忘れ得ぬ詰将棋

Writer:中尾玄章

 20年前、私は将棋に傾倒していました。特に詰将棋には力を注ぎ常に肌身離さず持ち歩いていたのが熊谷達人九段著「初級用・詰将棋250題(5手〜13手詰)でした。


 数え切れないほど何巡回も解いていたのが走馬灯のように思いだされます。以来、仕事が多忙を極め次第に将棋から疎遠になり詰将棋への関心も喪失していきました。
 50歳を迎え仕事中心の生活に疑問を抱いていたところふと立ち寄った古書店で目に留まったのが詰将棋の本でした。金園社発行・村山隆治著「詰将棋教室」です。

 詰将棋に傾倒していた若き頃の熱意がふつふつと湧き上がり再び詰将棋の世界を覗いてみたい衝動に駆られ、村山隆治著「詰将棋教室」を早速購入。パラパラと開いてみると第一部「詰将棋の一般常識」の懇切丁寧な解説に脱帽する次第。更に熟読玩味していくとある作品に目が留まりました。その作品とは清野静男八段作(7手詰)。

 昔とった杵柄で容易に解けるだろうと思いきや何と3手目で手こずる次第。あらゆる変化を消去法で対応していくと絶妙手が潜んでいたのです。
 前々から噂には聞いていましたが清野八段作は「シバ天」といわれる鋭い狙いが秘めている作風だと痛切に思い知りました。現在でも塚田正夫名誉十段作、二上達也九段作、内藤國雄九段作に根強い人気がある中で清野八段作がクローズアップされないのが残念でなりません。
 清野静男八段は昭和11年4月に新潟県から上京して、木村義雄十四世名人に入門、昭和49年に八段に昇進するものの詰将棋には特に心血を注ぎ創作に一貫してきた非常に稀有な方でした。

 本作は人生の節目において一生忘れえぬ作品になるでしょう。再び詰将棋の世界に傾倒する中で清野八段作に巡り合うのも何かの縁としかいいようがありません。若き頃に傾倒していた熊谷九段作に続き早速、清野八段作の代表的著書・梧桐書院発行「実戦型詰将棋秀作選」を購入して熟読している最中です。改めて詰将棋が持つ豊穣の世界を思う存分堪能したいと思います。


清野静男七段(当時)『新選詰将棋』第24番


15歩、同金、24金、同歩、13飛、同香、23銀不成
まで7手詰

「忘れ得ぬ詰将棋」への2件のフィードバック

  1. 強烈にボロボロですね。
    こうなると、、もう捨てられない愛着では?
    それと
    金園社の懐かしい社名。
    書店に並んでいましたね。
    当時、、と言っても私は40年も前に遡りますが
    将棋含む趣味や実用書の本。
    私がよく読んだのは升田幸三著の「寄せ方・詰め方」
    資源ゴミに回そうと思っていた(本気で)
    こんなものがメルカリで今や数千円にも。

  2. マコキングさま

    コメントありがとうございます。
    熊谷本は今でも座右の書として手元に置いてあります。
    暇あるごとに今でも読み返しています。
    清野八段作は鋭い狙いを秘めた作風で非常にシビアな作品が数多く散見されます。
    改めて詰将棋の醍醐味を堪能しています。
    時間に余裕があれば大道詰将棋にもチャレンジしてみたいですね。

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