詰将棋入門(121) 壁駒発生

柏川悦夫『駒と人生』第92番 近代将棋 1962.9

持駒豊富。歩を捨てれば角道も通る。
絶体絶命のようでいて、案外この玉さん。逃げ足が速い。

先に紛れ順から入る。
まずは誰もが試みたい角道を通す手。

42歩成、62玉、

63→74と72→83の二つの逃路があるため、この玉捕まえにくい。
74桂と打てという配置だが、意味なさそうだ。

52角成、72玉、92飛、83玉、

【失敗図】

こんな俗筋では駄目だろうなと思ったが、やはり駄目だ。
金が2枚必要。

それでは作意を見ていこう。

71飛、

初手から飛車を捨てる大技が実は必要な局面なのだった。
これは同飛と取らせて81飛の82への利きをなくす目的だ。

   同飛、42歩成、62玉、74桂、

82金と打てるので52角成と絡めてピッタリ詰んでいる。

それでは51に間駒だが、これも簡単に詰む。

   51合、42歩成、62玉、51角成、

52馬までで捕まっている。
かといって逃げても簡単。

実は玉方にも一つだけ上手い手が残っていた。

   51角、

これは42歩成を同玉と顔面で受けてしまおうという手だ。

   51角、42歩成、同玉、

【失敗図】

そこで攻方は更に妙手を連ねていく。

52銀、

銀をさらに投入する。
62玉なら61銀成、63玉、52角、同玉、72角成、41玉、42歩成まで

   同玉、72飛成、

敵陣に拠点として打ち込んだ飛車を、あっさり成捨ててしまう。
一体何が起こったのか??

   同角、

初形と比較してみる。
持駒が飛車・銀がなくなった。
玉は51から52に移動した。これは殆ど無意味だ。
玉方72角が出現した

つまり、冒頭の6手で飛車銀を消費して、わざわざ守備駒を増やした結果になっている。

将軍「こちらの大駒を失って、敵の大駒を呼び寄せるとは一体何をしているのじゃ!?」
軍師カシカワ「ふっふっふ。このような攻め方もあるのですよ」

事実、あとは簡単な収束なのである。

42歩成、同玉、43金、41玉、33桂、51玉、52金まで13手詰。

72角が逃走路を阻害しており、62玉なら74桂で嘘のように簡単に詰む。
仕方なく42同玉と取るしかなくなっていたのだ。

この作品、調べてみたら初手42歩成、62玉、61飛以下余詰があるようだ。

『詰将棋半世紀』の際に修正されているかと期待したが同じ図。
さらに正誤表でも修正されていないようだ。
そんなに長時間検討させたわけでもないのだが、柿木先生とCPUの進化のお陰だろうか。

とりあえずの修正案を提出しておく。

【修正図案】

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