詰パラ1989年5月号デパートに発表された原図がこれです。
72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同角不成、72銀不成、52玉、
56香、同角成、61銀不成、63玉、65香、同馬、72銀不成、52玉、
54香、同馬、96角、63歩、54龍、同飛、61角、51玉、
52歩、同飛、同角成、同玉、54飛、53角、63角成、43玉、
53馬、33玉、44馬、24玉、45馬、33玉、34飛、42玉、
43歩、同玉、21角、52玉、54飛、53桂、61銀不成、同玉、
72と、同玉、53飛成、45と、54角成、82玉、74桂、92玉、
81馬、同玉、83龍、71玉、82龍、61玉、62桂成 まで63手詰
解答者の評は難解な収束–61銀生から72とに集中していました。
解説者の申棋会(飯尾さん?)からは前半と後半のアンバランスが難であると評され、かつ初手より67香、52玉、62香成以下の余詰を指摘されています。
さて、再々掲になりますが、今回の改作図は下図です。
72銀不成、52玉、61銀不成、63玉、67香、同馬、72銀不成、52玉、
56香、同馬、61銀不成、63玉、66香、65香、同香、同馬、
72銀不成、52玉、54香、同馬、96角、同飛、54龍、53金、
61銀不成、42玉、34桂、32玉、14角、31玉、22桂成、同玉、
23歩成、21玉、22と、同玉、24龍、31玉、33香、42玉、
41角成、同玉、21龍、42玉、32龍、51玉、43桂、同金、
52龍 まで49手詰
後半をあっさり簡潔に仕上げた代わりに、素直な4香連打ではなく破調の合駒請求を取り入れた仕上げです。
筆者は凄く良くなったと感じましたが、一方でこの破調については賛否両論あるかなとも思いました。
66香はいわば余詰筋とも受けとることが可能だからです。
短編作家だったら、原図の前半の方を支持するのではないかと思うのです。
でも、一般の解答者はどう感じるか。
これは解答募集形式できいてみるしかないなとなった次第です。
さて、お待たせしました(特に大橋さんに)、解答を寄せてくださった方の全短評です。
有吉弘敏 | 大橋氏の作品に触れられるのは嬉しいです。 作者名による安心感とタイトルに助けられ短時間で解けました。 この機構から趣向的な動きを実現している事が、まず素晴らしい。 収束も最低限の配置から綺麗な纏め。 |
中筋 |
最初は手なりで13手目65香と指してしまいました。 39手目34香及び35香が成立しています。 34香は非限定で済むと思いますが、35香の場合作意手順同様に進めて45手目に31龍で余詰ではないでしょうか?(以下、43玉、34龍、42玉に32龍ではなく33龍が成立してしまうため迂回ではないと思います) |
竹中健一 | 変調をきたす66香が一瞬見えなかったですが、そこを通り抜けてからは意外とスムーズに進みました。 最後の香だけ限定打じゃないのが惜しい感じがしました。 |
松澤成俊 | ワンチャンスとらえて5本目の槍を確保しにいく構想ですか。 感心しました。 |
占魚亭 | 前半の銀不成~香打の趣向的手順が素晴らしいですね! オリジナルを知らないのですが、どのような作品なんでしょうか。 |
ミーナ | 銀ととはミニ知恵の輪か。見覚えある馬と角。この手筋は名前があるのだろうか。秋元手筋とか。 54馬と引かせて、96角以下収束のはずが、まったく詰まない。 66香、65香の応酬が趣向のなかにトリックを仕込む、大橋流の芸。でも、タイトルがヒントで助かりました。 収束はまるで作ったよう、といったら変か。すっきりした配置なのに、まとまってます。 ところで、39手目33香のところで、35香が成立しています。これに、作意通りなら問題ないのですが、 32竜のところで、31竜~34竜~33竜は桂が余るので、単なる迂回手順とはいえません。 |
角 | 持駒四香でも題名が五番槍だから、香合が出ることは当然予想される。銀の装置も滑らかなので、趣向自体はほぼ一目。 96角、同飛、54龍、53金合の局面からどう収束するのか、作者がどんな収束を付けたのか、そこに興味がある。 収束用の駒は2筋の桂と歩の二枚。その桂をポンと跳ねる34桂(27手目)がやりにくい。 以下はやや長めの収束。 2筋の駒はきれいに捌けて消えた。作者の苦心はそこにあったのかと思う。 |
三輪勝昭 | 大橋健司作懸賞問題の収束配置の24歩、26桂は収束の冗長感あるのが不満です。 冗長感を感じるのは長さより、馬を取り2筋に舞台が移るのが要因と思います。 96角を同飛と取ると54龍からどうしても舞台が右に行ってしまいます。 96同飛と取らず収束に移行する図を大橋さんにはもう少し考えてもらいたいと思います。 |
本間瑞生 | 香の打ち方を工夫する手順がおもしろかった。迂回が成立するところが少しあるのが若干惜しいと思った。 |
短評をくださった解答者は以上でした。
サンプル数が少ないのが残念ですが、66香の破調は好意的に受け止められているようです。
三輪さんからは改作案が届きましたが、割愛させていただきます。
筆者のような二流作家ならともかく、大橋さんが30年考えているのですから、当然お示しの図に現れた方針も比較検討した上での今回の改作図であることは間違いありません。
さて、最後に当選者の発表です。
辞退された方や既に献本した方を確率操作させていただいた上で、サイコロを振った結果、当選者は松澤さんと占魚亭さんに決定しました。
お二方は住所をお知らせください。
風さん懸賞問題のお取り扱いありがとうございました。
諸々問題がありました図面にも関わらず、回答者の皆様の誠実な感想に、
却って顔が赤らむ思いです。
収束の冗長感、苦し紛れの3五歩などを考えますと、さらに改良の必要有りかもしれません。三輪さんの案も後日知りたいものです。
それはそれとして、私は記録作や新しいものを作るより、自分の中にある物語、色彩、メロディーとかを可能な限り重複なく表現したいと思っています。その中の一つとして、このような過去の作の見直しもしています。今回はありがとうございました。今後ともよろしくお付き合いください。 大橋健司
発表図は余詰は初手だけでしょうか?
なら修正は序4手を省けば良い事ですよね。以下は一応それを発表図として書きます。
収束部分のだけを比較するなら、僕は発表図が100点で今回の改作図は0点です。
僕が収束部分の良し悪しの基準は主題に使った駒が詰上りに消えるか残るかです。
発表図は主題駒は元々少ないので捌く必要はないのですが、61銀や83とが消える。
銀とと金が消えても他の駒が足されたらプラマイゼロですが、龍はとどめに残りますが、他は全部捌けます。僕は主題駒が残らないなら100点なんです。
改作図は銀もと金も香も残るので0点です。
発表図は難解過ぎるし、後半は主題と別物で大きな減価対象です。
しかし、僕は収束部分では主題で使った駒が残らないなら100点、この100点は余詰に近いキズとかがない限り減点されません。
逆に残り過ぎの場合はどんな良い手順でも加点されません。
これが僕の収束の創り方の考え方です。
僕は駒が残るか残らないかを重視して訳じゃないです。
全てだと思っているのです。
長々とお前の詰将棋論なんか聞きたくないと思われているでしょうが、大橋さんは少なくとも消えるのは美しいと発表図を創った時は考えているはずです。
それが今回の改作図は真逆です。
考え方が変わったのでしょうか。
僕も少し考え方は変わりました。消せないのも認めようと。
但し、その時は短く切れと。
でも理想は消す事です。
最近の作家や解答者は改作図支持が大半だと思います。
それだと寂しいですね。僕は極端なんですが、僕よりの作家が残って欲しいです。
ところで改作図は収束より、66香、65香合を入れる是非の方が主でしょうか?
短編作家なら入れないでしょう。
解答者は謎解き部分が増えるので面白いと思う人もいれば、ない方が好きな人もいそうです。
現実問題としては合駒を入れないようにすると駒が増える。
現代は駒が増えるのを嫌いますから、改作図支持が圧倒的でしょう。
僕はここでも発表図支持です。
但し、収束を改作図のように少ない駒で仕上げるなら改作図支持です。
改作図に銀とと金を置けば合駒部分が省けるか知りませんが、仮に可能性でも2枚も置くのはバランスが悪く一貫性がありませんね。
1枚でも置くなら合駒入りにしたいです。
少ない解答者で判断するのは危険ですが、この改作のこの部分は受けいられたと判断しても良いのではないでしょうか。
僕の収束案ですが、一流作家は意外に簡単な事に気が付かないものです。
一流作家だからこそ簡単な事に気が付かないと言った方が良いでしょう。
一流作家は自分の作風から外れる事はしませんし、主題から外れる事もしません。
理想が高いんで欠点が見える案には盲なんですよ。
この素材だと一流作家でなくても持駒香4にしたいと考えます。それも方法はいくらでもある。一流作家は香4枚ではダメと諦めがつくまで、香4にならない順は考えないものなんです。
僕の案は持駒香4には出来ません。それで思考から外れていると考えてます。
元の発表図からなら浮かんでいる可能性はありますが、その時は短く切る思想はなく、銀とと金を捨てる事に頭があるので捨てているでしょう。
この捨てるとは二度と思い出さないって事です。
僕の収束案は図面を示す必要はないでしょう。
最終的に持駒香3歩1になり馬のジグザクが完成する(63、52と動く)と言えば大橋さんでなくても分かる図だと思います。
大橋さんはこの解答発表は読むと思いますので、その収束案に対する意見を聞きたいです。
もし、その図は考えたけど捨てたなら理由を知りたいです。
ジグザク完成、4枚目の香は短打限定、短く切った収束、駒数も改作図に同じで何の欠点もありません。
持駒香4にしたいのは素材としてでの話で、小さな事だと思います。
僕には捨てる理由が分りません。
何の欠点もないと。
こう書きましたが、僕の理想は主題駒が消える事です。
短く切るなら僕の案がベストと思っているだけで、この案は僕は0点です。
発表図が100点で完成図はこっちと思っています。
大橋さんの考えで知りたいのは本当はこっちです。
あちゃー、三輪さん、短評はさっくりと編集させてもらいましたが、オイラの本文より長いコメントつけられたら台無しですがな。
一流作家のくせに子どもみたいな言動をする三輪さんのキャラは嫌いではありませんが、短編作家として短く編集したくてたまりません。
コメントの編集をすることを許可してください。
改作図に関しては、ヨソサマの作品を勝手にいじくりまわすこと自体、気持ちよいことではないと考えています。推敲のアドバイスをする際に、自分で実現可能性を確認することはしたとしても、その図を直接示すのではなく「こんな方向性はいかがですか」と伝えれば十分だと考えています。
なので3つめのコメントは削除したいのですが、どうですか?
大橋さん本人から三輪案も知りたいとありましたのでコメントします。
後日なので今は知りたくないとも取れますが。
持駒 香香香歩
玉方 31銀、32桂、41桂、58馬、62歩、63玉、94飛。
詰方 44龍、69馬、71成桂、81銀、93成桂以上 37手詰。
短く切るならこれがベストだと思います。
発表図は83とを捌きに行く事に無理がありますね。
でも理想と思う事があれば無理を通す方に僕は憧れます。
世の中は完璧なシンプルさを求めますが、僕は理想のため無理を通す作品の方が好きです。
なので三輪案はゴミでしかなく発表図こそ美しいと思ってます。
三輪さんは面白い。
痛い所を突かれていますが、
そのうち反撃します。
大橋さんありがとうございます。
最高に嬉しい返事です。
今回の懸賞の図は大橋さんの腕を考えたら、不満足だったのでいらん事を書き過ぎました。
そのうち反撃するそうですが、反撃されても僕は平気です。
大橋さんの実力は知ってますので、その時は逃げちゃってますから(笑)。