詰将棋入門(138) ブルドーザー趣向

黒川一郎 「檻」『将棋浪曼集』第73番 1973.9

易しい捨て絞り趣向。『将棋浪曼集』では未発表とあるので、浪曼集をお持ちでない方は初見かもしれぬと選んだ。
1973.9は『将棋浪曼集』の発行日。

一往復の趣向詰。
第1趣向は舞台作り。

84と寄、75玉、74と引、65玉、64と引、55玉、
54と引、45玉、44と引、35玉、

質駒の金を入手する。

25金、同玉、15金、35玉、

これでメイン趣向の準備完了。

34と、同玉、24と、35玉、
36歩、同と、25金、45玉、

先に45玉とよろけると46飛とこられて早い。

44と、同玉、34と、45玉、
46歩、同と、35金、55玉、

1サイクル8手。

54と、同玉、44と、55玉、
56歩、同と、45金、65玉、

3サイクル目。

64と、同玉、54と、65玉、
66歩、同と、55金、75玉、

上田吉一はサイクルではなくて小節という。

74と、同玉、64と、75玉、
76歩、同と、65金、85玉、

1サイクル8手は8拍子という。

84と、同玉、74と、85玉、
86飛、同と、75金、96玉、

なのでこの復路は8拍子6小節。

97香、同と、85銀、95玉、
96歩、同と、84銀、94玉、

収束も狭い所で銀の邪魔駒消去まで入れて楽しめる。

83銀不成、95玉、94銀成、同玉、84と、95玉、
85金 まで77手詰

最初に「捨て絞り」趣向と書いたが、趣向の名称は正式なものがあるわけではない。
大塚播州『漫陀楽』によると追い趣向>捨て追い趣向>朝霧と分類されるようだ。
朝霧とは伊藤看寿『将棋図巧』第6番のことである。
確かに2枚金で横に追っていくのは同じだが、「朝霧」が下の金が先に動くのに対し、「檻」は上の金から先に動く。また「朝霧」が6拍子なのに対し、「檻」はと金の守備駒も一緒に移動させるために8拍子になっている。

なによりも良いのは右辺に駒が残らずに急速に檻が縮小していく所だ。
この片付き具合が気持ちよい。
筆者は学術的な分類にはあまり興味が無いので、このような趣向をブルドーザー趣向と呼んでいる。
ブルドーザー趣向は筆者の大好物だ。

最後に本作のキズについて触れておこう。
初手84と引も成立する。

また、3手目74と寄も成立する。

すごく間隔の開いた手順前後。
変化が難しくなる。

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