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【新刊】『古図式趣向詰撰集』

 古図式とは何か、趣向詰とは何か。実はこの書名の2大要素である「古図式」も「趣向詰」も確固とした定義は存在しない。古図式は江戸時代以前と主張される方から昭和の戦前も既に古図式だとされる方までさまざま。「趣向」や「構想」も時代によって使われ方は移ろっていくことはちょっと古い方ならご存知だろう。
 ここでは明治時代までの作品集から、手順趣向(龍追い、馬追い、金追い、夏木立、朝霧……)をすべて選び出して収録している。書名を「撰集」としたのは「これ(は|も)趣向詰(ではない|だ)」という意見に平等に対応することは不可能だからだ。著者は「全集」を編むという心意気で取り組んでいる。数千もある古図式を何度も並べ、趣向手順を含むと選ばれた284局が収録されている。
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詰将棋つくってみた(142) 課題30:講評

Judge:新ヶ江幸弘

 諸説あるとは思うが、田舎曲詰のキーワードは「意外性」と「必然性」の2つではないだろうか。

意外性
 曲詰になること自体に意外性がある。盤の中央には駒が配置されてなく、一見して曲詰とは推察できない初形から、あぶり出される展開。例えば、実戦型から詰めると「一」が現れる、柏川作が有名。


※詰将棋情報と手順は末尾に

必然性
 田舎でしか実現できない手順。中央では実現しない(例えば辺や可成位置から離れていると成立しない)手順の曲詰。田舎の例ではないが、利波作の金銀図式の「✕」の収束は、都玉では成立しないので、詰上りを中央から一段上にずらして成立させている。

 これらは「作ってみる」場合に意識した方が良いポイントであり、「作ってみた」ものを評価する場合の視点にもなります。

最優秀作

第10問 武田裕貴

 詰上り「~」。46銀を5回動かして、最後には消えてしまうというテーマを織り込んだ手順は、意外性及び田舎での手順の実現性とも十分に満たしている。不動駒もなく、今回の最優秀作。

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