詰将棋入門(176) 2枚角の遠打

三代伊藤宗看『将棋無双』第45番 1734.8

序盤にガンと妙手を連打して、後は長めの収束という典型的な作品。

47香が盤面を切っているので右から攻めると逃げ道ができてしまう。
左から攻めるのだが、いきなり狙いの一手が登場する。

99角、

比較的わかりやすい妙手だ。
すなわち同龍ならば56歩、64玉、84龍、74合、76桂まで。
守備の龍を動かして76桂で仕留めようという狙いだ。

   88歩、同角、同龍、
56歩、64玉、97角、

66歩は同銀と取られるし77金は同角と切られる。
88歩は龍を8筋に残して、先の手順の84龍を阻害しようという受けだ。
ラインを変えて、再び守備龍の利きに97角と遠打。

   75香、同角、同桂、

これも同龍と取れないので75香と移動合で凌ぐ。
ここからは長い収束だ。

76桂、73玉、83龍、同龍、
同銀成、同玉、84飛、72玉、

種駒だった桂と途中で入手した桂香を消化しなければいけない。

74香、63玉、83飛成、52玉、
64桂、同銀、43香成、41玉、

打った桂が跳ね出すのは気持ちよい。この感情は何に由来するのだろう?

81龍、51桂、42歩、31玉、
51龍、22玉、34桂、12玉、

51は歩合だとあとで11玉となったとき、直接頭を叩ける。
桂合は先に打っておいて、22桂成となる必要があるので、2手伸びるという仕組み。

21龍、同玉、32銀、11玉、
22桂成、同玉、23歩成、11玉、

慣れた人なら26手目の局面でこの詰上りが見えるはず。

21銀成、同玉、32成香、11玉、
22とまで47手詰

さて置き駒を捌くのではなく、持駒の角2枚を遠打で捨てるというのはかなり重量級な捨駒だ。
しかし宗看の作品群の中ではいまさら驚く程の物ではないと感じるのではないだろうか。

しかし、次の作品に進む前に、この遠打の成立する仕組みを鑑賞しておこう。

2度目の97角は現代の短篇作品でも良く見掛けるわかりやすい仕組みだ。
角筋を利用して88龍もしくは74香のラインを塞ごうという訳だ。

  (97同龍なら)84龍、74合、76桂まで

【変化図】

しかし、初手の99角についてはきちんと調べる必要がある。

というのは、わざわざ龍の利きに99角が作意だが、66角と打つこともできるからである。

なぜ66角と打たずに99角が正解なのか。
これを確認しないと本作を理解したことにはならない。

具体的には

99角、64玉は詰み、


66角、64玉は不詰、
ということになる必要がある。

作者はどうやってこの差異を実現したのか。
66角の方が玉に近い分、有利に見えるからこそ、99角が妙手なのである。

まずは99角、64玉の変化から

46角、55香、同角右、54玉、66桂、

もうおわかりだろうか。

   55玉、56銀、64玉、65龍まで

次に66角、64玉だとどうなるのか。

37角、46歩、

55香の移動合を同角左と取られないように46歩の中合が妙手。

同角、55香、同角右、54玉

これで手が止まる。66角が居るので66桂と打てないというのが宗看が考えた99角実現の仕組みである。
37角に46歩~55香の受けの妙手も是非鑑賞しておきたい。

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