柏川悦夫『駒と人生』第92番 近代将棋 1962.9
持駒豊富。歩を捨てれば角道も通る。
絶体絶命のようでいて、案外この玉さん。逃げ足が速い。
先に紛れ順から入る。
まずは誰もが試みたい角道を通す手。
42歩成、62玉、
63→74と72→83の二つの逃路があるため、この玉捕まえにくい。
74桂と打てという配置だが、意味なさそうだ。
52角成、72玉、92飛、83玉、
【失敗図】
こんな俗筋では駄目だろうなと思ったが、やはり駄目だ。
金が2枚必要。
それでは作意を見ていこう。
71飛、
初手から飛車を捨てる大技が実は必要な局面なのだった。
これは同飛と取らせて81飛の82への利きをなくす目的だ。
同飛、42歩成、62玉、74桂、
82金と打てるので52角成と絡めてピッタリ詰んでいる。
それでは51に間駒だが、これも簡単に詰む。
51合、42歩成、62玉、51角成、
52馬までで捕まっている。
かといって逃げても簡単。
実は玉方にも一つだけ上手い手が残っていた。
51角、
これは42歩成を同玉と顔面で受けてしまおうという手だ。
51角、42歩成、同玉、
【失敗図】
そこで攻方は更に妙手を連ねていく。
52銀、
銀をさらに投入する。
62玉なら61銀成、63玉、52角、同玉、72角成、41玉、42歩成まで
同玉、72飛成、
敵陣に拠点として打ち込んだ飛車を、あっさり成捨ててしまう。
一体何が起こったのか??
同角、
初形と比較してみる。
持駒が飛車・銀がなくなった。
玉は51から52に移動した。これは殆ど無意味だ。
玉方72角が出現した。
つまり、冒頭の6手で飛車銀を消費して、わざわざ守備駒を増やした結果になっている。
将軍「こちらの大駒を失って、敵の大駒を呼び寄せるとは一体何をしているのじゃ!?」
軍師カシカワ「ふっふっふ。このような攻め方もあるのですよ」
事実、あとは簡単な収束なのである。
42歩成、同玉、43金、41玉、33桂、51玉、52金まで13手詰。
72角が逃走路を阻害しており、62玉なら74桂で嘘のように簡単に詰む。
仕方なく42同玉と取るしかなくなっていたのだ。
この作品、調べてみたら初手42歩成、62玉、61飛以下余詰があるようだ。
『詰将棋半世紀』の際に修正されているかと期待したが同じ図。
さらに正誤表でも修正されていないようだ。
そんなに長時間検討させたわけでもないのだが、柿木先生とCPUの進化のお陰だろうか。
とりあえずの修正案を提出しておく。
【修正図案】
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