伊藤看寿 『将棋図巧』第90番 1755.3
序盤を乗り越えたら中盤・終盤は爽快なハイウェイ走行。
盤全体に広がった配置。
特に29歩・49歩の配置はこの近辺まで玉が動いてくることが予想される。
銀の質駒が目に付くがまずは龍の横利きを通してからであろう。
32歩成、同金、13桂不成、11玉、21桂成、同玉、12銀、同玉、
17香、
2手目同香は銀を取ってから22馬~24香で簡単。
守備を固める同金が自然だ。
質駒の銀を取ってから、最初の狙い手である17香が飛び出す。
21玉、32龍、同香、12金、31玉、22金、41玉、
32金、同玉、39香、
32龍に同玉は33金、41玉、51歩成、同玉、42金以下簡単である。
香を入手して再び狙いの39香。
これは最遠打。
41玉、51歩成、同玉、59香、
そして再三の59香。
これらの限定打はそれぞれ16、38、58に利きを残そうという狙いだ。
それでは対抗して中合をされたらどうなるのだろう。
最初の17香に14歩合が気になるが、39香に対して23玉と14香を取りに行っても33馬、14玉、16香で詰む。しかし、収束で不都合が起こるのでないのか?
61玉、
看寿は3本の香の遠打に対する中合を、まとめてこの局面で解決している。
すなわち作意では「持駒なし」だが、何か一つでも持駒があれば簡単に詰む局面なのだ。
なんともスマートな変化処理だ。
さてここから玉を上部に移動させる中盤に入る。
71馬、同玉、82と、62玉、72と、63玉、73と、同玉、
84銀、
この中盤が実に見事だ。
99龍の潜在力のみを背景に、自然な捌きでスイスイと玉を移動させる。
63玉、74銀成、同玉、75銀打、65玉、66銀、同玉、
67歩、同と、同金、同玉、68歩、
同玉、79金、
さて、この局面で59香の意味がわかる。68玉と逃げられたら詰まないのだ。
59玉、69金、49玉、59金、
続いて39香の意味も明らかになる。
39玉、49金、29玉、39金、18玉、88龍、27玉、
38龍、
最後に17香だ。16玉と逃げられたら詰まないことがわかる。
17玉、18香、同金、同龍、同玉、28金打、19玉、
29金 まで67手詰
それにしても、見事な詰上がり図だ。
これが盤面を遙々\(3/4\)周してきた最終図だとは信じられないくらい綺麗に捌けている。
39香・59香が最遠打なのだから17香ではなく19香にできなかったのだろうかと考える方もおられるだろう。もちろん実現可能だろう。
ただし本局の設計は上の45手目の途中図を見ればわかるようにここで持駒香を前提としている。
19香では持駒を消費せずに一気に詰んでしまうので、大幅な設計変更が必要だ。
なぜ収束に持駒香が必要かというと、最後の最後に龍を消したかったからだろう。
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「詰将棋入門(95) 香の遠打3回」への1件のフィードバック