詰将棋つくってみた(97) 課題20:講評

Judge:吉松智明

 「清涼詰」の定義は「詰上り攻め方2枚」という至ってシンプルなもので、無駄が無く、スッキリした詰上りに爽快感が味わえます。
 もちろん詰上りだけでなく、そこに至る駒捌きの気持ちよさも感じられる作品でれば言うことはありません。
 また作品募集では「逆算という作図技術の修練」にも触れられています。
 そういったことを念頭に投稿作へのコメントをさせていただきます。

優秀作

第9問 小笠原圭

正解
24銀、34玉、33飛、24玉、36桂、同銀左、
16桂、同馬、25歩、同馬、23金、14玉、
26桂、同馬、34飛成、同銀、24角成まで17手詰

 4手進んだところで桂をどちらから打つか考える。16~36の順では、いずれも同銀で詰まない。守りが3枚ある36から捨てるのが好手。
 同銀左と取らせて馬の利きを生じさせてから16桂が味の良い手。同馬と取らせたところで25歩と突き出すのが絶妙の感触!
 最後は歩を消した場所に26桂から34飛成の大駒捨てで文句なしの仕上がり。
 適度な紛れや変化があり、作意手順は味の良い手の連発で、今回最高の解後感を味わえた一局でした。

佳作

第11問 武田裕貴

正解
49馬、28玉、38飛、27玉、24龍、同角成、
33飛成、28玉、39龍、17玉、26銀、同玉、
36龍、17玉、16馬、28玉、39龍、同玉、
38馬まで19手詰

 49馬と大駒を捨てる入り方がいいですね。以降、この馬がバッテリーを構成し、開き王手から16~38と大きく軌跡を描くのがダイナミックな表現。
 変化・紛れはありますが、解き終わって煩雑さを覚えるほどではなく、飛車を2枚とも捨てて還元玉の詰上りと、爽快さを味わえる一局でした。
 6手目の成場所非限定がありますが、龍は最後に消えるので、気にするほどではありません。

講評

第1問 negitarou

正解
26桂、同銀不成、35銀、同銀、33金、同飛、
45角まで7手詰

 これは気持の良い手筋物。
 桂捨てに同銀生と応じれば、取らせて利きの生じたところに焦点の捨駒35銀。
 止めの33金には、同飛でも同玉でも大駒の利きを活かした詰上りと、超短編らしい切れの良さを感じました。
 (欲を言えば一段目の自陣と金2枚を何とかしたい)

第2問 羽毛布団

正解
35馬、21桂、12金、同玉、13桂成、同桂、
34馬、同馬、21飛成まで9手詰

 35馬の開き王手に桂合。12金・13桂成の連続捨駒で合駒の桂を動かし、馬捨てで止めを刺す。
 初見では12金~13桂成~35馬~13馬~11飛成という筋が目に入り、12金合以下の15手と思ったら、12桂合で詰まない!(手数でおかしいとわかりそうなもの 汗)
 簡素な形から合駒動かしに大駒捨ても入って好印象でした。

第3問 negitarou

正解
36龍、17玉、26銀、同香、18金、同玉、
38龍、17玉、18龍まで9手詰

 3手目の26銀が好打。質駒つくりと退路封鎖の一石二鳥の狙い。
 事前工作をしておいて18金捨てから38龍の両王手が気持ちよい。
 この両王手も清涼詰の一つの形です。
 贅沢を言えば両王手で終わりたい。6手目の変化処理の関係で仕方ないとはいえ、ちょっと間延びした印象を持ってしまいます。
 配置面では29のと金はやや過剰防衛気味。なくても大丈夫そうですが?

第4問 松田圭市

正解
23飛成、同桂、32飛成、22角打、23龍、11玉、
12龍、同玉、24桂、11玉、23桂不成まで11手詰

 23飛成と飛車から捨てて桂を残しておくのがポイント。
 4手目の合駒は頭の丸い駒になり角打合が最善。桂は品切れですが、苦しい配置と見るか、ベテランらしい巧配置と見るか(笑)
 最後は桂吊しの清涼詰。初形から予想がつくところでも、この詰上りは気持が良い。

第5問 negitarou

正解
55銀、45玉、56馬、同玉、66飛成、45玉、
46銀打、36玉、37銀、同玉、46龍まで11手詰

 初手55銀の焦点捨てはなかなかの好打。取らずにかわす45玉に56馬の大駒捨ても好感触。
 しかしいささか形が悪い。変化の29桂を用意した76桂など、配置に苦心の跡はうかがえますが、不動駒が多過ぎると思います。
 もちろん「清涼詰」にこだわらなければ攻め方の駒を使った効率的な配置も可能なはずです。課題に挑戦した意気は買いますが、この手順とこの形からはミスマッチを感じてしまうのです。

第6問 negitarou

正解
27桂、26玉、25金、同玉、24馬、同玉、
23飛成、同玉、35桂、32玉、23龍、31玉、
43桂不成まで13手詰

 初手の駒取りは冴えませんが、25金、24馬、23飛と三連続捨てで玉を下段に追い込んで、桂の三段跳ねで止めを刺すのは爽快です。
 悩むところのない手順ですが、一気に詰ませて気持ちがいいですね。
 ただ本作も配置は一考の余地があるように感じます。
 例えば39成銀は37玉の変化に備えた苦心の配置のようですが、いかにも不自然な配置で、たとえば57のと金を歩以外の他の駒に代えれば不要かもしれません。
 さらに39成銀を無くせれば桂は39に置くことも出来ますし、そうすれば一路右に寄せることも出来そうです。
 余詰防止との兼ね合いもあり、また変化や紛れが乏しくなるなど一長一短ありますが、本作などは手順の明快さを際立たせるなら、そういう作り方もあるように感じました。

第7問 松θ拓矢

正解
42歩、同龍、31金、同玉、23桂、22玉、
12金、同玉、11桂成、同玉、13龍、12金、
23桂、21玉、22香、同金、11龍まで17手詰

 美しい初形。よくこんな手順が残っていたモノ。
 42歩から31金が好手順。龍を呼んでその利きに捨てるのは極めて味が良い。
 こういう作品でも合駒動かしが出てくるのは作者らしいところでしょうか。
 初手44香には43歩、同香生、42歩と受ける妙防があり、作意同様進んで12金合ではなく歩合とされると22に打つ香がないため打歩詰になる。ここはよく出来た紛れです。
 初形攻め方1枚が詰上りでは2枚になるのが玉にキズ(笑)ですが、テンポの良い打ち捨てが楽しめる一局。

第8問 松田圭市

正解
31金、12玉、11桂成、同玉、12歩、同玉、
32飛成、22馬、21角、11玉、23桂、同馬、
12角成、同馬、23桂、同馬、21龍まで17手詰

 32飛成の前に23桂を消去しておくのが良い導入。23桂は初手31金と打つのに必要な駒なので上手いと感じます。
 32飛成に22馬の移動合が好防ですが、ここから馬のミニ翻弄が飛び出し、楽しめる手順。
 初手に重く打った金にもう一度活躍の場があればと思うのは、さすがに無いものねだりですね。

第10問 negitarou

正解
73角、65玉、64角成、56玉、45馬、同銀、
55飛、46玉、37銀、同玉、57飛、26玉、
37馬、16玉、17歩、同玉、27馬まで17手詰

 73角から45馬で飛車を取るしか手がないのですが、55飛から37銀と進めるのは枠外に追い出すようで不利感のある攻め方。外に追い出しての詰上りには意表を突かれました。
 しかし今ひとつ解後感が良くありません。それは不動駒の多さに加えて、攻め方の好手が37銀しかないところです。
 5番でも書きましたが、清涼詰という課題の制約から攻め駒を置けなかった事情はわかります。しかし17手という手数を支えるには、もう少し攻防に見所が欲しいというのが正直なところです。

第12問 馬屋原剛

正解
31角、11玉、22角打、21玉、13桂、同歩、
11角成、同玉、22角成、同玉、34桂、同歩、
31歩成、11玉、21と、同玉、33桂、11玉、
31龍、12玉、21龍まで21手詰

 34桂と捨てて33桂打を作るあたりから逆算されたのでしょうか。
 前例がありそうでなさそうな作品。一つの発見かと思います。
 (同一作はないようですが、指摘のないことを祈ります。)
 「すらすら解ける20手台」に投稿してほしかった(笑)

第13問 武田裕貴

正解
27馬、同銀不成、15飛、16歩、同飛、同銀成、
18歩、27玉、37飛、18玉、38飛、28銀、
同飛、同玉、38金、17玉、28銀、18玉、
19銀、同玉、37馬、18玉、28馬まで23手詰

 19飛、18銀合、26馬左という筋が第一感(そこで一苦労…汗)なので、駒取りのイントロは人が悪い(笑)。
 銀生の応手の後、15飛の合駒請求から銀が16に成戻るのは、初形から16銀が成銀に変わったようで面白みを感じます。
 7手目18歩に27玉とよろけるのが延命手段で、そのとき26飛と打たれるのを防ぐために成銀を作っておく必要があるというわけです。18歩を同玉と取ってしまうとスルーしてしまいそうなところです。
 入玉形ですが簡素な形から、意外性のある導入、2度の合駒に、飛車を2枚消してのまとめと、良く出来た作品と思います。

第14問 馬屋原剛(友情出演:山路大輔)

正解
48金、同金、同と、同玉、45龍、59玉、
69金、同龍、同と、同玉、49飛、59金、
同飛、同玉、58金、同馬、同と、同玉、
57と、同玉、66角、68玉、78と、同玉、
89金、同玉、49龍、78玉、88金、68玉、
77角、67玉、78金、同玉、58龍、77玉、
79香、87玉、78龍、97玉、86銀、同玉、
77龍、96玉、85銀、同玉、76龍、95玉、
84銀不成、同玉、75龍、94玉、93と、同玉、
95龍、94歩、92と、同玉、94龍、81玉、
82歩、同玉、73歩成、同馬、同香成、同玉、
55角、62玉、61桂成、同玉、51香成、71玉、
61成香、同玉、52と、71玉、62と、同玉、
53歩成、同玉、64龍、52玉、42香成、同玉、
41桂成、同玉、31歩成、51玉、41と、同玉、
32と、51玉、42と、同玉、43歩成、同玉、
33角成、同玉、44龍、32玉、24桂、31玉、
22と、同玉、42龍、23玉、32龍、24玉、
15と、同玉、35龍、16玉、25龍、17玉、
18香、同銀成、同と、同玉、29銀、17玉、
28銀、18玉、27龍、29玉、37銀、39玉、
28龍、49玉、48龍まで129手詰

 「詰将棋つくってみた」ではときどき大作が投稿されます(笑)が、まさかの100手超え。「清涼詰」という課題からミニ煙の登場は予測していましたが、全駒煙というのは驚き。
 長編、それも煙にコメントできる能力はないので、感じたことを記します。
 「友情出演:山路大輔」とありますが、投稿コメントによれば、36手目までが山路さんの逆算とのこと。素晴らしい技術ですね。
 原作は37手目の79香からスタートするわけですが、銀を捨てながら龍がせりあがっていくような縦追いは趣向的で楽しめます(9筋の逃げ方は変同がらみですが、一粒で二度おいしいと考えることもできます)。
 馬を取って横追いに入りますが、55角が好点の一打。団子状態の桂香歩をきれいに捌き、33角成が鮮やかな一手。これで右上隅に追い込んで収束。還元玉の詰上りも気が利いています。

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