賀状を配達して金を貯め、高校2年の夏休みに北海道に向かった。
 竹田津実の居住地である小清水町から斜里の辺りをうろうろ歩いたが、イヌ科の足跡らしきを見つけることができただけだった。
 途中で望遠レンズだけが外に出ている小さなテントを発見した。キタキツネの映画を撮っているという話だった。それが数年後に封切られる「キタキツネ物語」だった。

シュマリ

チロンヌップで思い出したがこれは「どこにでもいる獣」という意味の「キツネ」だそうで、もう一つアイヌ語では「シュマリ」という言葉もある。このタイトルの漫画が手塚治虫によってこの時期に連載された。

 ただこの作品はこの前に連載された「地球を呑む」と大違いでまったく記憶に残っていない。明治・北海道・アイヌ・五稜郭の金塊という同じテーマを扱った最近の「ゴールデンカムイ」の方が傑作だ。(こちらも途中で挫折したけれど……)

キタキツネ物語

 なんの根拠も無くイルカの曲で作られると思っていた、この映画はゴダイゴの曲だった。まぁ、結局ゴダイゴのアルバムも購入することになったが。

 この映画は何回か観た。だぶん3回観た。誰と一緒に観たかはちょっと記憶が曖昧で自信がない。……が調べてみるとこの映画の公開は1978年。ということは間違いないだろう。そのうち1回は千葉大受験のときに知り合った女の子と観た。ところがその後オイラは画像工学科に不合格。その子は何科だか覚えていないが合格した。ところが結局地元の静岡の大学に進学することになり、あっという間に音信不通になってしまった。

きつねのしっぽ

 千葉大画像工学科が第1志望だったのだが英語が全然できずに落ちたオイラは第2志望の東京学芸大学にはなんとか合格し進学することにした。(願書を出す際に、受験科目にそれまで一切勉強したことがない社会科から1つ選ばなければいけないことを知り、一番参考書が薄い「倫理社会」を選んだ。合格できたのは「倫理社会」のお陰だ)

 大学では学生自治会と数学研究部(実質は数学教育研究部でピアジェとか勉強していた)で忙しかった。が一応恋愛もしていた。狙っていた女の子は幼稚園科でライバルが理科にいた。ところがその子とライバルは同じサークル(ESS)だったのだ。これは状況的に圧倒的不利と認めざるを得ない。同じサークルなら物理的に長い時間一緒に過ごすし、合宿にも行く。
 そこでオイラは新しいサークルを作ることにした。自治会執行部の権力を悪用し、サークル棟に1部屋確保し床を作ってコタツを持ち込んだ。それが「絵本サークルきつねのしっぽ」だ。オイラが初代族長で、サークルの主題歌を作詞作曲したのが若くして亡くなった児童文学作家廣越たかしだ。
 そういう邪な動機でつくられたサークルだが、活動も真面目にやった。noteに置いてある「まことくんのおねしょ」はこのときに描いた作品だ。そしてこのサークルはおいら達()が卒業した後も立派に活動を継続しているようだ。20年後に娘が入学したときもまだやっていたという。twitterでも数年前までは存続が確認できる。

十二支考

 冒頭にどの国の民話にもキツネが登場するといったことを書いたのに、ここまで一つも民話のミの字も出てこない。少し勉強しようと本棚をあさった。目的は南方熊楠の『十二支考』。動物の民話に関してはこの本があればバッチリだ。孫悟空に嵌まったときにサルの項を読もうと購入したが、すぐに全巻揃えた。
 で、もうオチはお解りでしょうね。どういうわけか十二支にキツネは入っていないのでした。

十二支に狐が入っていない訳

 元々、十二支は動物の意味はまったくないただの数字(順序数)です。(別のブログに書いた文章)
それを字が読めないヒトのために動物に例えて覚えさせたものだからキツネに見える漢字はなかったということでしょうね。

玉藻前

 日本で一番有名なキツネは玉藻前(タマノモマエ)だろうか。中国から渡ってきた九尾のキツネ。今は栃木県の殺生石となって観光されている。殺生石から少し登ったところにあるのが茶臼岳。
 茶臼岳に林間学校で登るのだが合同の実地踏査が実施されるのはまだ雪があって実際には登れない。そこで引率する前に自腹で登りにくることになる。実際に登ってみて、その前に勤務していた区では北横岳に登っていたので、比べたら大したことないなと安心していた。ところが子ども達を引率し登ってみたらどうも道がわからなくなった。しかし頂上は上にあることは間違いないから上に向かって歩いて行ったらちゃんと到着した。
 これは木も生えていないもうどこを登っても頂上に着くしかないという状況だから上手くいったので、若い人は真似をしないように。逆に降りるのは怖い。学生時代に塾の生徒を連れて高水三山を歩いていたとき、もう下の道が見えるからと道を外れて斜面を真っ直ぐ降りていったら枯れ葉がどっさり積もっていて胸まで埋まってしまうことになった。小さい子どもは完全に埋もれてしまう。

釣狐

 キツネというとお稲荷さんだろう。たまにお稲荷さんがキツネと早合点している人がいるが、キツネはあくまでお稲荷様の使い(神使)である。普通に考えて、お稲荷様は農耕の神様だから害獣であるモグラやネズミを食べて駆除してくれるキツネをありがたく思ったのだろう。オオカミと一緒だ。
 で、キツネの好物といえば油揚げ。こないだ「本当は怖いナントヤラ」というマンガでもお稲荷様に油揚げを捧げていた。でも、本当にキツネは油揚げが好きなの?雑食だからそりゃ食べるかもしれないけれど。

 この疑問が解けたのはビデオで「釣狐」という狂言を観たときだ。野村万蔵ではなく野村万作だったと思う。この舞台は傑作だった。文字通り「食べたい」と「罠は怖い」の葛藤だけで半時間以上観る人を飽きさせないのだ。いやネタバレは止めておこう。話はキツネを罠にかけてとらえようとするのだが、その罠につかう餌が油揚げなのだ。ただしネズミの油揚げである。
 そうだよね。雑食とはいえ豆腐よりネズミの方が好きに決まっている。最近ヒト用には大豆でつくった偽造肉がでてきたようだが本当の肉の方が美味いに決まっている。

 という訳でお稲荷さんにそなえるのには豆腐の油揚げよりもネズミの油揚げが喜ばれると思います。具体的にはネズミを捕まえるのは難しいので、ペット屋で冷凍ネズミを買ってきて(amazonでも買えます)衣をつけ油で揚げて作るのが良いでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください