酒井克彦『からくり箱』第21番 近代将棋1965.3
デルゾデルソという初形から派手な手順が展開されるよりも、このようにたった10枚で作られた簡潔な棋形(盤面7枚!)から表れる手順に感動するものです。これはドーパミンの分泌は報酬予測誤差によるというのがその理由なんだそうです。
玉の包囲は完成しているが、と金の防御力も強い。
どこから手をつけていくのが正解か。
16銀、
15銀の勢力圏におびき寄せる16銀が正解。
同玉ならば…
同玉、19飛、
【変化図】
飛車が回って、これは詰んでいる。
17合なら26金まで。27玉なら16角以下だ。
そこで16銀は取れない。
28玉、29金、17玉、37飛、
29金とこちらも抑えて、これは鍋に入った感じ。
16玉、27角、15玉、16歩、26玉、
36と、17玉、18金まで13手詰
【変化図】
もちろんこれが作意のわけはない。
応手を間違えているのだ。
【再掲図】
ここで巧い手がある。
27への捨合だ。
正解は27歩。
「大駒は近づけて受けよ」(ただし生駒に限る)(いやそうとも限らない)
作意は27歩合だが、先に変化を片付けておこう。
27桂合の場合。
27桂、同飛、16玉、28桂、27玉、
63角、37玉、36角成まで13手詰。
【変化図】
角合もあるがこれは各自で研究してもらおう。
作意を進める。
(27)同飛、16玉、17歩、27玉、
63角、
可成地帯の63から角を打つのが当然の一手だ。
37玉なら上の【変化図】同様に36角成まで。
17玉、18金、16玉、27角不成、
そして17玉には18金から不成で角を引くのが好手だ。
27角成だと15玉で打歩詰に陥ってしまう。
15玉、16歩、26玉、36とまで19手詰。
【変化図】
捨合の妙手もあり、せっかく成れる場所に打った角を不成で引く好手もあり、これが作意だと言われても納得してしまいそうになるが、作者名を見るべし。酒井克彦。
まだ【変化図】なのだ。
ではどこに巧い応手があったのか。
それは12手目だった。
(63角に対し) 54歩、
この中合の意味がお解りだろうか。
63角は、37玉には36角成、17玉~には27角不成と活用した。
これは63角は、成ることも不成で動かすことも選択可能だからだ。
その成・不成の選択を先にしてしまえというのが64歩の中合である。
打診中合とよばれる高等手筋だ。
(攻方の手ならわりと普通の手なのだが)
もちろん64同角不成なら37玉、成なら17玉と逃げようという訳だ。
歩を入手しても37玉には役に立たないので成で取るしかない。
(64)同角成、17玉、
これで先程と同じように18金と攻めては打歩詰が逃れられない。
別の攻め筋が必要だ。
成不成の選択権と引換えに1歩を入手した。
この歩を活かす攻め筋は…。
26銀、同玉、36馬、15玉、
16歩、同玉、17歩、
ここで17歩と連打できるのが大きい。
同玉なら18金から押し上げていって詰み。
(実は同手数なのでこちらを答えても正解。変同のキズだ)
15玉、14馬、同玉、24金、15玉、
25金まで27手詰。
ここは馬も消える順を答えるのが解答者のマナーだろう。
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