詰将棋つくってみた(179)
 課題37:講評

課題37 右上 \(6\times6\) の配置で15手の詰将棋を作ってください。

Judge:田口正明

 Judgeを担当した田口です。今回の課題は「右上6×6の配置で15手」でしたが、これは「詰将棋パラダイス」誌の表紙詰将棋の必要条件ですが、十分条件ではありません。表紙作は「好形、好手順」でなければなりません。解いて爽やか、気持ちよい。雑誌全体の夢先案内人。それが表紙詰将棋です。
 昨今表紙では解答者数が100名を切ることが頻発しているのですが、一つの要因に変化の難しいことが挙げられます。特に4段組1頁の2段目の真ん中あたりまで変化の記述が占める作品では、この傾向が顕著です。変化を読むことに力が削がれ、作意の印象が薄くなってしまっては、作品にマイナスと考えられます。
 今回の作品群ではどうでしょうか。表紙向きかどうかという観点から講評させて頂きましたが、無論これは作品に対する一つの見方です。表紙担当ということでご指名頂きましたが、個人的にはベテランの作家の方が講評する方が良いように思いました。

優秀作

第1問 RINTARO

正解
43飛、42角、同飛成、同玉、33角、43玉、
44金、32玉、22金、41玉、42角成、同玉、
53金、41玉、33桂不成まで15手詰

 盤面わずか4枚で、いきなり飛の限定打に限定合。その後もうまく手を繋げて角捨ても入り、最後は桂の吊し詰。完成品といえます。

佳作

第4問 RINTARO

正解
11金、同玉、31飛、21桂、23桂打、同金、
12金、同玉、32飛成、22金、23桂成、11玉、
22龍、同角、12金まで15手詰

 金の守りが強く、どの方向から手をつけるか悩むところです。まずは一段目からですが、桂の限定合もうまく入り、金捨てからの清涼詰。これも第1問同様、表紙らしい完成品といえます。

第12問 keima82

正解
34角、同歩、23銀、同銀、13銀、同玉、
22銀、同玉、31角、33玉、43金、同玉、
53飛成、32玉、42龍まで15手詰

 綺麗な実戦形で捨駒を連発。2手目23桂合や4手目同玉の変化はかなり長く読まなければなりませんが、持駒が豊富なのでそれほど煩わしさはないでしょう。31角が打ててやっとホッとする作品ですね。

講評

第2問 RINTARO

正解
13飛、21玉、23飛成、22金、12角、11玉、
22龍、同玉、23金、11玉、21角成、同玉、
13桂、11玉、12香まで15手詰

 非常に狭い世界でのやりとり。玉も3ヶ所をぐるぐる。飛合があれば詰まないのですが、あいにく品切れ。かわいらしい小品といえます。

第3問 川蝉

正解
21龍、同玉、23飛、22銀、32金、同玉、
41角、同玉、43飛成、42金、52金、31玉、
32金、同金、41龍まで15手詰

 駒取りの初手は必要でしょうか。3手目の局面、15馬の配置一つで作品になっているのですね。角を品切れにしての銀の限定合ですが、10手目は飛でも金でも同じでしょうか。ちょっと残念なところです。

第5問 不透明人間

正解
21飛、同玉、32銀、11玉、12銀、同玉、
24桂、11玉、21銀成、同玉、32歩成、11玉、
22歩成、同角、23桂まで15手詰

 これも第2問同様狭い世界での抑えつけたような攻防。12~23の逃路を防いでの21飛~32銀で追い込み、桂を備え、銀をと金に替えての桂吊し詰。狙いのはっきりした作品です。

第6問 RINTARO

正解
33飛上成、23金打、同龍、同玉、33金、13玉、
11飛成、12金、同龍、同玉、22金打、13玉、
25桂、同金、23金引まで15手詰

 11飛成にも33飛成にも22に利かす金合なのですが、順番を考えさせられ、3手目もすぐ取って金を据えるところが考えどころです。11飛成からはお手本のような収束になりますね。

第7問 不透明人間

正解
13金、同桂、21銀不成、同玉、32金、同角、
31金、12玉、22金、同玉、32馬、12玉、
23角、同銀、21馬まで15手詰

 実戦形の持駒趣向というのがいいですね。3手連続の捨て駒から31金と急所に据えることが出来、最後は角捨ても入りました。

第8問 ミーナ

正解
24香、同と、23銀、同玉、41角、12玉、
13銀、同玉、22銀、同玉、32飛成、13玉、
14銀、同玉、12龍まで15手詰

 やはり自陣成駒は避けたいところです。小駒の捨駒をまぶしつつ、41角と32龍のバッテリーを作り、最後は例の両王手。指将棋に役立つ詰将棋といえそうです。

第9問 武田裕貴

正解
14銀、22玉、12角成、同玉、13飛、21玉、
23飛不成、22角、33桂不成、11玉、12歩、同玉、
13銀成、同角、21飛成まで15手詰

 初手は当然として3手目12飛は11角がよく利いています。12角成からはすらすらと進みますが、飛不成が入ったところがポイントですね。

第10問 松田圭市

正解
32銀不成、同玉、62飛、52歩、同飛成、42金、
41龍、同金、同角成、22玉、32金、12玉、
13歩、11玉、21桂成まで15手詰

 第9問までと比べてパラっとした配置で玉の可動範囲が広いので、手の付け所に悩むところです。3手目の以遠打に歩中合から金合で応じるところがハイライトで、41龍がちょっと面白い手です。収束はやや緩んだでしょうか。

第11問 川蝉

正解
22と、同歩、23桂、同歩、12歩、同玉、
21銀、同玉、41飛、31銀、11金、32玉、
42金、同銀、21飛成まで15手詰

 初手駒取りに対して同玉は34桂同歩23飛以下でしょうか? これはちょっと悩みました。桂を捨てて実質無仕掛となってからはよくある手順ですね。

第13問 不透明人間

正解
33桂成、同桂、32と、同玉、24桂、22玉、
31角、同玉、32銀、22玉、21銀成、同玉、
43馬、22玉、32馬まで15手詰

 非常に綺麗な実戦形。江戸時代から語り継がれていると言ってもおかしくないような、指将棋のお手本となる手順です。

第14問 RINTARO

正解
12金、同玉、11金、同玉、21金寄、12玉、
22金引、13玉、12金、同玉、13歩、同銀、
21角、11玉、12香まで15手詰

 実戦形のようでありながら、金4枚の珍形が目を引きます。これも狭い範囲のやりとりなのですが、香や歩をいつ打つかを考えながらの5手目からの金の動きがポイントですね。

第15問 川蝉

正解
33銀成、同玉、42角、32玉、41角、同玉、
51飛、32玉、31角成、33玉、32馬、同玉、
52飛成、33玉、42龍まで15手詰

 これも駒取りの初手は必要でしょうか。角2枚は捨てて龍での詰上りですが、これも指将棋の参考になる手順です。

第16問 芹田修

正解
32銀、同金、33香成、同金、35桂、32玉、
44桂、同金、23飛成、31玉、32龍、同玉、
24桂、31玉、23桂不成まで15手詰

 実戦形ですが、初形に玉方の駒が多くややごちゃごちゃしているような印象を受けます。桂を打つためとはいえ、3手目に香を成り捨てるのは気持ちのいいものです。飛車も捨てるのですが、詰上りがやや重い印象です。

第17問 negitarou

正解
14香、22玉、13香成、同玉、14歩、22玉、
13歩成、31玉、43桂、同銀、42銀、同玉、
54桂、51玉、62金まで15手詰

 6手目24玉をちょっと読まされます。9手目からは強引に左辺に追いますが、もう1枚駒を捨てる手が見たかったところです。

「詰将棋つくってみた(179)
 課題37:講評」への2件のフィードバック

  1. 佳作ありがとうございます。序文に書かれた通り、変化の多すぎる作品は敬遠されるかと思ったのですが、本作はそうでもないとジャッジしていただいたのですね。今後の励みになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください