詰将棋雑談(79) 二枚詰と清涼詰

昨日のエントリーで清涼詰という用語を用いた。
詰上り攻方駒2枚という趣向の作品のことだ。

このブログで用いている趣向詰の用語は詰将棋研究会『趣向詰将棋名作選』(1980)所載の森田銀杏「趣向詰将棋の分類」に寄っている。(森田銀杏とは森田正司氏の雅号)

「趣向詰将棋の分類」には詰上り攻方駒2枚の趣向は二枚詰とされている。

しかしこの用語はそれ以前にも使われているのは聞いた覚えもないし、その後も使われた形跡はない。
いや1つだけあった。
翌1981年の『三百人一局集』で九代大橋宗桂の解説を書いた三木宗太氏が使用している。
また近代将棋2006年7月号の解説に使われていたという情報があるが、国会図書館デジタルコレクションにもこの号はない。(筆者が解説を書き始めたのは2006年9月号からだから、その前というと服部さん?)
藤井国夫氏も「二枚詰」という言葉を使っているが定義は異なる。

この趣向を得意にしている作家は何人もいたが特に名称をつけるまでもないと考えていたのだろう。
なのでおそらくこの本を編集する際に、詰将棋研究会もしくは森田氏が作った用語なのだろう。

1982年に岡田敏『清涼図式』が発行される。
この詰上り攻方駒2枚の作品のみを100題まとめた作品集だ。

この『清涼図式』以降、詰上り攻方駒2枚という趣向がはっきり認知されるようになったと思われる。

さて、ここからは筆者の想像だ。

森田正司氏はちょっと困ったのじゃないかと思う。
「二枚詰」という用語が普及しないのは良いとしても「趣向詰将棋の分類」で次のような提案をしているのだ。

初形に関する趣向の名称は、今回すべて「○○図式」とし、詰上りおよび両面に関する趣向については、すべて「○○詰」とよぶことにした。

ところが「清涼図式」という詰上り趣向の用語がこのままでは定着してしまう。
「二枚詰」がだめでも、せめて「清涼詰」としてほしい。
そこで詰将棋研究会の会員に「清涼詰」という用語を普及させるように指令が下ったではないか。

というのは詰パラのバックナンバーを読んでいると、「清涼詰」という用語が初めて使ったのは詰将棋デパートの解説をしていた申棋会氏だからだ。1983年頃のことである。
申棋会氏はその後も「清涼詰」を多用し、短評も「清涼詰」と書いているものを採用しているように見受けられる。その努力の甲斐あって、やがて高校担当の赤羽守氏も使うようになった。

1985年頃には各学校への解答者も短評で使うようになり、みごと「清涼図式」ではなく「清涼詰」が定着したようだ。

1986年に柴田昭彦氏は同じ創棋会(当時会長?)の岡田氏に配慮してか、清涼図式という用語を使用している。
しかし、第299回創棋会例会報告を読むと、

今回の課題は「清涼詰」

となっており、創棋会においても現在では「清涼詰」が定着しているとわかる。

なお申棋会とは1956年生まれの詰将棋作家集団。故山本昭一氏、現全詰連会長の柳田明氏他錚錚たるメンバーがそろっているが、実際にデパートの解説を書いていたのはズバリ飯尾晃氏だろうとみている。飯尾氏のコメントを待ちたい。


追記(2022.07.11)
『清涼図式』(1982.1)の後書きには

清涼図式–玉方の駒に関係なく、詰め方の駒が二枚で詰上る図式をこの様に名づけてみた。

とありますが、『さわやかな詰将棋105』(1994.5)では次のように変わっています。

詰将棋を解き終えた時、玉方の駒に関係なく、詰め方の駒が二枚だけで詰上げているのは、無駄がなく、スッキリして、非常に気持ちが良いものです。
詰将棋界では、このような詰方二枚だけの詰め方を”清涼詰め”といい、その作品を”清涼図式”と呼んでいます。

九代大橋宗桂『将棋舞玉』第8番 1786

「詰将棋雑談(79) 二枚詰と清涼詰」への4件のフィードバック

  1. デパート担当時の記憶はほとんどないのですが、「奇想曲」の133頁に書かれています。

  2. 『奇想曲』にはデパートの担当は
    1981.2~ 柳田明氏
    1982.6~ 塩野入清一氏
    1983.12~ 飯尾晃氏
    と書いてありますね。
    ということはプロパガンダを実行したのは塩野入氏でしたか!

  3. 趣向詰の分類は三木宗太氏が書かれたのではなかったか。
    ですので森田氏とも相談していたと思いますが、分類そのものは三木氏によるものでしょう。
    清涼図式と清涼詰は、今となっては記憶がサッパリですが。
    詰研から清涼詰を使えという指令は出ていません(笑)
    私個人は、清涼図式は書名という認識でした。
    今読み返してみると、初形を〇〇図式、詰上がりを〇〇詰とする定義は、煙詰や飛角図式など伝統的なものも踏まえて正しい定義付けになってるように思います。
    ちゃんと認識して使い分けはしてなかったですが。

  4. 三木宗太氏の意向は大きく入っていると思いますが、論文の筆者は「趣向詰将棋の分類」は森田銀杏、「趣向詰将棋のルーツ」が三木宗太となっていますね。

    それにしても柳田さん、随分ご無沙汰しています。詰工房にも最近は顔を出されていないそうですし、先日の社団戦でもお目にかかれませんでした。お元気ですか?

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